847 / 1,559
第十四部・東京日常 編
忘れていた記念日
しおりを挟む
「ただの二十八歳の誕生日だよ? 三十歳になった時はどうするの?」
香澄はヒョイと佑の腕から抜け出し、ソファに座るとパンプスを脱ぎ、横座りをする。
「香澄? 分かってないみたいだけど、一年前の今日何をしてた?」
隣に座った佑に言われ、香澄は「んー」と濃厚すぎるこの一年を振り返る。
「去年の誕生日はまだ札幌にいて……あっ、あーっ!!」
まさに去年の今日、佑に出会った日だと思いだして、香澄は大きな声を出した。
目をまん丸にして佑を見ると、脱力した彼に「遅いよ……」と突っ込まれる。
「もしかして記念日とか覚えないタチか?」
「えっ? そ、そんな事ないよ? 佑さんのお誕生日だって覚えてる。六月三十日」
「でも出会った日を覚えていないのは、少し寂しい。しかも自分の誕生日っていう分かりやすい日だぞ」
じと……とした目を向けられ、言葉に詰まる。
「ご、ごめんなさい……」
謝った彼女の頭をポンポンと撫でた佑は、隣に座ってしみじみと呟く。
「……早かったなぁ……色々……」
二人してリビングのシャンデリアをぼんやり見ていると、佑が苦笑いした。
「一目惚れだったからな。どうしても『手放したくない』『ここで逃がしたら駄目だ』って本能的に思った」
出会った時はもっとサラリとした人だと思っていたのに、気が付けば立派な執着ヤンデレに育っている。
そんな彼が愛しくて、香澄は笑う。
「何もかも、順番が違ったよな。ごめん。本当はもっと付き合うのに時間をかけて、ちゃんと告白して東京に来てもらって同棲……って、手順を踏むべきだった」
「ううん、そんな事ない」
首を横に振るが、佑は少し苦く笑う。
「香澄は〝常識〟を気にする人だから、そうしたほうが不安を与えなかっただろう。……でも、俺たちの出会いが間違えていたと思いたくない。色んな出会い方、付き合い方があって、その中の一つ……ただそれだけなんだ」
色々言ったあとに「間違えていない、反省していない」と言われ、香澄はプハッと笑いだした。
「佑さんのそういうところ、好きだよ」
「……変か? 俺は割と、自分は普通の愛し方をしていると思うんだけど」
きょとんとする彼を見て、香澄はますます笑う。
「一年でこんな立派なヤンデレに育っておいて、〝普通〟って言うんだもんなぁ……。おっかしい」
ケタケタと笑う香澄を見て、佑はポカンとしている。
「……そんなに変だろうか?」
彼の微笑みがやや引き攣っているのは、本気で自分は〝まとも〟に香澄を愛していると思っているからだろう。
「笑ってごめん。……んー、でも普通の人は据わった目で『地下室を作って閉じ込めたい』とか言わないと思うよ。普通、恋人が言う事を聞かなかったら、怒って喧嘩するとか『出てけ』って言うもの。佑さんは何があっても私を手放そうとしないし、監禁できる実行力と財力がある。だから悪いけど〝普通〟じゃないの」
スッパリ言うと、佑は指で眉間を揉んで何やら考え込んでしまった。
けれどそれほど経たず顔を上げると、香澄を見つめてくる。
「香澄はそういう俺が好きなんだろう?」
「うん。少しでも『いや』とか『無理』とか思ったら、結婚しようって思わないもの。……それに私も、佑さんにこうやってがんじがらめに愛されるの、嫌いじゃないし」
照れくさそうに笑ってみせた香澄の表情を見て、佑は安心したように頷いた。
「よし、じゃあこの件では悩まない。もうこの歳になって性格も愛し方も変えられないだろうし、香澄に嫌われないなら多少変でも構わない」
その振り切った考え方がおかしくて、愛しくて、香澄はまたクスクス笑う。
「仕方がないから、そんな佑さんを私が一生愛してしんぜよう」
香澄は冗談めかした言い方をし、つんつんと佑の胸元をつついた。
「じゃあ……抱っこさせてくれ」
佑が組んでいた脚を戻したので、香澄は一度立つと佑の腰を跨いで向かい合わせに座った。
「あ……、ニットワンピ伸びちゃう」
「じゃあ、こうしておけば?」
佑がニットワンピースの裾をたくし上げ、腰まで上げてしまう。
そのまま香澄のお尻を撫でて、顔を覗き込みガーターベルトをパチンと弾く。
特別な日だからとはいえ、ガーターベルトとストッキングで完全装備してきたのを知られると、さすがに恥ずかしい。
香澄はとっさに言い訳をしていた。
「え……えっと! これは、あの……特別な日だし……」
ガーターベルトにガーターストッキング、Tバックは、今になっても〝大人の下着〟というイメージがある。
けれど「佑さんが興奮するなら……」と、ガーターセットをつけ、チーキーを穿いた。
チーキーはTバックよりは布地があるが、半分ぐらいはお尻が出ている下着だ。
「ふぅん? ありがとう。何だか俺の誕生日みたいだ」
佑は香澄の張りのあるヒップを撫で、早くもご満悦だ。
香澄はヒョイと佑の腕から抜け出し、ソファに座るとパンプスを脱ぎ、横座りをする。
「香澄? 分かってないみたいだけど、一年前の今日何をしてた?」
隣に座った佑に言われ、香澄は「んー」と濃厚すぎるこの一年を振り返る。
「去年の誕生日はまだ札幌にいて……あっ、あーっ!!」
まさに去年の今日、佑に出会った日だと思いだして、香澄は大きな声を出した。
目をまん丸にして佑を見ると、脱力した彼に「遅いよ……」と突っ込まれる。
「もしかして記念日とか覚えないタチか?」
「えっ? そ、そんな事ないよ? 佑さんのお誕生日だって覚えてる。六月三十日」
「でも出会った日を覚えていないのは、少し寂しい。しかも自分の誕生日っていう分かりやすい日だぞ」
じと……とした目を向けられ、言葉に詰まる。
「ご、ごめんなさい……」
謝った彼女の頭をポンポンと撫でた佑は、隣に座ってしみじみと呟く。
「……早かったなぁ……色々……」
二人してリビングのシャンデリアをぼんやり見ていると、佑が苦笑いした。
「一目惚れだったからな。どうしても『手放したくない』『ここで逃がしたら駄目だ』って本能的に思った」
出会った時はもっとサラリとした人だと思っていたのに、気が付けば立派な執着ヤンデレに育っている。
そんな彼が愛しくて、香澄は笑う。
「何もかも、順番が違ったよな。ごめん。本当はもっと付き合うのに時間をかけて、ちゃんと告白して東京に来てもらって同棲……って、手順を踏むべきだった」
「ううん、そんな事ない」
首を横に振るが、佑は少し苦く笑う。
「香澄は〝常識〟を気にする人だから、そうしたほうが不安を与えなかっただろう。……でも、俺たちの出会いが間違えていたと思いたくない。色んな出会い方、付き合い方があって、その中の一つ……ただそれだけなんだ」
色々言ったあとに「間違えていない、反省していない」と言われ、香澄はプハッと笑いだした。
「佑さんのそういうところ、好きだよ」
「……変か? 俺は割と、自分は普通の愛し方をしていると思うんだけど」
きょとんとする彼を見て、香澄はますます笑う。
「一年でこんな立派なヤンデレに育っておいて、〝普通〟って言うんだもんなぁ……。おっかしい」
ケタケタと笑う香澄を見て、佑はポカンとしている。
「……そんなに変だろうか?」
彼の微笑みがやや引き攣っているのは、本気で自分は〝まとも〟に香澄を愛していると思っているからだろう。
「笑ってごめん。……んー、でも普通の人は据わった目で『地下室を作って閉じ込めたい』とか言わないと思うよ。普通、恋人が言う事を聞かなかったら、怒って喧嘩するとか『出てけ』って言うもの。佑さんは何があっても私を手放そうとしないし、監禁できる実行力と財力がある。だから悪いけど〝普通〟じゃないの」
スッパリ言うと、佑は指で眉間を揉んで何やら考え込んでしまった。
けれどそれほど経たず顔を上げると、香澄を見つめてくる。
「香澄はそういう俺が好きなんだろう?」
「うん。少しでも『いや』とか『無理』とか思ったら、結婚しようって思わないもの。……それに私も、佑さんにこうやってがんじがらめに愛されるの、嫌いじゃないし」
照れくさそうに笑ってみせた香澄の表情を見て、佑は安心したように頷いた。
「よし、じゃあこの件では悩まない。もうこの歳になって性格も愛し方も変えられないだろうし、香澄に嫌われないなら多少変でも構わない」
その振り切った考え方がおかしくて、愛しくて、香澄はまたクスクス笑う。
「仕方がないから、そんな佑さんを私が一生愛してしんぜよう」
香澄は冗談めかした言い方をし、つんつんと佑の胸元をつついた。
「じゃあ……抱っこさせてくれ」
佑が組んでいた脚を戻したので、香澄は一度立つと佑の腰を跨いで向かい合わせに座った。
「あ……、ニットワンピ伸びちゃう」
「じゃあ、こうしておけば?」
佑がニットワンピースの裾をたくし上げ、腰まで上げてしまう。
そのまま香澄のお尻を撫でて、顔を覗き込みガーターベルトをパチンと弾く。
特別な日だからとはいえ、ガーターベルトとストッキングで完全装備してきたのを知られると、さすがに恥ずかしい。
香澄はとっさに言い訳をしていた。
「え……えっと! これは、あの……特別な日だし……」
ガーターベルトにガーターストッキング、Tバックは、今になっても〝大人の下着〟というイメージがある。
けれど「佑さんが興奮するなら……」と、ガーターセットをつけ、チーキーを穿いた。
チーキーはTバックよりは布地があるが、半分ぐらいはお尻が出ている下着だ。
「ふぅん? ありがとう。何だか俺の誕生日みたいだ」
佑は香澄の張りのあるヒップを撫で、早くもご満悦だ。
33
お気に入りに追加
2,572
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!


忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜
青花美来
恋愛
「……三年前、一緒に寝た間柄だろ?」
三年前のあの一夜のことは、もう過去のことのはずなのに。
一夜の過ちとして、もう忘れたはずなのに。
「忘れたとは言わせねぇぞ?」
偶然再会したら、心も身体も翻弄されてしまって。
「……今度こそ、逃がすつもりも離すつもりもねぇから」
その溺愛からは、もう逃れられない。
*第16回恋愛小説大賞奨励賞受賞しました*
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。
青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。
その肩書きに恐れをなして逃げた朝。
もう関わらない。そう決めたのに。
それから一ヶ月後。
「鮎原さん、ですよね?」
「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」
「僕と、結婚してくれませんか」
あの一夜から、溺愛が始まりました。
お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。
渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!?
合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡――
だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。
「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき……
《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる