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第十三部・イタリア 編
御劔邸での出迎え
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「お帰りなさいませ」
大きな門をくぐって御劔邸の敷地に入り、車から降りると、円山が頭を下げた。
加えて松井と斎藤、島谷もいる。
ヨーロッパに行っていた間、非番だった護衛たちも来ていて勢揃いだ。
「斎藤さん! 島谷さん! お久しぶりです!」
疲れも忘れて駆け寄ると、斎藤は涙ぐんで抱きついてきた。
「赤松さん……! お元気そうで! 社長もきちんと食べてくださっているようで、安心しました!」
いつもにこやかな斎藤が、珍しく涙を見せている。
思えば斎藤とは一か月ぶり以上の対面だ。
香澄が北海道に戻っていた間、彼女は佑が何も食べず、生きる死体のようになっていたのを目にしていた。
だから幸せそうに笑っている二人を見て、こみ上げるものがあったのだろう。
「その節はすみませんでした。今はすっかり心身共に健康になりました。また美味しい食事をお願いします」
佑が頭を下げると、涙ぐんだ斎藤が笑う。
「ええ! 腕によりを掛けて! まずは『帰国して良かった』としみじみ思うような、日本食ラインナップでいきますね」
「はい」
香澄は喜んでもらえると思い、お土産の事を話す。
「斎藤さん、島谷さん、あとでお土産を渡しますね」
「ええ、ありがとうございます」
女性陣と話したあと、香澄は松井に向かって深々と頭を下げた。
「松井さん。長らく職務放棄をして申し訳ございませんでした。復帰できる体調となりましたので、また宜しくお願い致します」
いつもながら隙のないピシッとした松井の姿を見ると、香澄も背筋が伸びる。
「おかえりなさい、赤松さん。復帰できるとの事で安心しました。出社するのは、時差ボケなどが治ってからで構いませんので、宜しくお願いします」
変わらない温厚な声を聞いてそろりと頭を上げ、社員の様子を尋ねる。
「あの、社員の皆さんはどうですか? ……その、私の噂とか……」
「心配しているような、ネガティブな噂は立っていませんよ。赤松さんが思っている以上に、皆さん良識ある社員です。『御劔社長の婚約者である事が、どれほど大変か』を分かっています」
「はい」
やはり第三者の松井から、客観的な言葉を聞かされると安心する。
松井は佑に向き直った。
「社長、今日と明日はゆっくりお休みください。メールは変わらず回しますので、目を通してくださると助かります。時差ボケは明日のうちに治して頂いて、明後日から出社して頂きます」
「分かりました。不在の間、ありがとうございます」
佑が頷くと、香澄も焦ってコクコクと頷く。
「私も明日のうちに時差ボケを直します!」
張り切って言ったのだが、松井はゆるりと首を横に振った。
「社長は世界中を移動されるのに慣れていますが、赤松さんは三週間もヨーロッパに行ったのは初めてでしょう。三、四日は朝に起きられないと思ってください。それを見越して、一週間後の週明けからの復帰をお願いします」
「い……いいんですか?」
「復帰するなら、体調がきちんと戻った上でお願いします。無理をして早退したり、医務室に向かう事があっては、スケジュールが崩れますから」
変わらない松井の言葉に、香澄は「はいっ」としっかり頷いた。
「河野さんもお疲れ様でした。河野さんは秘書業が長いでしょうから、ご自身で体調が戻ったと思ったタイミングで復帰をお願いします」
「承知しました」
河野は松井の言葉に頷く。
そのあと、護衛たちが佑に「荷物をすべて運び終わりました」と告げた。
「ありがとう、ご苦労様。休養中、特に外出する予定はないし、出掛けるとしても他の者に頼むから、ゆっくり休んでほしい」
「はい」
運転手、護衛たちが頷き、呉代は「立ち食いそば喰って帰ろ」と目をしばしばさせている。
大きな門をくぐって御劔邸の敷地に入り、車から降りると、円山が頭を下げた。
加えて松井と斎藤、島谷もいる。
ヨーロッパに行っていた間、非番だった護衛たちも来ていて勢揃いだ。
「斎藤さん! 島谷さん! お久しぶりです!」
疲れも忘れて駆け寄ると、斎藤は涙ぐんで抱きついてきた。
「赤松さん……! お元気そうで! 社長もきちんと食べてくださっているようで、安心しました!」
いつもにこやかな斎藤が、珍しく涙を見せている。
思えば斎藤とは一か月ぶり以上の対面だ。
香澄が北海道に戻っていた間、彼女は佑が何も食べず、生きる死体のようになっていたのを目にしていた。
だから幸せそうに笑っている二人を見て、こみ上げるものがあったのだろう。
「その節はすみませんでした。今はすっかり心身共に健康になりました。また美味しい食事をお願いします」
佑が頭を下げると、涙ぐんだ斎藤が笑う。
「ええ! 腕によりを掛けて! まずは『帰国して良かった』としみじみ思うような、日本食ラインナップでいきますね」
「はい」
香澄は喜んでもらえると思い、お土産の事を話す。
「斎藤さん、島谷さん、あとでお土産を渡しますね」
「ええ、ありがとうございます」
女性陣と話したあと、香澄は松井に向かって深々と頭を下げた。
「松井さん。長らく職務放棄をして申し訳ございませんでした。復帰できる体調となりましたので、また宜しくお願い致します」
いつもながら隙のないピシッとした松井の姿を見ると、香澄も背筋が伸びる。
「おかえりなさい、赤松さん。復帰できるとの事で安心しました。出社するのは、時差ボケなどが治ってからで構いませんので、宜しくお願いします」
変わらない温厚な声を聞いてそろりと頭を上げ、社員の様子を尋ねる。
「あの、社員の皆さんはどうですか? ……その、私の噂とか……」
「心配しているような、ネガティブな噂は立っていませんよ。赤松さんが思っている以上に、皆さん良識ある社員です。『御劔社長の婚約者である事が、どれほど大変か』を分かっています」
「はい」
やはり第三者の松井から、客観的な言葉を聞かされると安心する。
松井は佑に向き直った。
「社長、今日と明日はゆっくりお休みください。メールは変わらず回しますので、目を通してくださると助かります。時差ボケは明日のうちに治して頂いて、明後日から出社して頂きます」
「分かりました。不在の間、ありがとうございます」
佑が頷くと、香澄も焦ってコクコクと頷く。
「私も明日のうちに時差ボケを直します!」
張り切って言ったのだが、松井はゆるりと首を横に振った。
「社長は世界中を移動されるのに慣れていますが、赤松さんは三週間もヨーロッパに行ったのは初めてでしょう。三、四日は朝に起きられないと思ってください。それを見越して、一週間後の週明けからの復帰をお願いします」
「い……いいんですか?」
「復帰するなら、体調がきちんと戻った上でお願いします。無理をして早退したり、医務室に向かう事があっては、スケジュールが崩れますから」
変わらない松井の言葉に、香澄は「はいっ」としっかり頷いた。
「河野さんもお疲れ様でした。河野さんは秘書業が長いでしょうから、ご自身で体調が戻ったと思ったタイミングで復帰をお願いします」
「承知しました」
河野は松井の言葉に頷く。
そのあと、護衛たちが佑に「荷物をすべて運び終わりました」と告げた。
「ありがとう、ご苦労様。休養中、特に外出する予定はないし、出掛けるとしても他の者に頼むから、ゆっくり休んでほしい」
「はい」
運転手、護衛たちが頷き、呉代は「立ち食いそば喰って帰ろ」と目をしばしばさせている。
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