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第十四部・東京日常 編

部屋の活用法

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 その他にも、店舗勤務の者を本社勤務にするために、どれぐらい募集をかけるかも考えなければいけない。

 海外絡みになると、アメリカならChief Every USAという子会社があるが、経営状態の報告を聞き、問題となる案件を佑が判断……という事もしている。

 彼の出張が多いのもそこから来ていて、国内店舗は大型店、標準店、フランチャイズ店含め八百以上、海外では千八百近く店舗があり、今の目標は二千を超える事らしい。

 他、CEPの展開に、世界中の一等地に店を構えるため交渉をするなど、進めていく仕事は多い。

 何より大切なのは工場の設備や衛生、社員寮などの完備や、Chief Every以外の事業など、佑の頭の中はどうなっているのかと思うほど仕事が多い。

「……私といちゃいちゃしてていいの?」

「え? だって生きるために食事は必要だろ?」

 逆にキョトンとして言われ、香澄は首を傾げる。

「食事?」

「俺にとって香澄といる時間は食事と一緒。ないと死ぬ」

「……なるほど?」

 もぐ……と里芋の煮物を咀嚼しつつ、納得していないのについ頷いてしまう。

「睡眠も兼ねているかな。香澄と一緒にいると、よく眠れるんだ」

「……お役に立てて光栄です?」

 首を傾げた時、佑がクスクス笑う。

「好きって事だよ」

「う、うん……」

 ストレートに言われては、頷くしかない。

 もぐもぐと食事を進めながら、香澄は佑にもらったホールケーキを思いだしていた。

 二人で二ピース食べたが、普通に考えてあと六人分は残っている。
 さらに二ピースを二人で食べるとしても、残る四ピースはどうすれば……。

 そもそもケーキを買った時は、大体「本日中にお召し上がりください」といわれるではないか……と考えてしまう。

「あ」

 ふと、名案を思いついた。

「ん?」

 佑はキュウリの浅漬けを食べながらこちらを見る。

「あのね。早速なんだけど、このお部屋、女子会に使ってもいい?」

「女子会」

 彼は不思議そうに復唱し、麻衣を連想したのか首をひねる。

「いつも会社で仲良くしてくれてるお三方、もし今晩空いてたらお部屋に呼んで一緒にご飯とケーキ食べたいなって思って」

「ああ……」

 成瀬、水木、荒野の顔を思い浮かべた佑は、何度かうんうんと頷く。

「俺がいたらまずいか?」

「え? ……うーん……。成瀬さんたちが萎縮しないかどうか……、聞いてみないと分からないけど。もしかしたら佑さんの悪口言うかもしれないし」

 最後の一言は勿論、冗談だ。
 そうつけ加えると、彼が悪い笑みを浮かべた。

「ふぅん? じゃあ、お仕置きは香澄一人が請け負ってくれるな?」

「そ、それは駄目!」

 慌てて首を振ると、彼は声もなく笑い崩れた。

「別に呼んでもいいよ。何なら食事も酒も自由にして。ただし、翌日に響かない程度に」

「ありがとう!」

 きっと喜んでくれるだろうと思い、香澄は満面の笑みを浮かべた。





「じゃあ、いってらっしゃい」

「ん、行ってきます」

 二人はドアの前でチュッとキスをして微笑み合う。

「今日はずっとこの部屋にいる?」

「ううん。もしお三方に会えるなら、お土産も渡したいから一回戻る」

「そうか。必要になったら瀬尾を呼べよ?」

 運転手の名前を出され、「うーん」と思わず苦笑いする。

「あのね、久しぶりに東京帰ってきたから、ランチとか一人でプラプラしたら駄目かな? 欲しい物は特にないけど、見るだけショッピングもしたいし」

「うーん……。じゃあ、護衛が遠巻きに見るのは了承してくれ」

 佑の譲歩に、香澄も譲歩する。

「うん、分かった」

「じゃあ、もう一回行ってきます」

 佑が香澄の後頭部を引き寄せ、チュッともう一度キスをしてきた。

 そして今度こそ、彼はドアを開いてエレベーターの方に歩いて行った。

 エレベーター前にはすでに松井がいて、目が合うと会釈をしてくれた。

 二人の姿が消えてから、香澄はリビングに戻ってスマホを手にする。
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