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第十一部・スペイン 編
けしからん婚約者
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「いや、香澄が何を読んでも自由だよ。……ただ、キャラクターであっても、俺以外の存在にときめいたのかな、って思ったら微妙な気持ちになっただけだ」
「ふぅん? まぁ……、佑さんが映画の女優さんを褒めるのと一緒かな?」
「多分一緒だな。ただ、俺の映画の評価ポイントはストーリーや演出、衣装がメインだから、演者の外見は重要視してないかな。演技としての表情は見るけど」
「ふぅん? ……じゃあ、ぶっちゃけ聞いちゃうけど、エッチな動画とかは?」
「…………」
その質問をした途端、あからさまに佑が目を逸らした。
「あーっ、見てるんだ。そしてお世話になってるんだ」
意地悪を言うと、佑が両手でぎゅう、と尻たぶを掴んでくる。
「今はこのけしからん婚約者がいるから、見てないよ」
「ふぅん? ふふ、まぁいいけど。男の人って普通に見るんでしょ? 私もネットで捜し物してると、画像検索とかにたまにエッチなの引っかかるなぁ」
「あれ? 香澄は嫉妬しないのか?」
「するよ? でも今は見てないんでしょ? 佑さんのスマホには、私のやましい動画や画像があるみたいだし」
「まぁね」
香澄は佑が彼女の同伴なしに出張した時、香澄の動画を見て抜いている事を知らない。
それは知らないが、寝顔や恐らく事後らしい写真、動画を撮られているらしい事は把握している。
「……私の事、好きで堪らないんでしょ」
指でクリクリと胸板を弄ると、とびっきり甘い微笑みが返ってきた。
「そうだよ。気がおかしくなりそうなぐらい、香澄が好きだ」
深い愛情を隠さない彼を見て、心底好きだと感じる。
優しく佑の髪を撫で、言う。
「佑さんはスパダリだけど、中身までは完璧じゃないと思う。時々荒れるのは人として当たり前。愛してくれるから心配するなら、なおさら」
サラリと撫でた髪は、以前より少し伸びている。
「でもね、私も一緒。佑さんがどれだけ可愛いって褒めて、世界で一番好きだって言ってくれても、まだまだ未熟な人間なの。気をつけているつもりでも、初歩的なミスをしてしまうと思う。お互い気をつけながら、注意して、許し合って進んでいきたいです。宜しくお願いします」
いつも失敗をするのは香澄だが、心配ゆえに暴走するのは佑だ。
自分から「許し合っていこう」と言うのはおこがましいが、精神的には平等でありたい。
佑は香澄を見て、「宜しくお願いします」と目を細め微笑む。
「……時々、香澄は俺には過ぎた女じゃないかって思うよ。……でも絶対に手放さない」
「頼まれても離れないよ」
沢山、迷惑をかけた。
きっと親にかけるより、ずっと迷惑をかけたかもしれない。
婚約者だから、女性としても気を揉ませただろう。
それでも佑は決して香澄の手を離そうとしなかった。
マティアスの事があって我を失いかけても、しっかりと抱き締め、「大丈夫」と言い続けてくれた。
一生、付き合ってくれる覚悟があるのだろう。
だから結婚しようと言ってくれている。
それに対して香澄は、まだ覚悟が足りないと感じる時があるけれど、日々アップデートして彼の想いに応えていきたい。
「私、佑さんのこと大好きだよ。だから、そのままの佑さんでいてほしい」
時々、非の打ち所のないこの人が、途方に暮れている少年のように思える事がある。
生まれた時から特別な一族の血筋で、外見は周囲と少し違う。
努力した結果、色んな国の言葉を操り、あらゆる面で才能を見せている。
高校生の時に起業して、一気にすべてが広がっていった。
世界中の人が名を知る会社の社長となり、誰もが名前を知る人となった。
これが五十代、六十代なら、誰もが納得するだろう。
だが彼はまだ三十二歳だ。彼は香澄との年齢差を気にするけれど、経営者としては若造だ。
彼は短期間に多くのものを得て、同時に沢山のものを失ったと思う。
一般人の香澄には、想像してもその喪失感が分からない。
だからこそ、たまに蚊帳の外である自分が発破を掛ける事も必要なのだと思う。
佑が世界を相手に堂々と戦っていけるように、香澄は一歩後ろで伴侶として、秘書として支える必要がある。
それが、光栄にも御劔佑という人に選ばれた自分にできる事だ。
「……やっぱり香澄といると安心するし、側にいてほしい。離れた所で心配するより、側で言葉を交わして気持ちを伝え合いたい」
目を細めた佑が、触れるだけのキスをした。
「……側にいるよ」
すぅっと息を吸って佑の匂いを嗅ぎ、香澄からもキスをする。
二人は愛しさを隠さない目で見つめ合い、何度もキスを繰り返した。
「ふぅん? まぁ……、佑さんが映画の女優さんを褒めるのと一緒かな?」
「多分一緒だな。ただ、俺の映画の評価ポイントはストーリーや演出、衣装がメインだから、演者の外見は重要視してないかな。演技としての表情は見るけど」
「ふぅん? ……じゃあ、ぶっちゃけ聞いちゃうけど、エッチな動画とかは?」
「…………」
その質問をした途端、あからさまに佑が目を逸らした。
「あーっ、見てるんだ。そしてお世話になってるんだ」
意地悪を言うと、佑が両手でぎゅう、と尻たぶを掴んでくる。
「今はこのけしからん婚約者がいるから、見てないよ」
「ふぅん? ふふ、まぁいいけど。男の人って普通に見るんでしょ? 私もネットで捜し物してると、画像検索とかにたまにエッチなの引っかかるなぁ」
「あれ? 香澄は嫉妬しないのか?」
「するよ? でも今は見てないんでしょ? 佑さんのスマホには、私のやましい動画や画像があるみたいだし」
「まぁね」
香澄は佑が彼女の同伴なしに出張した時、香澄の動画を見て抜いている事を知らない。
それは知らないが、寝顔や恐らく事後らしい写真、動画を撮られているらしい事は把握している。
「……私の事、好きで堪らないんでしょ」
指でクリクリと胸板を弄ると、とびっきり甘い微笑みが返ってきた。
「そうだよ。気がおかしくなりそうなぐらい、香澄が好きだ」
深い愛情を隠さない彼を見て、心底好きだと感じる。
優しく佑の髪を撫で、言う。
「佑さんはスパダリだけど、中身までは完璧じゃないと思う。時々荒れるのは人として当たり前。愛してくれるから心配するなら、なおさら」
サラリと撫でた髪は、以前より少し伸びている。
「でもね、私も一緒。佑さんがどれだけ可愛いって褒めて、世界で一番好きだって言ってくれても、まだまだ未熟な人間なの。気をつけているつもりでも、初歩的なミスをしてしまうと思う。お互い気をつけながら、注意して、許し合って進んでいきたいです。宜しくお願いします」
いつも失敗をするのは香澄だが、心配ゆえに暴走するのは佑だ。
自分から「許し合っていこう」と言うのはおこがましいが、精神的には平等でありたい。
佑は香澄を見て、「宜しくお願いします」と目を細め微笑む。
「……時々、香澄は俺には過ぎた女じゃないかって思うよ。……でも絶対に手放さない」
「頼まれても離れないよ」
沢山、迷惑をかけた。
きっと親にかけるより、ずっと迷惑をかけたかもしれない。
婚約者だから、女性としても気を揉ませただろう。
それでも佑は決して香澄の手を離そうとしなかった。
マティアスの事があって我を失いかけても、しっかりと抱き締め、「大丈夫」と言い続けてくれた。
一生、付き合ってくれる覚悟があるのだろう。
だから結婚しようと言ってくれている。
それに対して香澄は、まだ覚悟が足りないと感じる時があるけれど、日々アップデートして彼の想いに応えていきたい。
「私、佑さんのこと大好きだよ。だから、そのままの佑さんでいてほしい」
時々、非の打ち所のないこの人が、途方に暮れている少年のように思える事がある。
生まれた時から特別な一族の血筋で、外見は周囲と少し違う。
努力した結果、色んな国の言葉を操り、あらゆる面で才能を見せている。
高校生の時に起業して、一気にすべてが広がっていった。
世界中の人が名を知る会社の社長となり、誰もが名前を知る人となった。
これが五十代、六十代なら、誰もが納得するだろう。
だが彼はまだ三十二歳だ。彼は香澄との年齢差を気にするけれど、経営者としては若造だ。
彼は短期間に多くのものを得て、同時に沢山のものを失ったと思う。
一般人の香澄には、想像してもその喪失感が分からない。
だからこそ、たまに蚊帳の外である自分が発破を掛ける事も必要なのだと思う。
佑が世界を相手に堂々と戦っていけるように、香澄は一歩後ろで伴侶として、秘書として支える必要がある。
それが、光栄にも御劔佑という人に選ばれた自分にできる事だ。
「……やっぱり香澄といると安心するし、側にいてほしい。離れた所で心配するより、側で言葉を交わして気持ちを伝え合いたい」
目を細めた佑が、触れるだけのキスをした。
「……側にいるよ」
すぅっと息を吸って佑の匂いを嗅ぎ、香澄からもキスをする。
二人は愛しさを隠さない目で見つめ合い、何度もキスを繰り返した。
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