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第十三部・イタリア 編
本当の初恋
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「出会った頃のままじゃなくてごめん。今になって『こんな変態だと思わなかった』って呆れてると思う。理想の〝御劔佑〟じゃなくてすまない。きっと知らない間に失望させた事もあったと思う。すぐ嫉妬するし、カッとなる事もある。香澄が絡むと子供っぽくなる。……俺も、自分がこんな感情的な男だったと知らなかった」
変な事で謝る彼が愛しくて、香澄は思わずにっこり微笑んだ。
「失望なんてしないよ。私だって出会った頃のままじゃないもの。もっと佑さんを好きになったし、もっとエッチになった。グズグズ悩むようになったし、ネガティブな面を見せてしまって心配になる」
自分の変化を口にして、香澄はそっと佑の頬を撫でた。
佑は彼女の手に頬ずりをし、指にキスをする。
「昨日の香澄より、今日の香澄が好きだ。明日はもっと好きになってる。その分、俺もきっと成長していく。いい成長かもしれないし、ネガティブなほうへ向かうかもしれない。でも俺は、香澄と過ごして心が豊かになっていく事を誇りに思っている」
自称〝淡泊〟だった彼が、自分を愛してそう思ってくれたなら何よりだ。
「私も!」
クシャッと笑った香澄は、もう一度佑に抱きついた。
スゥッと彼の匂いを吸い込み、両腕一杯に彼を感じる。
欠点などない完璧な〝世界の御劔〟を愛した訳ではない。
どこにでもいそうな自分を見つけてくれて、せっかくのイケメンが台無しになるぐらい愛してくれる。
そんな〝一人の男性〟だから、香澄だって深く愛している。
佑を愛して、健二の時には感じられなかった成長ができている。
香澄もそんな自分を誇らしく思っていた。
「私もね、恋愛に割とクール……っていうか、鈍感だった。健二くんと付き合っていた時、あれだけ必死になっていたのは『きちんと付き合って〝成功〟しないと』っていう気持ちからだった。本当は彼の事をそこまで好きじゃないし、あそこまで大変な思いをする価値はなかった」
「ん……」
以前はあれだけ健二に動揺した香澄が、今はこうして冷静なれている事に、佑は安心したようだった。
「当時はとても動揺して一大事に思ったけれど、今は冷静になれて、佑さんに愛されている安全な場所にいる。そしたら……言い方は悪いけど、『なんであんな人の言葉に一喜一憂してたんだろう』って思ってる。……私の世界は狭かった」
話しながら香澄は胸が出しっぱなしだったのに気付き、モソモソと下着をつける。
「学生時代にも、グループ交際ぐらいの付き合いはあった。でも皆がコイバナして盛り上がっていても、私は特に共感できなかった。そんなに他人に興味がなかったのかな。ずっと自分と恋愛は、遠いものだと思っていたの。彼氏がいなくても寂しいって思わなかったし、麻衣と一緒のほうが楽しかった。恋愛で感情を乱すより、将来のために勉強したほうがいいと思ってた」
香澄はキャミソールを下ろし、シャツワンピースのボタンを留めていく。
「でもね、そんな私が初めて『恋をしてる』って思えたの、佑さんが初めてだよ。ここまで心を通わせて、どんなにこじれても一生懸命話して歩み寄って、愛そうと思えたのは佑さんだけ。……だから私の本当の意味での初恋って、佑さんなのかもね」
そう言って微笑むと、佑が固まっているのに気づく。
「佑さん?」
彼の顔が――赤い。気がする。
顔を覗き込むと、珍しく彼が目を逸らした。
「どうしたの?」
「……いや、そういう発想でくると思わなくて。……俺の本当の初恋は香澄だ。そう思ったら、急に恥ずかしくなって」
横を向いた佑の耳が赤い。
「……んふふ」
嬉しくなった香澄は、彼に抱きついてチュッチュッと頬や首筋にキスをした。
「たーすくさん。照れてるの?」
香澄はツンツンと彼をつつき、赤くなった耳を引っ張る。
「……こら」
からかっていると、赤面した佑がジロリと睨んできた。
「最後までしないからって、調子に乗るなよ?」
佑がぎゅうっと抱き締めてきて、耳元で低く囁く。
先ほどまで喘がされた事を思いだした香澄は、慌ててもがいて佑の腕から脱出しようとする。
「ご、ごめんなさい。耳は、や……っ」
そんなふうにイチャイチャしていた時、テーブルの上に置いてあった佑のスマホがピコンと鳴った。
「…………はぁ……」
香澄を抱いたまま溜め息をつき、佑はスマホに手を伸ばす。
水を差されたからか、液晶に出ている名前を見てもう一度溜め息をつき、仕事モードの声で「Allo?」と電話に出た。
香澄は邪魔をしないように、佑の膝の上でじっとしている。
変な事で謝る彼が愛しくて、香澄は思わずにっこり微笑んだ。
「失望なんてしないよ。私だって出会った頃のままじゃないもの。もっと佑さんを好きになったし、もっとエッチになった。グズグズ悩むようになったし、ネガティブな面を見せてしまって心配になる」
自分の変化を口にして、香澄はそっと佑の頬を撫でた。
佑は彼女の手に頬ずりをし、指にキスをする。
「昨日の香澄より、今日の香澄が好きだ。明日はもっと好きになってる。その分、俺もきっと成長していく。いい成長かもしれないし、ネガティブなほうへ向かうかもしれない。でも俺は、香澄と過ごして心が豊かになっていく事を誇りに思っている」
自称〝淡泊〟だった彼が、自分を愛してそう思ってくれたなら何よりだ。
「私も!」
クシャッと笑った香澄は、もう一度佑に抱きついた。
スゥッと彼の匂いを吸い込み、両腕一杯に彼を感じる。
欠点などない完璧な〝世界の御劔〟を愛した訳ではない。
どこにでもいそうな自分を見つけてくれて、せっかくのイケメンが台無しになるぐらい愛してくれる。
そんな〝一人の男性〟だから、香澄だって深く愛している。
佑を愛して、健二の時には感じられなかった成長ができている。
香澄もそんな自分を誇らしく思っていた。
「私もね、恋愛に割とクール……っていうか、鈍感だった。健二くんと付き合っていた時、あれだけ必死になっていたのは『きちんと付き合って〝成功〟しないと』っていう気持ちからだった。本当は彼の事をそこまで好きじゃないし、あそこまで大変な思いをする価値はなかった」
「ん……」
以前はあれだけ健二に動揺した香澄が、今はこうして冷静なれている事に、佑は安心したようだった。
「当時はとても動揺して一大事に思ったけれど、今は冷静になれて、佑さんに愛されている安全な場所にいる。そしたら……言い方は悪いけど、『なんであんな人の言葉に一喜一憂してたんだろう』って思ってる。……私の世界は狭かった」
話しながら香澄は胸が出しっぱなしだったのに気付き、モソモソと下着をつける。
「学生時代にも、グループ交際ぐらいの付き合いはあった。でも皆がコイバナして盛り上がっていても、私は特に共感できなかった。そんなに他人に興味がなかったのかな。ずっと自分と恋愛は、遠いものだと思っていたの。彼氏がいなくても寂しいって思わなかったし、麻衣と一緒のほうが楽しかった。恋愛で感情を乱すより、将来のために勉強したほうがいいと思ってた」
香澄はキャミソールを下ろし、シャツワンピースのボタンを留めていく。
「でもね、そんな私が初めて『恋をしてる』って思えたの、佑さんが初めてだよ。ここまで心を通わせて、どんなにこじれても一生懸命話して歩み寄って、愛そうと思えたのは佑さんだけ。……だから私の本当の意味での初恋って、佑さんなのかもね」
そう言って微笑むと、佑が固まっているのに気づく。
「佑さん?」
彼の顔が――赤い。気がする。
顔を覗き込むと、珍しく彼が目を逸らした。
「どうしたの?」
「……いや、そういう発想でくると思わなくて。……俺の本当の初恋は香澄だ。そう思ったら、急に恥ずかしくなって」
横を向いた佑の耳が赤い。
「……んふふ」
嬉しくなった香澄は、彼に抱きついてチュッチュッと頬や首筋にキスをした。
「たーすくさん。照れてるの?」
香澄はツンツンと彼をつつき、赤くなった耳を引っ張る。
「……こら」
からかっていると、赤面した佑がジロリと睨んできた。
「最後までしないからって、調子に乗るなよ?」
佑がぎゅうっと抱き締めてきて、耳元で低く囁く。
先ほどまで喘がされた事を思いだした香澄は、慌ててもがいて佑の腕から脱出しようとする。
「ご、ごめんなさい。耳は、や……っ」
そんなふうにイチャイチャしていた時、テーブルの上に置いてあった佑のスマホがピコンと鳴った。
「…………はぁ……」
香澄を抱いたまま溜め息をつき、佑はスマホに手を伸ばす。
水を差されたからか、液晶に出ている名前を見てもう一度溜め息をつき、仕事モードの声で「Allo?」と電話に出た。
香澄は邪魔をしないように、佑の膝の上でじっとしている。
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