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第十三部・イタリア 編

屋外イチャイチャ

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 他の人は……と思えば、確かに何人かまでは分からないが、外国人カップルが体を寄せ合って親しげにしている。

 抱き合ってイチャイチャしている姿もあるので、これがこちらでのデフォルトなのだと自分に言い聞かせた。

「香澄? キスは?」

 佑に囁かれ、観念した香澄はおずおずと目を閉じる。

「ん……」

 緊張して目を閉じると、佑の唇がふんわりと重なった。
 ちゅ、ちゅと何度もついばまれ、温泉の心地よさも相まって気持ちがホワホワしてくる。

(変なの……。外でキスしてても、誰にも変な目で見られないなんて)

 トロンとした目を開くと、愛しさの籠もった目が見つめ返している。

「下ろすよ」

「うん……」

 足がついて少しホッとし、香澄は佑を見上げる。
 目が合って微笑み合ったあと、今度は温泉を満喫したいと気持ちを切り替える。

「あったかいね」

「離れの風呂にも浸かってたけど、温泉となると気分は別だよな」

「温泉、草津以来だね」

 口にしたあと、飯山たちに転ばされた事を思いだしてしまった。
 心の中に消化しきれない悔しさが蘇り、溜め息をついた香澄はピトリと佑にくっつく。

「ん?」

「……私、性格悪いの」

(佑さんとイタリアまで来て、ラブラブで温泉に入っている私は、飯山さんより佑さんに愛されて大切にされてる)

 自分に言い聞かせて幸せだと思わないと、あの時の感情に負けてしまいそうな気がする。

「何の事か分からないけど、香澄の性格が悪いなんてあり得ない。俺はもっと性悪な女を大勢知ってるから断言できる」

「もー……。相変わらず私に甘いんだから」

 エミリアの事を言っているのかと思ったが、それ以上は言わないでおいた。

 佑の地雷はもう心得ている。

「もう少しで帰国だね。時差ボケ凄くなりそう」

「そうだな。復帰するのは体調が戻ってからでいいからな?」

「ありがとう。でも佑さんはいつもすぐお仕事に戻るのに、私だけ休んでいられないよ」

「俺はあちこち行ったり来たりするのに、慣れてるから。そのために飛行機にもベッドがある訳だし」

「ふふ。あのベッド大きくて寝心地いいよね。飛行機の中だなんて信じられない」

 そう言ってから、日本からスペインまでの空路、あのベッドで致してしまったのを思い出し、赤面する。

「お、泳ごっと」

「ん? いま何か誤魔化さなかったか?」

 両手を前に出してプールの底を蹴った香澄の腰を掴み、佑がザバッと抱き寄せた。

「っにゃあ!」

 驚いたために変な声が出て、自分でびっくりする。

「こら。いつの間にうさぎから猫になった?」

 後ろから抱き締められ、耳元で囁かれる。
 ゾクッとして肩を跳ねさせて顔を背けるが、佑は耳にキスをしてきた。

「ん?」

 香澄はそのまま温泉プールの端まで移動させられ、縁に体を押しつけられる。

(え……っ)

 やにわに脚を開かれ、膝の裏を抱えられたかと思うと、香澄のお尻の下に佑の膝が当たって体を支えられる。

「ちょ、ちょっと? いくら何でもこの体勢は……」

 まるで立ったままセックスしているような体勢で、さすがに恥ずかしい。

「これぐらいのイチャつき、普通だよ。別にポロリしている訳じゃないんだから」

 あわあわとして周りを見てみると、カップルがディープキスをしていたり、香澄たち同様に縁の方でイチャイチャしている。

(えええ……)

 イチャつくのはこちらのテンプレートとして、公共の場所でベロチューが許されるのかと、セーフラインが分からなくなる。

「東京でもナイトプールだと、水中でちょっとした〝事故〟があるみたいだけど」

「う、嘘っ!? しちゃうの!?」

 香澄はナイトプールなどお洒落な場所は無縁で、どうなっているのか分からない。

「泡パーティーをしている所もあるし、下半身が見えないとやりやすいんだろうな」

 佑は他人事のように言う。

「うっそぉ……」

 やりやすい、というのはセックスを……だ。

 まさか東京で、公衆の面前で致している人がいるとは思わなかった。
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