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第十三部・イタリア 編
軽やかに生きなさい
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『タスク、また何かあったら気兼ねなく連絡してね』
『あまり考えすぎないように。軽やかに生きなさい』
佑はルカとマルコとハグをし、アントニオとも挨拶をする。
『お世話になりました。八月からまだ三か月しか経っていませんが、色んな人のお陰で前に進めている気がします』
ロンドンにいた時よりずっと穏やかな表情になった佑を見て、マルコは微笑む。
『時は流れる。どれだけ深い傷を負っても、生き物には自然治癒力があり、仲間が庇ってくれるようにできている。自分のあり方を見失わず、香澄さんを大事にしなさい』
『ありがとうございます、マルコ』
礼を言うと、マルコがチャーミングな笑みを浮かべた。
『今度アドラーとエスプレッソでも飲もうかね。彼はなかなか喰えない人物だが、孫と孫嫁を味方に引き入れたなら、もう少し柔軟に話してくれるかもしれない』
『はは! そういう時はどんどん俺の名前を使ってください。あの人は少しぐらい困ったほうがいいんです』
三週間前に香澄とニセコで再会するまで、鬱々としていた佑はもういない。
誰の邪魔も入らない土地で香澄と濃厚な時間を過ごし、心に根付いていた憎悪を断ち切る努力をし、信頼できる人とじっくり話し合えた。
帰国したあと多忙な日々が待っていても、側に香澄がいてくれるなら頑張れる。
『ルカさんも、マルコさんもありがとうございました!』
香澄は男性たちの所に向かい、全員と軽いハグをする。
『僕とマリアの結婚式が先か、君たちの結婚式が先か、どっちだろうね?』
『えっ?』
ルカに言われ、香澄は思わず赤面する。
『どっちが先か分からないけど、僕らの結婚が決まったら勿論君たちを招待するからね? 仕事が忙しくても来てもらうから、覚悟しておいて!』
ルカは寄り添ったマリアの肩を組み、幸せそうに笑う。
『俺たちも立派な式を挙げたいと思っている。その時は来てくれ』
佑も負けじと香澄の肩を抱き、ルカとハイタッチする。
『元気でね、カスミ』
『はい、ルカさん』
最後にもう一度恩人である彼とハグし、車に向かって歩きだした。
「Grazie per il tuo aiuto!(大変お世話になりました!)」
最後に香澄は車の前で一礼をし、この時のために練習をしたイタリア語で別れを告げた。
「Ci vediamo!(またね!)」
十一月の日差しの下、フィオーレ家の家族が笑う。
香澄はもう一度ペコリと頭を下げてブンブンと手を振ってから、車の後部座席に乗り込んだ。
隣に佑が乗り、車のドアが閉まる。
「出してくれ」
佑が瀬尾に告げ、車がゆっくり走りだす。
香澄は振り向き、ルカたちに手を振り続けた。
彼らの姿が見えなくなるまで手を振り、息をついてから前を向く。
「……いいご家族だったね」
「そうだな。『イタリア男はマンマが大好き』だとルカも言っていたし、愛情を隠さないんだろうな」
「ふふ、マリアさん大変そう」
「まぁ、どこの国でも嫁姑問題はあるけど、間に入る婿の頑張り次第だろう」
「佑さんも頑張ってくれるよね?」
彼の目を見つめて笑うと、佑は破顔する。
「当たり前だ。俺はいつでも香澄の味方だよ」
抱き寄せられて額にキスをされ、香澄は思わず表情を緩める。
「んー……。日本に戻れる」
「ごめんな。連れ回して」
「ううん。楽しかったよ。美味しい物たくさん食べられたし」
「ふふ。食いしん坊は帰国したら空港のうどんか?」
「うん! 今度は洋風じゃなくて、和風お出汁のにしよっと」
「それを楽しみに、フライトも我慢してくれ」
「大丈夫だよ。佑さんの飛行機にベッドがあるし、楽ちんだもの」
三十分ほどでフィウミチーノ空港につき、荷物を飛行機に詰め込む。
そのあと、離陸を迎えた。
『あまり考えすぎないように。軽やかに生きなさい』
佑はルカとマルコとハグをし、アントニオとも挨拶をする。
『お世話になりました。八月からまだ三か月しか経っていませんが、色んな人のお陰で前に進めている気がします』
ロンドンにいた時よりずっと穏やかな表情になった佑を見て、マルコは微笑む。
『時は流れる。どれだけ深い傷を負っても、生き物には自然治癒力があり、仲間が庇ってくれるようにできている。自分のあり方を見失わず、香澄さんを大事にしなさい』
『ありがとうございます、マルコ』
礼を言うと、マルコがチャーミングな笑みを浮かべた。
『今度アドラーとエスプレッソでも飲もうかね。彼はなかなか喰えない人物だが、孫と孫嫁を味方に引き入れたなら、もう少し柔軟に話してくれるかもしれない』
『はは! そういう時はどんどん俺の名前を使ってください。あの人は少しぐらい困ったほうがいいんです』
三週間前に香澄とニセコで再会するまで、鬱々としていた佑はもういない。
誰の邪魔も入らない土地で香澄と濃厚な時間を過ごし、心に根付いていた憎悪を断ち切る努力をし、信頼できる人とじっくり話し合えた。
帰国したあと多忙な日々が待っていても、側に香澄がいてくれるなら頑張れる。
『ルカさんも、マルコさんもありがとうございました!』
香澄は男性たちの所に向かい、全員と軽いハグをする。
『僕とマリアの結婚式が先か、君たちの結婚式が先か、どっちだろうね?』
『えっ?』
ルカに言われ、香澄は思わず赤面する。
『どっちが先か分からないけど、僕らの結婚が決まったら勿論君たちを招待するからね? 仕事が忙しくても来てもらうから、覚悟しておいて!』
ルカは寄り添ったマリアの肩を組み、幸せそうに笑う。
『俺たちも立派な式を挙げたいと思っている。その時は来てくれ』
佑も負けじと香澄の肩を抱き、ルカとハイタッチする。
『元気でね、カスミ』
『はい、ルカさん』
最後にもう一度恩人である彼とハグし、車に向かって歩きだした。
「Grazie per il tuo aiuto!(大変お世話になりました!)」
最後に香澄は車の前で一礼をし、この時のために練習をしたイタリア語で別れを告げた。
「Ci vediamo!(またね!)」
十一月の日差しの下、フィオーレ家の家族が笑う。
香澄はもう一度ペコリと頭を下げてブンブンと手を振ってから、車の後部座席に乗り込んだ。
隣に佑が乗り、車のドアが閉まる。
「出してくれ」
佑が瀬尾に告げ、車がゆっくり走りだす。
香澄は振り向き、ルカたちに手を振り続けた。
彼らの姿が見えなくなるまで手を振り、息をついてから前を向く。
「……いいご家族だったね」
「そうだな。『イタリア男はマンマが大好き』だとルカも言っていたし、愛情を隠さないんだろうな」
「ふふ、マリアさん大変そう」
「まぁ、どこの国でも嫁姑問題はあるけど、間に入る婿の頑張り次第だろう」
「佑さんも頑張ってくれるよね?」
彼の目を見つめて笑うと、佑は破顔する。
「当たり前だ。俺はいつでも香澄の味方だよ」
抱き寄せられて額にキスをされ、香澄は思わず表情を緩める。
「んー……。日本に戻れる」
「ごめんな。連れ回して」
「ううん。楽しかったよ。美味しい物たくさん食べられたし」
「ふふ。食いしん坊は帰国したら空港のうどんか?」
「うん! 今度は洋風じゃなくて、和風お出汁のにしよっと」
「それを楽しみに、フライトも我慢してくれ」
「大丈夫だよ。佑さんの飛行機にベッドがあるし、楽ちんだもの」
三十分ほどでフィウミチーノ空港につき、荷物を飛行機に詰め込む。
そのあと、離陸を迎えた。
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