835 / 1,559
第十三部・イタリア 編
ここ掘れワンワン
しおりを挟む
もらったプレゼントの値段を考えるのは失礼だ。
それでも「たかが二十八歳の誕生日なのに、こんなにお金を使わなくても……」と恐ろしくなっている。
誕生日で盛大に祝うと言えば、高齢になってからの○○寿というイメージがある。
だからなぜ中途半端な年齢なのに、こんなに祝われるのか不思議でならない。
しかしそれが御劔クオリティだ。
諦めを感じながら一階に降り、シューズクローゼットのドアを開くと、やはりそこにも紙袋がある。
「……これは……ブーツかな……?」
ラッピングをとると、『サルテル』とフランス語で書かれてある。
「……知らないブランドだ」
シューズボックスの蓋を開けて薄紙を避けると、美しく艶めいたキャメルのロングブーツが入っていた。
「わぁ、綺麗……」
高級な洋館の、磨き抜かれて使い込まれた木の家具のようにも見える色だ。
艶やかなロングブーツを履いてみると、やはりピッタリだ。
姿見の前に立った香澄は、思わず微笑んだ。
「すごい……。何だか脚が綺麗になったように見える」
鏡を見ながらクルリと一回転してみて、香澄はニマニマしつつブーツを箱に戻す。
「綺麗だけど……ブーツなら一、二万ぐらいかな? これなら……」
そういう香澄の推測は大ハズレで、こちらも十万円弱する代物だ。
ブーツはシューズクローゼットにしまうので、そのまま置いておく事にした。
「さて……。ん?」
玄関から家の中を向いたところで、正面にあるフラワーアレンジメントの花瓶の側に小さな箱を見つけた。
「これは……」
包みは先ほどのロードライトガーネットと同じ物だ。
覚悟を決めてパカリと箱を開けると、先ほどのロードライトガーネットのイヤリングが入っていた。
「はぁー……。綺麗……」
台座から一つ外して空中にかざしてみると、昼の光を反射して深い紅とキャンディーのような薄い赤とがキラキラと輝く。
石も耳たぶに当たる部分に大ぶりの物が一つあり、そこから小ぶりの石を一つ挟んでティアドロップの石がぶらさがり、揺れるデザインだ。
「……社長、これを普段づけしろっていうのは流石に無理ですよ……」
一人ボソリと佑に突っ込んだあと、イヤリングに向かって両手をあわせ、なむなむと拝んだ。
リビングに入ると、斎藤はキッチンに立ちお菓子を作っているようだ。
「宝探しは順調ですか?」
「……ここ掘れワンワンするほど、お宝がざっくざっく出て戸惑っている、一般家庭のミックス犬の気分です……」
香澄の困り切った顔と言葉に、斎藤は朗らかに笑った。
「これで……十五くらいのはずだから、まだ十三ある。ひぇぇ……」
「頑張って全部探してください。終わったら一緒におやつを食べましょう。夕食は御劔さんとディナーですから、少しなら問題ないはずです」
「はい、おやつを励みにします!」
ぐっと拳を握り、香澄はリビングをうろうろしだす。
「んー、おや」
視線をテレビのほうにやった時、液晶テレビの両脇にあるトールボーイスピーカーの上にまた小箱を見つけた。
「……はい、三点セットですね」
こちらもロードライトガーネットシリーズと同じ包装紙だ。
思った通り開けてみると、大粒のロードライトガーネットのペンダントがあった。
「……うん、きっとこれで宝石シリーズは終わり」
ペンダントに向かってまたなむなむと拝むと、ぐるりとリビングを見回し、フェリシアがリボンをつけているのに気が付いた。
正確には、フェリシアの下にリボンが掛かった箱がある。
「ちょっとごめんね、フェリシア」
『どういたしまして、カスミさん』
律儀に返事をしてくれるフェリシアに思わず笑い、カスミは正方形の箱のラッピングを解く。
「おお……。ヘッドフォン」
(でもなんでヘッドフォン……)
そう思ってメーカーの名前を見た時にハッとした。
(これ、クラシック聞くのに適してるらしい……って私が一回口走ったやつだ)
スマホを見ながら、たった一回佑に言ったのは結構前だ。
佑の記憶力に、感謝より寒気を覚える。
それでも「たかが二十八歳の誕生日なのに、こんなにお金を使わなくても……」と恐ろしくなっている。
誕生日で盛大に祝うと言えば、高齢になってからの○○寿というイメージがある。
だからなぜ中途半端な年齢なのに、こんなに祝われるのか不思議でならない。
しかしそれが御劔クオリティだ。
諦めを感じながら一階に降り、シューズクローゼットのドアを開くと、やはりそこにも紙袋がある。
「……これは……ブーツかな……?」
ラッピングをとると、『サルテル』とフランス語で書かれてある。
「……知らないブランドだ」
シューズボックスの蓋を開けて薄紙を避けると、美しく艶めいたキャメルのロングブーツが入っていた。
「わぁ、綺麗……」
高級な洋館の、磨き抜かれて使い込まれた木の家具のようにも見える色だ。
艶やかなロングブーツを履いてみると、やはりピッタリだ。
姿見の前に立った香澄は、思わず微笑んだ。
「すごい……。何だか脚が綺麗になったように見える」
鏡を見ながらクルリと一回転してみて、香澄はニマニマしつつブーツを箱に戻す。
「綺麗だけど……ブーツなら一、二万ぐらいかな? これなら……」
そういう香澄の推測は大ハズレで、こちらも十万円弱する代物だ。
ブーツはシューズクローゼットにしまうので、そのまま置いておく事にした。
「さて……。ん?」
玄関から家の中を向いたところで、正面にあるフラワーアレンジメントの花瓶の側に小さな箱を見つけた。
「これは……」
包みは先ほどのロードライトガーネットと同じ物だ。
覚悟を決めてパカリと箱を開けると、先ほどのロードライトガーネットのイヤリングが入っていた。
「はぁー……。綺麗……」
台座から一つ外して空中にかざしてみると、昼の光を反射して深い紅とキャンディーのような薄い赤とがキラキラと輝く。
石も耳たぶに当たる部分に大ぶりの物が一つあり、そこから小ぶりの石を一つ挟んでティアドロップの石がぶらさがり、揺れるデザインだ。
「……社長、これを普段づけしろっていうのは流石に無理ですよ……」
一人ボソリと佑に突っ込んだあと、イヤリングに向かって両手をあわせ、なむなむと拝んだ。
リビングに入ると、斎藤はキッチンに立ちお菓子を作っているようだ。
「宝探しは順調ですか?」
「……ここ掘れワンワンするほど、お宝がざっくざっく出て戸惑っている、一般家庭のミックス犬の気分です……」
香澄の困り切った顔と言葉に、斎藤は朗らかに笑った。
「これで……十五くらいのはずだから、まだ十三ある。ひぇぇ……」
「頑張って全部探してください。終わったら一緒におやつを食べましょう。夕食は御劔さんとディナーですから、少しなら問題ないはずです」
「はい、おやつを励みにします!」
ぐっと拳を握り、香澄はリビングをうろうろしだす。
「んー、おや」
視線をテレビのほうにやった時、液晶テレビの両脇にあるトールボーイスピーカーの上にまた小箱を見つけた。
「……はい、三点セットですね」
こちらもロードライトガーネットシリーズと同じ包装紙だ。
思った通り開けてみると、大粒のロードライトガーネットのペンダントがあった。
「……うん、きっとこれで宝石シリーズは終わり」
ペンダントに向かってまたなむなむと拝むと、ぐるりとリビングを見回し、フェリシアがリボンをつけているのに気が付いた。
正確には、フェリシアの下にリボンが掛かった箱がある。
「ちょっとごめんね、フェリシア」
『どういたしまして、カスミさん』
律儀に返事をしてくれるフェリシアに思わず笑い、カスミは正方形の箱のラッピングを解く。
「おお……。ヘッドフォン」
(でもなんでヘッドフォン……)
そう思ってメーカーの名前を見た時にハッとした。
(これ、クラシック聞くのに適してるらしい……って私が一回口走ったやつだ)
スマホを見ながら、たった一回佑に言ったのは結構前だ。
佑の記憶力に、感謝より寒気を覚える。
23
お気に入りに追加
2,570
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です


甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる