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第十三部・イタリア 編

帰国後のメッセージ

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「もぉ、笑いすぎ」

 ぺし、と佑を叩いてから、香澄は最後に沢山バッヂのついているコネクターナウを開く。

「……おおぅ」

 家族と麻衣、ルカとマリアから連絡があるのは予想内だったが、双子からも山ほど通知がある。

 父から『お帰りなさい。無理をしないように』とあり、母からも似たようなメッセージがあった。
 弟からは『お土産楽しみにしてる!』でブレがない。

 麻衣からはこの通りだ。

『ジャフォで写真見たよ! 綺麗だし美味しそう! 本場の味って食べてみたい! いつか香澄の翻訳つきで一緒に行きたいな! 旅行気分味わわせてくれてありがとう! 札幌に帰省した時は思い詰めてたけど、愛しの御劔さんとヨーロッパを回って羽を伸ばせた? また今度会えた時、話を聞かせてね。時差ボケとか大変だと思うから、ゆっくり休んでからまた日常を頑張ってね』

 それを読み、香澄は思わず笑顔になって『近いうちに手紙とお土産を、宅急便で送るね』と返事をした。

「佑さん、私いつか麻衣と一緒にヨーロッパ行きたい」

「え? ……いや、麻衣さんとならいいけど……。二人でか?」

 反対はしないものの、佑は心配げな顔だ。

「うん。だって女子旅して二人で食い倒れとかしたいし」

「……邪魔はしないから、ついて行ったら駄目か?」

「ええ? んー……、麻衣が何て言うか分かんないけど」

 そう言うと、佑も困って頭を掻く。

「今度、麻衣さんを東京に招こうか」

「いいの? 麻衣も来たいって言ってたし、私は大歓迎! うちに近いホテルとか探して、お勧めしないと」

「え? うちに泊まってもらえばいいだろう」

 キョトンとする佑を見て、香澄は嬉しさが胸一杯に広がるのを感じつつ、確認する。

「いいの? 佑さんのお家なのに……」

 確認しつつも、香澄の目はキラキラ輝いている。

 まるでお尻に尻尾が生えてパサパサと振っていそうな顔に、佑が笑った。

「香澄の大切な人なら、俺の大切な人だ。あちらさえ良ければいつでも歓迎だよ」

「あ……、ありがとう!」

 がばっと抱きつくと、佑がよしよしと撫でてくれる。
 香澄はすぐに麻衣にメッセージを送った。

『佑さんがいつでもお泊まりしてOKって言ってくれたから、ヨーロッパ行く前に、東京でデートしよう!』

 送ってからムフフ……と笑い、ルカとマリアからのメッセージを開く。

 それぞれ、無事に帰れたかとか当たり障りのない挨拶だったので、英語で『お世話になりました。たっぷり寝て、懐かしの和食を食べました』と返事をする。

「『今度、英語でお礼のお手紙を書きます』……と」

 新しい便箋を買いに行く理由を見つけられて、香澄はまたムフフ、と笑う。

「さて」

 最後は双子のグループトークルームだ。

 覚悟して開くと、ドババッとアロイスとクラウスのアイコンが並んでいる。

 双子もSNSでは自分たちの違いを明確化させたいようで、アイコンは分かりやすいようにそれぞれ『A』と『C』のロゴだ。

 以前聞いた話では、せっかくだからあちこちで使おうという事で、自分たちでまじめにロゴを作ったらしい。

(確かに顔写真だったら、パッと見どっちがどっちか分からないもんね。私もこのアイコンだと分かりやすくて助かる)

『香澄、パリにいたんだよねー。会いたかったなー』

『香澄と一緒にパリデートしたかったよね』

『食いしん坊の香澄にさ、美味いスイーツ食わせるんだよ。それを正面から眺めるのが俺たちの至福』

『で、いい塩梅にプクプクした香澄を頂くのが僕らlol』

「もー……」

 香澄は溜め息をつきつつ、変わらない双子に思わず笑っていた。

「どうした?」

「いや、アロイスさんとクラウスさん」

「……はぁ。あいつらか。俺としか会えなかったから、『会うなら香澄がいい』とか言ってたな」

「んー、うん。まだ全部見てないけど」

 延々と続く双子のお喋りを辿っていくと、これから先のスケジュールの話になっていた。
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