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第十四部・東京日常 編

すみませんでした!

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 席につくと、澪が事後確認してくる。

「アフターヌーンティーにするつもりなんだけど、大丈夫だよね?」

「はい!」

 しっかりチャーシュー麺を食べたのだが、それに比べたらアフターヌーンティーはお菓子をつまんで紅茶を飲む程度なので、まだお腹には余裕があるはずだ。

 ……とはいえ、そのあとホテルに戻って成瀬たちとケーキを食べる事を考えると、「大丈夫かな?」と思ってしまうが……。

 ちなみに久住と佐野は、ラウンジカフェの隣の席についている。

 基本的に勤務中はあまり手洗いに行かないように、飲み物なども控えているようだ。

 通常、護衛となると側に立っているものだが、周りから変な目で見られるし、できるだけ目立たないようにしてほしいとお願いしていた。

 なので二人は周囲に溶け込むために、スーツ姿のサラリーマンが会話をしている体でいてくれている。

 やがてウエイターが、ワゴンの上に紅茶の缶を数個のせてやってきた。

 茶葉の説明をされ、香りも確認して四人で何の紅茶を飲むか相談し、ホテルオリジナルブレンドとストロベリーのフレーバーティーに決めた。

 テーブルの上には食事をするようにカトラリーが並べられていて、スコーンにつけるクロテッドクリームやチョコソースなど、四種類が器に入っている。
 ソース用のスプレッダーも四本並べてあり、座っているだけで特別な場所に来た感じがする。

 アンネは水を飲みながら、チラチラと香澄を気にしてくる。

(アンネさんたちはイギリスの事情を知ってるはずだけど、直接は話していないままだ。そのあと私は北海道に戻ってしまって、そのままヨーロッパに行ってしまって……)

 考えてみると相当心配を掛けたのに、自分勝手な行動ばかりしてしまった。

(もしかしたら今日誘われたのは、例の事について話すからかもしれない)

 覚悟を決めた香澄は、スッと息を吸ってから頭を下げた。

「すみませんでした!」

「えっ?」

「何やってるの?」

 いきなり謝った香澄に、澪とアンネがストレートな言葉を向けてくる。

「……あ、あの。私ずっと不義理をしていて。……エ、エミリアさんの事があってから、皆さんとお話できる余裕がなくて、一人で勝手に北海道に行って佑さんに心配をかけたり、皆さんにもご心配を……」

 申し訳ない顔をして説明すると、三人は得心のいった顔をして視線を交わす。

「あのさ、香澄さん。それについては触れないでおこうよ」

「えっ?」

 澪に言われ、香澄は目を瞬かせる。

「私、ふわっとした事しか聞いてないけど、せっかくホテルに来て美味しいアフターヌーンティーをいただくのに、シリアスな話をする事ないじゃない。そりゃあ香澄さんが北海道に行ってた時は、なかなか見ない佑の落ち込みっぷりが面白かったっていうのは認めるけど。……まぁ、もう終わった事じゃない」

 前向きにとられ、ありがたく思いながらチラリとアンネを窺う。

「私も同感だわ。せっかくヨーロッパで羽を伸ばして楽しい思いをしてきたんでしょう? わざわざ掘り返して嫌な空気にする事はないわ。それより、澪、あなた今日は何のために呼んだのか教えてなかったの?」

「え? 言ってなかったっけ?」

 澪が大きな目をさらに見開き、香澄に尋ねてくる。

「……キイテマセン……」

 こういうマイペースなところは、少し翔や双子に雰囲気が似ている。
 佑は長男の律と性格が似ているのだろう。

「あのね、香澄さん誕生日だったじゃん」

 そう言って澪は、荷物置きに置いてあった紙袋を差しだす。

「ほい、お誕生日おめでとう!」

「あっ、あ!」

 言われてみれば、と思うと、アンネと陽菜もそれぞれプレゼントを差しだしてくる。

「えっ……? え……、なんか、なんかすみません……。ありがとうございます……」

 急にジワッときてしまった香澄は涙目になり、マスカラが落ちないようにクワッと目を見開く。

「え、何その顔。こわ」

 澪が引き、香澄は慌てて説明する。

「すっ、すみません! 泣いちゃいそうで……」

「こんな事で泣いていたら身が持たないわよ。はい」

 そう言って、アンネが紙袋を渡してきた。

「ありがとうございます」

「香澄さん、私からも」

 陽菜から渡されたのは、香澄の大好きなチョコレートブランドのショッパーだ。

 一目で中身が分かり、美味しい顔になってしまう。
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