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第十四部・東京日常 編

女子会の誘い

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「えーと」

 香澄は飲みかけのカフェオレを一口飲み、あの三人とのグループメッセージを開いた。

 昨晩もあの三人は盛り上がっていたようで、香澄は混ざれなかったのを歯がゆく思っていた。

『おはようございます』

 ポン、とメッセージを送ると、すぐに成瀬から返事があった。

『赤松さんおはよう! 体調は大丈夫? 来週頭から復帰って聞いてるけど、まだ不安があるならゆっくり休んでよ?』

 もう会社にいる時間だからか、他の二人からもすぐに返事がくる。

『そうだよ。親戚で鬱になった人がいるけど、長年経っても本当の意味での完治はできてないみたいだし』

『でも私、そろそろ赤松さんに会いたいな。何かこう、赤松さんの無邪気な笑顔見てると、うずうずするんだよね。妹分っていうか』

 荒野のメッセージに、他二人が『それな』という同じスタンプを同時に送ってきた。

「うーん、ここまで心配されると、何だかんだで元気になったのが申し訳ないな……」

 少し心配になりながら、香澄はある程度現状を素直に書いてみた。

『精神的に不安定だった時期は、もう過ぎた感じです。たっぷり療養期間を頂いたので、今は普通に過ごせています』

 最後にキャラクターが力こぶを作っているスタンプを送ると、号泣しているスタンプがポポポンと三つ送られてくる。

『いつでも弱音吐いていいんだからねー!』

『そうそう! 仕事なんて、健康ならやるぐらいで丁度いいんだから』

『赤松さんなら、最終的にスパダリ社長が守ってくれるんだから、本当に無理しなくていいからね』

「あはは……」

 彼女たちの励ましをありがたく受け、例の提案をする。

『あの、急な提案なんですが、今晩空いていますか?』

『飲み? いいよー! 私空いてる!』

『私も!』

『参加する!』

『あ、飲み……かどうか分からないんですが、ザ・エリュシオン東京のお部屋を、好きにしていいって言われているんです。昨日、ホールケーキを食べる機会がありまして、残りもので恐縮ですが、一緒に食べてくれる人を募集していまして』

『マジ!? エリュシオンったら星つきホテルでしょ!』

 成瀬が動揺する。

『部屋を好きにしていいって、社長持ち?』

『そんな感じです。食事をしても社長持ちです』

『行くっきゃない!』

 荒野が「キリッ」という効果音つきのスタンプを送り、水木もキャラクターが激しく頷いている動くスタンプを送ってくる。

『確認ですが、社長が同じ場所にいては駄目でしょうか? 書斎や他の部屋もあるので、私たちはリビングやダイニングで女子会をして、社長には引っ込んでてもらうっていうのも可能です!』

 勢いで佑の事を相談すると、三人はそれぞれ猫のキャラクターが「www」と笑っている動くスタンプを送ってきた。

「なに!?」

 思わず声にして動揺すると、すぐに返事がくる。

『社長ったら可愛い~! そこまでして赤松さんと一緒にいたいんだねwww』

『私は構わないよ! イケメンと一緒にいて損になる事なんてないし! っていうか、プライベートで社長とどういう話をするのか超気になる!』

 水木の言葉にホッとし、続く荒野のメッセージに噴きだした。

『っていうか、二人にコイバナさせようよ! 暴露大会!』

 荒野の提案のあと、残る二人が、猫がスタンディングオベーションをしているスタンプを送ってくる。

『わああ! そ、それは勘弁してください!』

 焦ってキャラクターが「なんと!」と驚いているスタンプを送るが、返事は『そろそろ始業だから離脱するね』という返事だった。

「うう……」

 最後に香澄は「がんばってください」というスタンプを送り、グループメッセージを閉じた。

 そのあと双子とのトークルームを開くと、いつも以上にメッセージが入っていた。

 香澄はマメな性格なので、通知を放置するタイプではない。

 だがコネクターナウについては、双子がいる以上、バッヂが際限なく増えていくものだと考え、通知をゼロにするのを諦めている。

「ええと……。既読になってないのここからか」

 ふむふむ……と見ていくと、年末の予定について書いてあった。

『カスミの親友も来るの!? 絶対会いたい! 皆で年越しソバパーティーしよう!』

『アレだろ? 水ん中流すやつ!』

「それはそうめん……」

 思わず突っ込んだ香澄は、知らずと笑顔になる。
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