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第十三部・イタリア 編

えげつない

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 キャップを外すと、ペン先に、金色の模様で星の王子さまとキツネの絵が描かれてある。

 箱の中には万年筆の他にも、レザー製の『星の王子さま』のノートカバーに、キツネをイメージしたダークオレンジのインク瓶まであった。

「これは……お高くても嬉しいかも……。あとで佑さんにお礼のお手紙書こう」

 宝石などより、文具系のほうがとても嬉しいので、香澄はニコニコする。

 その時、視界の端に見慣れないものがかすり、「ん?」とデスクの左横を見る。

 デスクの横のフックには、香澄がいつも行っている文房具店のショッパーがあり、中にはぎっしりとレターセットやシールが詰まっていた。

「ん……うん。お、お手紙書きます……」

 無言の圧を感じた気がして、香澄は一人頷く。

「ん?」

 ふと、デスクの上に違和感を覚えた。

 デスクの上にはブックエンドによく使う物を立てているが、その間に小さな紙袋が挟まっていた。

「なんだろ……これ。結構厚みが……」

 引っ張り出してみると、特にどこの店の物というでもない無地の紙袋だ。

 やはり特徴のない透明なセロハンテープを取って中を覗き込み……、「え?」と素の声がでる。

 マチが三、四センチメートルはある紙袋に、ギチッとリンゴマークのカードと、グラスランドのバリアブルカードが詰まっていた。

「……えげつない……」

 上限は五万円までなので、当然みっちり入れているに決まっている。

「……これは……。うん。……まぁ、うん。何かに有効利用させてもらおう」

 因みにこの時の香澄は知らない事だが、パソコンのメールには別途、グラスランドの五十万円分のギフトコードが送られていた。

 あとから聞いた話では、二十八個のプレゼントにカウントされていないとの事だ。
 なぜなら「電子だから」という大人げない答えが返ってくる――のは、後日の事になる。

「……はぁ。クローゼット見てみようか」

 立ち上がってウォークインクローゼットに入ると、分かりやすい所に紙袋が二つあった。

 ゴソゴソと中身を出すと、見るからに上質なマフラーが入っていた。
 ミルクベージュのそれはフワフワしていて、頬ずりするととても気持ちいい。

「……『ペク&コー』か……。知らないけど、いい物っぽいなぁ」

 うん、と頷いてからまたなむなむと手を合わせ、もう一つの紙袋をじっと見る。
 誰がどう見ても、オレンジ色のそれは高級ブランドと言えばの『アルメス』だ。

「ふぅー……」

 深呼吸をしてから、香澄は紙袋の中から箱を取りだす。

「わぁ……」

 出てきたのはミッドナイトブルーの革手袋だ。
 革は滑らかで柔らかく、気持ちいい。

 紙袋の中にもう一つ箱があり、中には革製のリングにチェーンがついているアイテムが入っていた。

「ん? これ何だろう?」

 考えていると、佑からのメッセージカードを見つけたので読んでみる。

『これからの季節、この手袋が香澄の手を寒さから守ってくれますように。一緒に入っているのは手袋ホルダーです。手袋をなくしてしまわないように、鞄の内側につけると便利かもしれません』

「なる……ほど。こんな物が存在するのか……」

 ほぉう……と頷いた香澄は、手袋ホルダーを見て一人赤面する。

「……佑さんの事だから、一瞬SMチックな道具かと思っちゃった」

 一人反省した香澄は、ハァ……と溜め息をついて天井を仰ぐ。

「ん……? と」

 上を見た時、帽子などを置いてある場所に、もう一つ紙袋を見つけた。

 中には円柱形の箱があり、パカリと開くとイヤーマフが入っている。

「わぁ……気持ちいい」

 ライトグレーのイヤーマフは、毛足の長いファーを使われていて高級感がある。

「ありがとう、佑さん。ふふ、腹巻きとかじゃなくて良かった。『腹を冷やしたら駄目だ』っていつも言われているし」

 それぞれを冬物の所にしまってから溜め息をつき、今まで見つけた物を数えて、残りはあと三つほどだと確認する。

 部屋に戻ると昼過ぎになっていて、階下からはいい匂いがしていた。

「呼ばれるまで探そうかな」

 呟いてから、「やはり部屋かな?」と思ってじっくりと自室を見る。

「ん? んー……?」

 ベッド下に何かを見つけた香澄は、床に膝をついて手探りする。

「でかっ」

 両手を差し入れて引っ張り出したのは、そこそこ大きく平べったい箱だ。
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