836 / 1,549
第十三部・イタリア 編
ここまで必死だったっけ
しおりを挟む
それから一階をうろうろしたあと、地下に向かった。
「佑さんの作業部屋は立ち入り禁止だから、ないとして……。ワインセラーもない……かな?」
言いつつ、ワインセラーの電気をパチンとつけて中を覗き込み、「……あった」と呟く。
そこは巨大なワインセラーを置く部屋になっていて、ワインセラーの中には酒類の他にもチーズやチョコレートなども入っている。
加えて、ちょっと一人飲みをするために、バーカウンターとスツール、ソファセットもある。
そのバーカウンターの上に、小さめのショッパーがあった。
「……バッヂ……」
赤と緑の特徴的なストライプは、まごう事なきバジーリオ・バッヂだ。
「せめてお手軽な物でありますように……」
もうプレゼントを受け取って、嬉しいのだか申し訳ないのだか分からない。
とりあえず佑の愛が重たい事だけは分かる。
黒い箱を開けると、中にサングラスが入っていた。
そしてバジーリオ・バッヂのメッセージカードに佑の文字がある。
『これから冬になるけど、紫外線はどの季節にもあります。香澄の綺麗な目を守るために、サングラスは何種類あっても困らないので、ぜひつけてください』
「……うん。気持ちはありがたいんだけど……。いや、ありがとう……」
香澄は自分の部屋にブランド物のサングラスが二十本近くあるのを思いだし、生暖かく笑う。
ショッパーを持ってシアタールームに向かうと、そこのテーブルにも平たい箱が置いてあった。
「むむ……」
ソファに座って箱を手にすると、かなりずっしりしている。
(……嫌な予感……)
そう思うも、予感はズバリ的中していて、出てきたのはまたリンゴのマークだ。
「……最新型のeコミュ……」
今年の十月に新モデルが出たばかりのスマホ、eコミュニケーションだ。
おまけに一番大きいサイズな上に、やはり容量も一番大きいと見た。
「……私そんなに容量使わないんだけどなぁ……」
ブツブツ言いながら、ためしに電源を入れてみる。
サイドボタンを長押しすると、コスモスレイン社のリンゴマークが出たあとに、ロック画面が出た――のだが。
「ぶほっ」
大きな液晶にばんっと出たのは、眠っている香澄にキスをしてる佑の自撮りだ。
「なんってものをロック画面にしてるの!? せ、設定!」
最新機種の使い方はよく分からないが、気が付くとホーム画面になっていて、その壁紙にもう一回噎せた。
今度は上半身裸の佑が、こちらに色っぽい目を向けて微笑んでいる写真だ。
逞しい胸板や割れた腹筋がくっきり浮かび上がり、実に興奮し――かけて香澄は我に返る。
「そ、そうじゃなくて……」
「もう……」と言ったあと、すでに入っているアプリを気にする。
コネクターナウを試しに開いてみると、登録されてあるアカウントは、佑のプライベートと社用アカウントのみだ。
「……ここまでしなくても……」
私用スマホは二台なくても大丈夫なので、そのうち引き継ぎをしにショップに行かなければ。
「はぁ……」
画面を設定し直す気力もなくなり、香澄はソファの背もたれに身を預けて溜め息をつく。
天井を見上げて「困った人だなぁ」と佑の事を思い――、急におかしくなってクスクス笑いだした。
「……おっかしぃ。佑さんってここまで必死だったっけ。いつまで経っても、私を全力で好きでいてくれるんだなぁ……」
不意に、『男が急に貢ぎだしたらやましい事がある証拠』という言葉を思いだした。
しかしそれに関してはまったく不安にならない。
「こんなに桁外れの額を貢いでくれる人も、そうそういないよなぁ……。物をもらって満足するのはあんまり良くないけど、ここまで愛されている人は私しかいないって思える。誕生日になるたびにこんなに沢山のプレゼントはいらないけど、本気度は分かったよ。ありがとう」
香澄はここにいない佑に向かって微笑みかけたあと、気を取り直して立ちあがった。
「……さて、クローゼットと自分の部屋、見てみよっか」
見つけた〝お宝〟を持って二階の私室に向かい、とりあえずデスクに置く。
――と。
「ん?」
デスクの上に箱があるのを見つけた香澄は、アーロンチェアに腰掛けるとラッピングを開いた。
「んー、万年筆。……わぁ、可愛い。『星の王子さま』だ」
万年筆は香澄でも知っているドイツの老舗ブランドの物で、ブルーの軸には『星の王子さま』に出てくるキツネの顔が描かれてある。
「佑さんの作業部屋は立ち入り禁止だから、ないとして……。ワインセラーもない……かな?」
言いつつ、ワインセラーの電気をパチンとつけて中を覗き込み、「……あった」と呟く。
そこは巨大なワインセラーを置く部屋になっていて、ワインセラーの中には酒類の他にもチーズやチョコレートなども入っている。
加えて、ちょっと一人飲みをするために、バーカウンターとスツール、ソファセットもある。
そのバーカウンターの上に、小さめのショッパーがあった。
「……バッヂ……」
赤と緑の特徴的なストライプは、まごう事なきバジーリオ・バッヂだ。
「せめてお手軽な物でありますように……」
もうプレゼントを受け取って、嬉しいのだか申し訳ないのだか分からない。
とりあえず佑の愛が重たい事だけは分かる。
黒い箱を開けると、中にサングラスが入っていた。
そしてバジーリオ・バッヂのメッセージカードに佑の文字がある。
『これから冬になるけど、紫外線はどの季節にもあります。香澄の綺麗な目を守るために、サングラスは何種類あっても困らないので、ぜひつけてください』
「……うん。気持ちはありがたいんだけど……。いや、ありがとう……」
香澄は自分の部屋にブランド物のサングラスが二十本近くあるのを思いだし、生暖かく笑う。
ショッパーを持ってシアタールームに向かうと、そこのテーブルにも平たい箱が置いてあった。
「むむ……」
ソファに座って箱を手にすると、かなりずっしりしている。
(……嫌な予感……)
そう思うも、予感はズバリ的中していて、出てきたのはまたリンゴのマークだ。
「……最新型のeコミュ……」
今年の十月に新モデルが出たばかりのスマホ、eコミュニケーションだ。
おまけに一番大きいサイズな上に、やはり容量も一番大きいと見た。
「……私そんなに容量使わないんだけどなぁ……」
ブツブツ言いながら、ためしに電源を入れてみる。
サイドボタンを長押しすると、コスモスレイン社のリンゴマークが出たあとに、ロック画面が出た――のだが。
「ぶほっ」
大きな液晶にばんっと出たのは、眠っている香澄にキスをしてる佑の自撮りだ。
「なんってものをロック画面にしてるの!? せ、設定!」
最新機種の使い方はよく分からないが、気が付くとホーム画面になっていて、その壁紙にもう一回噎せた。
今度は上半身裸の佑が、こちらに色っぽい目を向けて微笑んでいる写真だ。
逞しい胸板や割れた腹筋がくっきり浮かび上がり、実に興奮し――かけて香澄は我に返る。
「そ、そうじゃなくて……」
「もう……」と言ったあと、すでに入っているアプリを気にする。
コネクターナウを試しに開いてみると、登録されてあるアカウントは、佑のプライベートと社用アカウントのみだ。
「……ここまでしなくても……」
私用スマホは二台なくても大丈夫なので、そのうち引き継ぎをしにショップに行かなければ。
「はぁ……」
画面を設定し直す気力もなくなり、香澄はソファの背もたれに身を預けて溜め息をつく。
天井を見上げて「困った人だなぁ」と佑の事を思い――、急におかしくなってクスクス笑いだした。
「……おっかしぃ。佑さんってここまで必死だったっけ。いつまで経っても、私を全力で好きでいてくれるんだなぁ……」
不意に、『男が急に貢ぎだしたらやましい事がある証拠』という言葉を思いだした。
しかしそれに関してはまったく不安にならない。
「こんなに桁外れの額を貢いでくれる人も、そうそういないよなぁ……。物をもらって満足するのはあんまり良くないけど、ここまで愛されている人は私しかいないって思える。誕生日になるたびにこんなに沢山のプレゼントはいらないけど、本気度は分かったよ。ありがとう」
香澄はここにいない佑に向かって微笑みかけたあと、気を取り直して立ちあがった。
「……さて、クローゼットと自分の部屋、見てみよっか」
見つけた〝お宝〟を持って二階の私室に向かい、とりあえずデスクに置く。
――と。
「ん?」
デスクの上に箱があるのを見つけた香澄は、アーロンチェアに腰掛けるとラッピングを開いた。
「んー、万年筆。……わぁ、可愛い。『星の王子さま』だ」
万年筆は香澄でも知っているドイツの老舗ブランドの物で、ブルーの軸には『星の王子さま』に出てくるキツネの顔が描かれてある。
22
お気に入りに追加
2,546
あなたにおすすめの小説
『逃れられない淫らな三角関係』番外編 ヘルプラインを活用せよ!
臣桜
恋愛
『逃れられない淫らな三角関係』の番外編です。
やりとりのある特定の読者さまに向けた番外編(小冊子)です。
他にも色々あるのですが、差し障りのなさそうなものなので公開します。
(他の番外編は、リアルブランド名とかを出してしまっている配慮していないものなので、ここに載せるかは検討中)
地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~
あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる