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第十四部・東京日常 編

シャツガーターとソックスガーター

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 目の前が真っ白になり、荒くなった呼吸音や打擲音までもが、遠くにかすんだように思える。

 そんな中、最奥に叩き込まれる亀頭の硬さをやけに鮮明に感じた。

「んあぁあああぁ……っ、あぁあああぁあ……っ」

 頑張る事を諦めて意識を手放そうかと思った時、佑の腰の動きが速くなり、彼が最後を迎えようとしているのを知った。

「い、――――く……っ」

 濡れそぼった蜜洞で佑の肉棒がぐぅっと膨れ上がり、ビクビクッと震えたかと思うと遠慮なく香澄の体内に熱い白濁を注ぎ込んだ。

 ボーッとした意識の中、香澄はお腹の中で佑の分身が暴れているのを感じる。

 ――愛しい。

 鼓動と重なるようなリズムで、ドクンドクンと彼の屹立が脈打つ。

「……っあぁ……」

 濡れた声で最後の声を吐き、佑が香澄の上に体を預けてきた。
 その愛しい重みを全身に感じ、汗を掻いた肌から佑の熱を感じる。

 ポトッと香澄の頬に滴ったのは、佑の汗だろうか――。

 それを確認する間もなく、香澄の意識はまどろみの闇に引き込まれていった。



**



「ん……、ぅ……」

 ふぅっ……と意識が浮上すると、見慣れない内装が目に入った。

(どこだっけ……)

 モソリと起きようとすると、力強い腕に抱き寄せられ、温かい胸板に顔を押しつけられた。

「んぎゅう……」

 割と強めに押しつけられたので、頬が潰れて変な声が漏れた。

「……まだ……」

 香澄をベッドの中に留めたまま、彼はベッドサイドに置いてある腕時計を取り、時間を確かめる。

「……あと三十分……」

 佑は寝ぼけた声でそう言って、ぎゅうっと抱き締めてきた。
 おまけに脚を香澄の体に絡め、身動きを取れなくしてくる。

(……佑さん、これからお仕事だっけ……。じゃあ、寝かせてあげないと……)

 香澄も小さく欠伸をしたあと、目を閉じてウトウトし始めた。

 二人は布団の中でお互いの体温を分け合い、穏やかな呼吸と優しい鼓動を耳に、三十分の猶予を過ごすのだった。





 起きたあと、都内の絶景を見下ろしながらのお風呂という、実に贅沢な時間を過ごした。

 ゆっくりはできないが、急ぐほどでもなく、いつものように会話をしながら洗いっこをし、お互い身だしなみを整える。

「和食でいいか?」

「うん。なんでも食べる」

「以前に旅館の朝食ビュッフェで、お粥を食べるの好きだって聞いたから、お粥も用意してもらった」

「ありがとう!」

 いつの間に用意したのか、佑はピシッとアイロンのかかったシャツを着て、昨日とは違うスーツのスラックスを穿いている。
 宿泊先だというのに、ウォークインクローゼットは充実していて、着る物に迷うぐらい服が置かれてあった。

「ねぇ、佑さん。シャツガーターってあるのを、こないだ知ったんだけど着けてる?」

 香澄に言われ、佑は一瞬固まった。

「……一応。シャツが皺になったり、ソックスがずり落ちるのは嫌だから」

 シャツガーターというのは、シャツを皺なくピンと着るためのガーターベルトだ。
 太腿にバンドを巻き、シャツの裾との間にベルトをピンと張るアイテムだ。

 ソックスガーターは、脛にベルトを巻き、ソックスが落ちないように留める物だ。

 その二つが一つになった物もある。

 太腿の外側で、Yの字になったバンドの上二つでシャツの前後を挟み、下でソックスの外側を吊る……という具合だ。

「えっ……。見たい! 見せて!」

 食いつくと、佑は笑いながらベルトに手を掛けた。

「意外と香澄はこういうの好きなんだな」

「えへへ……。男性のお洒落って詳しくないから」

 ワクワクして見ていると、佑の筋肉質な太腿にシンプルな黒いバンドがあり、そこからシャツの裾をピンと繋いでいるベルトがある。

「ソックスガーターはこっち」

 そう言って佑はソファに座って脚を組む。
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