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第十四部・東京日常 編
御劔家女性陣集合
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「い、今は普通盛りで満足できますよ? よく噛むようにしていますし、そうしたら満腹中枢も刺激されますし……」
言い訳していると、久住が「いや、そうじゃなくて」と言葉を挟む。
「赤松さん、元彼のせいで摂食障害になったんですか?」
「あー……、元彼のせいっていうか、自分の問題だと思います。食べる事に罪悪感を覚えて、ちょっと吐き癖もついていましたが、今は本当に大丈夫です。あ、きましたよ」
ケロッと言った時、カウンターに丼が置かれた。
「美味しそうですね! お肉たっぷり! いただきます!」
パンッと胸の前で手を合わせ、香澄はまず煮卵に取り掛かる。
半分にカットされた煮卵を一つ箸で摘まみ、ポイッと口に入れて「んー」と小声で悶えた。
そんな香澄を両脇から久住と佐野が窺い、複雑そうな顔をしていたのにも、やはり気づかないのだった。
その後、プラプラと見るだけショッピングを楽しんだが、どうしても服だけはこれ以上増やせないと思い、あまり見なかった。
見れば「可愛い」と思うだろうし、欲しくなるかもしれない。
代わりにハンドメイド作家のイベントが開かれていたので、そこで気に入ったイヤリングを一つ買った。
ハンドメイドと言っても作りが精巧で、企業のように大量生産していないため、一つでも一万円近くする物もある。
その代わりに街中で人と被る事は滅多にないので、香澄は既製品よりハンドメイドアクセサリーを好んでいた。
**
ラーメンを食べたあとに時間を潰し、澪に指定された、皇居を一望できるホテルに向かった。
といってもザ・エリュシオン東京とは少し離れていて、丸の内にあるホテルだ。
ロビーは天井が高く、幾つものシャンデリアが下がっている。
天井から床までの大きな窓からは庭園が見え、そのラウンジカフェで待っているとの事だ。
「いらっしゃいませ」
スタッフに挨拶され、香澄はやや緊張して会釈する。
「あの、御劔さんと待ち合わせしているのですが」
〝御劔さん〟と言うと、少々不思議な気持ちになる。
――と、奥にある席から「あっ、香澄さんきた」と声が聞こえた。
窓際の席には澪、陽菜、アンネがすでに座っていた。
「香澄さん!」
(うわああああ……!!)
今日の澪はボリューミーなフリルに、たっぷり膨らんだ袖の白いブラウスに、黒いペンシルスカートを穿いている。
前髪もすべて上げてキュッとまとめ髪にし、本当にモデルなのではと思う出で立ちだ。
美女を前にあわわわ……となる香澄を見て、彼女は一瞬変な顔をする。
「何の顔? それ。行こ」
(しかもいい匂い!)
澪はグルマン系の香水が好きなようで、飲食の場なので強くは香らせていないが、フワッと甘くていい匂いがする。
「香澄さん、こんにちは」
立ちあがって軽く手を振り、ぺこりと頭を下げた陽菜も可愛い。
優しい雰囲気の彼女らしく、小花柄のマキシ丈のティアードワンピースに、白いカーディガンを羽織っている。
髪の毛はふんわり巻いていて、にっこり笑う姿は「可愛い」以外の何者でもない。
「こんにちは!」
彼女にも挨拶したあと、女王のように君臨し、仁王立ちして腰に手を当てているアンネに深々と頭を下げる。
「お久しぶりです」
「元気そうで何よりだわ」
アンネは深い色味の赤いニットに、モノトーンの柄物スカートを穿いていて、派手なのに美魔女だからか女優のように存在感があり似合っている。
例によってメッシュの入ったロングヘアの金髪をまとめ髪にし、周囲からも「あの人素敵ね」という視線を浴びている。
高級ホテルのラウンジカフェに呼ばれ、香澄も少し身なりに気を遣ってきた。
袖の外側にスリットが入りレースがあしらわれている黒いトップスに、ラベンダー色のチュールスカートだ。
黒いトップスに映えるように、佑に買ってもらったゴールドのラリアットネックレス、――フロントでY字に垂れ下がるデザインのネックレスをつけている。
言い訳していると、久住が「いや、そうじゃなくて」と言葉を挟む。
「赤松さん、元彼のせいで摂食障害になったんですか?」
「あー……、元彼のせいっていうか、自分の問題だと思います。食べる事に罪悪感を覚えて、ちょっと吐き癖もついていましたが、今は本当に大丈夫です。あ、きましたよ」
ケロッと言った時、カウンターに丼が置かれた。
「美味しそうですね! お肉たっぷり! いただきます!」
パンッと胸の前で手を合わせ、香澄はまず煮卵に取り掛かる。
半分にカットされた煮卵を一つ箸で摘まみ、ポイッと口に入れて「んー」と小声で悶えた。
そんな香澄を両脇から久住と佐野が窺い、複雑そうな顔をしていたのにも、やはり気づかないのだった。
その後、プラプラと見るだけショッピングを楽しんだが、どうしても服だけはこれ以上増やせないと思い、あまり見なかった。
見れば「可愛い」と思うだろうし、欲しくなるかもしれない。
代わりにハンドメイド作家のイベントが開かれていたので、そこで気に入ったイヤリングを一つ買った。
ハンドメイドと言っても作りが精巧で、企業のように大量生産していないため、一つでも一万円近くする物もある。
その代わりに街中で人と被る事は滅多にないので、香澄は既製品よりハンドメイドアクセサリーを好んでいた。
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ラーメンを食べたあとに時間を潰し、澪に指定された、皇居を一望できるホテルに向かった。
といってもザ・エリュシオン東京とは少し離れていて、丸の内にあるホテルだ。
ロビーは天井が高く、幾つものシャンデリアが下がっている。
天井から床までの大きな窓からは庭園が見え、そのラウンジカフェで待っているとの事だ。
「いらっしゃいませ」
スタッフに挨拶され、香澄はやや緊張して会釈する。
「あの、御劔さんと待ち合わせしているのですが」
〝御劔さん〟と言うと、少々不思議な気持ちになる。
――と、奥にある席から「あっ、香澄さんきた」と声が聞こえた。
窓際の席には澪、陽菜、アンネがすでに座っていた。
「香澄さん!」
(うわああああ……!!)
今日の澪はボリューミーなフリルに、たっぷり膨らんだ袖の白いブラウスに、黒いペンシルスカートを穿いている。
前髪もすべて上げてキュッとまとめ髪にし、本当にモデルなのではと思う出で立ちだ。
美女を前にあわわわ……となる香澄を見て、彼女は一瞬変な顔をする。
「何の顔? それ。行こ」
(しかもいい匂い!)
澪はグルマン系の香水が好きなようで、飲食の場なので強くは香らせていないが、フワッと甘くていい匂いがする。
「香澄さん、こんにちは」
立ちあがって軽く手を振り、ぺこりと頭を下げた陽菜も可愛い。
優しい雰囲気の彼女らしく、小花柄のマキシ丈のティアードワンピースに、白いカーディガンを羽織っている。
髪の毛はふんわり巻いていて、にっこり笑う姿は「可愛い」以外の何者でもない。
「こんにちは!」
彼女にも挨拶したあと、女王のように君臨し、仁王立ちして腰に手を当てているアンネに深々と頭を下げる。
「お久しぶりです」
「元気そうで何よりだわ」
アンネは深い色味の赤いニットに、モノトーンの柄物スカートを穿いていて、派手なのに美魔女だからか女優のように存在感があり似合っている。
例によってメッシュの入ったロングヘアの金髪をまとめ髪にし、周囲からも「あの人素敵ね」という視線を浴びている。
高級ホテルのラウンジカフェに呼ばれ、香澄も少し身なりに気を遣ってきた。
袖の外側にスリットが入りレースがあしらわれている黒いトップスに、ラベンダー色のチュールスカートだ。
黒いトップスに映えるように、佑に買ってもらったゴールドのラリアットネックレス、――フロントでY字に垂れ下がるデザインのネックレスをつけている。
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