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第十三部・イタリア 編

イタリア最終日

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「よし、これだ。色は……、シャンパンゴールドにしようか」

 決めてしまうと、佑はキャミソールとタップパンツを手にベッドルームに戻る。
 香澄は相変わらずスヤスヤと眠っていて、緊張感の欠片もない。

「よいしょ」

 寝ている位置を頭が枕につくまで移動させ、膝下ストッキングを脱がせ、今日着ていたキャミソールとブラジャーも脱がせる。

「…………」

 まろやかな双丘や柔らかそうなお腹、むっちりとした太腿を見て、思わず思考が固まる。

(触りたい)

 素直にそう思うが、「いやいや」と思い直す。

(せっかく温まったのに、冷えさせたら駄目だ)

 思い直してテキパキとキャミソールとタップパンツを着させると、羽毛布団をぱふっと掛けた。

「……はぁ」

 温泉に入ったせいか、疲れた気がする。

 なぜだか温泉に入ると、体が緩んでそれまでの疲労が浮き上がり、返って疲れてしまう事が多い気がする。
 なので日本で温泉に行く時は、数日まとめてゆっくりできるスケジュールを立ててからにしていた。

 くぁ……と欠伸をした佑はキッチンに向かい、水を一杯飲む。

「俺も少し横になるか。飯は河野に受け取ってもらおう」

 そう独りごちると、河野にスマホでメッセージを送る。

 すぐに『了解致しました』と返事がきたのを確認して、佑は服を脱ぎ、下着一枚になって香澄の隣に潜り込んだ。

 もそ……と香澄の顔に顔を近付けると、プクッとした唇の間から、ぷぅ、ぷぅと小さな寝息が聞こえる。

「……っ、ふ、……ふふ。可愛いな」

 ストレートの髪をツルリと撫でて額にキスをすると、佑は香澄の傍らで目を閉じた。
 少し手の位置をさまよわせたあと、キャミソールの中に手を入れてぱふっと乳房を包む。

(よし、落ち着く)

 少し手を動かすと、ポヨポヨと柔らかく温かい感触が応えてくれる。

(あー……。好きだ)

 しばらくポヨポヨと手を動かしていると、眠気が押し寄せてくる。

(香澄の体温、安心するんだよな)

 眠る前に吸った空気には、ほんのりと甘い桃の香りが含まれていた。



**



 残り二日もローマで過ごした。

 せっかくローマに来たので、一日は観光して、もう一日は観光がてら土産を買う。

 観光ではあの有名なスペイン広場に行き、ルカの家にも少しお邪魔させてもらった。
 そこから近いトレヴィの泉、パンテオンを見たあと、真実の口へ行きコンスタンティヌスの凱旋門を経てコロッセオに行った。

 ランチにはパスタを食べ、本場のジェラートも口にした。

 フィオーレ家に戻ると、マルコの許可を得て佑と二人でフィオーレ家ドッグカフェ状態を楽しむ。

 彼らのおやつを分けてもらい、手から食べさせているとこの上なく幸せな気持ちになる。
 カデンツァのような大きな犬も可愛いし、小型犬も可愛い。

 初めは怖がって遠巻きにしていた猫たちも、最終日近くには触らせてくれるようになった。

 やがて最終日の午前中、香澄はフィオーレ家の人たちやマリアとハグしていた。

『元気でね! カスミ』

『イタリアに来たら、いつでも訪ねてちょうだい』

『イタリアのマンマのスパゲッティの味が知りたかったら、いつでも修行にいらっしゃい。マリアと一緒に鍛えてあげるわ』

 フランチェスカの言葉に、香澄はマリアと一緒に笑う。

『その時は宜しくお願いします!』

 笑顔で応えた香澄に、マリアが話しかけてくる。

『香澄さん、いつでも連絡をちょうだいね。時差があっても夜間モードにしているから、時間は気にしないでいいわ』

『ありがとうございます。そう言って頂けると心強いです』

『私はきっとルカの愚痴を書いてしまうわ。お互い、ストレスでパンパンになる前にどんどん打ち明けていきましょう』

『はい!』

 長時間のフライトを見越して、香澄はスウェットのロングスカートにパーカー、スニーカーというラフな格好だ。

 フィオーレ家の前には車が停まっていて、佑と香澄の乗車を待っている。
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