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第十三部・イタリア 編
温泉プール
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「更衣室は男女共用だから、気をつけて」
「ええ? 珍しいね?」
緊張しながら更衣室に入ると、頭の部分と足元が覗いているフィッティングルームのようなボックスが幾つも並んでいる。
「そこ空いてるから二人で入ろう」
「え? 二人で?」
「今さら着替えを見て恥ずかしがる仲じゃないだろう?」
ニヤッと笑われ、「それもそうだけど……」とゴニョゴニョと言葉を返す。
狭い更衣室の中で佑はサッと服を脱いでしまい、予め着てきた水着姿になる。
香澄も服の下にビキニを着てきたので、ワンピースを脱いでしまうだけで済んだ。
ストッキングは着脱のしやすさを見越して、膝下タイプにしてある。
そのあとは空いているロッカーに荷物を入れた。
「……佑さんの水着姿、地味に初めて見た」
「俺も。よく見せて」
佑はビーチサンダルを履いた足をで半歩下がり、ビキニ姿をよく見てくる。
「ふぅん……? いいじゃないか。ちょっと後ろも見せて」
「もー」
ポニーテールにした髪を揺らし、香澄はいつものようにテテテ……と小さく回転した。
「ああ、可愛い。……つらい」
「もー」
護衛たちはバカップルを、生ぬるい目で見ている。
河野は我関せずで、度付き水中ゴーグルの見え具合を確認していた。
見られていると気づいていない香澄は、赤面してペチンと彼の腕を叩く。
そのあと全員で温泉プールに向かった。
「源泉は少し離れた場所にあって、露天風呂も別の所にあるな。こっちはプールで、源泉の注ぎ口に近いほうに人が集中している。離れた所は温度が低くなって、ちょっと深くなっているみたいだ」
「そうなんだ。……わあ! 広いね!」
目の前いっぱいに広がる温泉プールは、日本の市民プールとは比べものにならない。
「二千平米あるらしいよ」
二千平米といえば、坪換算すると約六百坪少しだ。
一般的な住宅なら、約十五棟は建てられる広さといっていい。
香澄はしばらく広々とした温泉プールを見て呆けたあと、佑に促されてシャワーを浴びにいく。
そのあと、温泉プールに入る事になった。
「あったかい!」
階段を下りていくと、まさに温泉、お風呂の温度に体が包まれる。
「匂いも少し慣れてきたな。臭いといえば臭いけど」
「確かに」
佑と一緒に奥へ進むが、どこまでいっても端につかない。
「泳いでる人がいるよ」
「そこまで真剣に泳ぐつもりはなかったから、ゴーグルは持って来なかったな」
「ふふ、河野さんは泳ぐ気満々だよね」
ざぶ、ざぶ、と手でお湯を掻いて進んだあと、香澄は肩まで浸かって少し泳いでみた。
「あったかぁい」
立ち上がって思わず笑い、後ろにいる佑を振り向く。
「この辺は少し熱めだから、奥に行こうか。あっちに源泉が出ている口があるだろう? あの辺りは四十二度くらいはあるみたいだ。奥だともう少し馴染みやすい温度になるから」
「うん。それにしても、みんな寛いでるねぇ」
浅い場所では脚を伸ばして座った男性が、持ち込んだ新聞を読んでいる。
深い場所では、棒状の浮き輪でぷかぷかと浮いている人もいる。
「香澄」
「ん? きゃっ」
呼ばれたかと思うと、佑が膝の裏と背中に手を回し、浮力を利用してグイッと抱き上げてきた。
「わぁ、なんか変な感じ」
一応佑の首に両腕を回すが、落ちても安全と分かっているので気持ちは楽だ。
浮力を使って香澄を抱き上げたまま、佑はスイスイと奥の方に進む。
一番人が集まっていた場所を抜けて、ぬるめのゾーンまで来ると、佑が何気なく周囲を見てからキスをしてきた。
「ん? む?」
外で、しかも公衆の面前でキスをされると思わず、香澄は目をぱちくりとさせて固まる。
「やっ、だっ、駄目だよっ? ここ、外だよ!?」
遅れてわたわたと慌てるが、佑はにんまりと笑うだけだ。
「街角で恋人たちがチュッチュしてるの見てただろ? こっちでは恋人同士がキスするの当たり前だぞ?」
「で、でも……」
チラッと周囲を見ると、声が聞こえる距離ではないが、目視できる場所に呉代と小山内がいる。
どうやら「温泉最高ッスねー」のようなノリで会話をしている雰囲気で、こちらに背を向けているので見られてはいない。
「ええ? 珍しいね?」
緊張しながら更衣室に入ると、頭の部分と足元が覗いているフィッティングルームのようなボックスが幾つも並んでいる。
「そこ空いてるから二人で入ろう」
「え? 二人で?」
「今さら着替えを見て恥ずかしがる仲じゃないだろう?」
ニヤッと笑われ、「それもそうだけど……」とゴニョゴニョと言葉を返す。
狭い更衣室の中で佑はサッと服を脱いでしまい、予め着てきた水着姿になる。
香澄も服の下にビキニを着てきたので、ワンピースを脱いでしまうだけで済んだ。
ストッキングは着脱のしやすさを見越して、膝下タイプにしてある。
そのあとは空いているロッカーに荷物を入れた。
「……佑さんの水着姿、地味に初めて見た」
「俺も。よく見せて」
佑はビーチサンダルを履いた足をで半歩下がり、ビキニ姿をよく見てくる。
「ふぅん……? いいじゃないか。ちょっと後ろも見せて」
「もー」
ポニーテールにした髪を揺らし、香澄はいつものようにテテテ……と小さく回転した。
「ああ、可愛い。……つらい」
「もー」
護衛たちはバカップルを、生ぬるい目で見ている。
河野は我関せずで、度付き水中ゴーグルの見え具合を確認していた。
見られていると気づいていない香澄は、赤面してペチンと彼の腕を叩く。
そのあと全員で温泉プールに向かった。
「源泉は少し離れた場所にあって、露天風呂も別の所にあるな。こっちはプールで、源泉の注ぎ口に近いほうに人が集中している。離れた所は温度が低くなって、ちょっと深くなっているみたいだ」
「そうなんだ。……わあ! 広いね!」
目の前いっぱいに広がる温泉プールは、日本の市民プールとは比べものにならない。
「二千平米あるらしいよ」
二千平米といえば、坪換算すると約六百坪少しだ。
一般的な住宅なら、約十五棟は建てられる広さといっていい。
香澄はしばらく広々とした温泉プールを見て呆けたあと、佑に促されてシャワーを浴びにいく。
そのあと、温泉プールに入る事になった。
「あったかい!」
階段を下りていくと、まさに温泉、お風呂の温度に体が包まれる。
「匂いも少し慣れてきたな。臭いといえば臭いけど」
「確かに」
佑と一緒に奥へ進むが、どこまでいっても端につかない。
「泳いでる人がいるよ」
「そこまで真剣に泳ぐつもりはなかったから、ゴーグルは持って来なかったな」
「ふふ、河野さんは泳ぐ気満々だよね」
ざぶ、ざぶ、と手でお湯を掻いて進んだあと、香澄は肩まで浸かって少し泳いでみた。
「あったかぁい」
立ち上がって思わず笑い、後ろにいる佑を振り向く。
「この辺は少し熱めだから、奥に行こうか。あっちに源泉が出ている口があるだろう? あの辺りは四十二度くらいはあるみたいだ。奥だともう少し馴染みやすい温度になるから」
「うん。それにしても、みんな寛いでるねぇ」
浅い場所では脚を伸ばして座った男性が、持ち込んだ新聞を読んでいる。
深い場所では、棒状の浮き輪でぷかぷかと浮いている人もいる。
「香澄」
「ん? きゃっ」
呼ばれたかと思うと、佑が膝の裏と背中に手を回し、浮力を利用してグイッと抱き上げてきた。
「わぁ、なんか変な感じ」
一応佑の首に両腕を回すが、落ちても安全と分かっているので気持ちは楽だ。
浮力を使って香澄を抱き上げたまま、佑はスイスイと奥の方に進む。
一番人が集まっていた場所を抜けて、ぬるめのゾーンまで来ると、佑が何気なく周囲を見てからキスをしてきた。
「ん? む?」
外で、しかも公衆の面前でキスをされると思わず、香澄は目をぱちくりとさせて固まる。
「やっ、だっ、駄目だよっ? ここ、外だよ!?」
遅れてわたわたと慌てるが、佑はにんまりと笑うだけだ。
「街角で恋人たちがチュッチュしてるの見てただろ? こっちでは恋人同士がキスするの当たり前だぞ?」
「で、でも……」
チラッと周囲を見ると、声が聞こえる距離ではないが、目視できる場所に呉代と小山内がいる。
どうやら「温泉最高ッスねー」のようなノリで会話をしている雰囲気で、こちらに背を向けているので見られてはいない。
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