【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

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第十四部・東京日常 編

今日こそちゃんと祝いたい

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「んっ……」

 相変わらず香澄は耳が弱い。
 佑も耳が弱いと分かっていてこうするので、性格が悪い。

「そ、そろそろ逆上せてきたから……。続きはベッドで……、ね?」

 こうやって逃げながら誘うと、佑は引いてくれると学んでいる。

「……仕方ないな」

 佑はザバッと水音を立てて立ち、遅れて香澄もバスタブから出る。

「逆上せてないか?」

 とっさに佑が背中を支えてくれ、何気ない気遣いが嬉しい。

「うん、大丈夫。ありがとう」

 お礼を言った香澄は、両手で胸元を隠しながら先にバスルームを出た。





 フェイスケアをしている間、いつものように佑がボディケアをしてくれる。

 勿論、使っているボディ用化粧水も、ボディクリームも〝いつもの〟物だ。

「ホテルにまでジョン・アルクールを置いてるの?」

「ああ、いつでも部屋を利用しても、お気に入りの香りを使えるよ」

「贅沢だなぁ……。っていうか、いつも部屋をキープしていて大丈夫なの? ホテルとしては、使わない時は他の人用に貸し出したほうがいいんじゃないの?」

 疑問に思っていた事を尋ねると、佑はなんでもないように言う。

「ラグジュアリーホテルって、満室にはならないようになっているんだ。俺が使っているカード、あるだろ?」

「うん。黒い、選ばれし者のみが持つ……」

 見るも恐ろしい黒いカードを思いだし、香澄はコクリと頷く。

「最高ランクの会員だと、例えば出張中に台風に遭って、どうしても予定外の場所で宿泊したいという時に、その土地の最高ランクのホテルの部屋を融通してもらえるんだ」

「へー! なるほど!」

 富裕層が持つカード会員の事情など知らないので、香澄はワントーン高い声を上げて納得する。

「一応、俺にはカード会社の専用コンシェルジュがついている。たとえば『一週間後にハワイに行きたいんですが、飛行機やホテルを手配してくれませんか?』って言えば、その通りにしてくれるんだ」

「ほええ……」

「少し脱線したけど、そういう風にイレギュラーの用事が入る事もあるから、ラグジュアリーホテルや、類似の施設はある程度〝余白〟があるんだ」

「なるほどねぇ……」

 仕上げに保湿クリームを塗りながら、香澄は感心して頷く。

「……そんなホテルを自由に使うのは気が引けるけど、使わないと無駄金になっちゃうし、いつか麻衣と女子会してもいい?」

「勿論、いつでも使って。しかし香澄は麻衣さんが大好きだな。少し妬けてしまう」

「そう? んふふ。佑さん可愛い」

 フェイスケアとボディケアが終わると、香澄はバスローブを羽織る。
 籐でできた椅子に座ると、佑がドライヤーで髪を乾かしてくれた。

「いつもありがとう。お姫様みたい」

「どういたしまして。好きな女性のお世話をするのは、恋人の特権だと思っているよ」

 サラッとそう言う佑は、やはりスパダリだ。

「ん、んんっ」

 照れた香澄は咳払いし、鏡越し佑と目が合ったのでパッと目を逸らした。

 佑はそんな彼女を見て微笑んでいたが、香澄は赤面して俯いたままだった。





 ホコホコした二人は洗面所を出て、リビングで水を飲む。

 並んでソファに座っていると、香澄の手に佑が手を重ねてきた。

 香澄も指を佑の手に絡め、彼の気持ちに応じる。

 カーテンは開いたままで、窓の外に摩天楼が一望できる。

(本当に夢みたい……)

 いまだ感覚が札幌っ子の香澄は、自分が東京で生活していて、御劔佑の婚約者だという事実を何度も疑ってしまう。

 ベタな手段だが、現実か確かめるために、空いている手でこっそりと自分の頬をつねってみた。

(……痛い……)

「何してるんだ?」

「へ?」

 ギクッとして佑を見ると、彼は香澄の手を見て不可解そうな顔をしている。

「隠れてやっていたんだろうけど、ガラスに映ってたから」

「んん!」

 香澄は変な声をだし、頬をつねっていた手をお尻の下に隠す。

「こら、隠すんじゃない」

 ニヤッと笑った佑は香澄を抱き締め、そのまま自分の胸板にもたれさせて、ソファに横向きに座る。

「んふふ……。動けない……」

 クスクス笑っていると、佑はバスローブの合わせから手を入れてきた。

「んぅ……」

「あったかい」

 むに、むにと乳房を揉む佑は嬉しそうだ。

「香澄」

「ん?」

 真上を向くように首を動かすと、佑の優しい目と視線が交わる。

「何か欲しいものはない? 足りないものは?」

「んっ……ふふふ……。ないよ。本当に何もないの。佑さんがいてくれたらそれでいい。沢山もらいすぎたよ」

「でも、今回は俺がきちんと祝える、第一回目の誕生日なんだ。何でも叶えたい」

 佑の言葉を聞き、納得した。

「そっか。去年は出会った当日だったし、まだ今ほどイチャラブじゃなかったもんね。でも、トパーズのペンダント嬉しかったよ。ありがとう」

 ようやく、佑がこんなに祝いたがっている理由を理解した。

 けれど去年だって初対面なのにジュエリーをもらっていたので、十分に凄いお祝いをしてもらった。

 あの時は「初対面なのに宝石くれるの!?」と驚いたが、当たり前の感覚だと思っている。
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