【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

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第十一部・スペイン 編

朝食での出会い

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 佑はスーツ姿でベッドに四つ這いになり、こちらを見下ろしている。

 自分はベッドで裸なのに、彼はスーツ姿という差に背徳的な気持ちになった。

「香澄」

 唇は隠しているので、前髪を上げられ額にちゅ、とキスをされた。

「ごめん。俺はもうそろそろ出るけど、朝食は十時頃まで大丈夫なはずだ。何ならルームサービスを頼んでもいいし」

「……分かったから。ちゃんと働いてきて」

 まだ少し怒っているが、顔を布団から出して返事をする。
 譲歩したのが伝わったのか、佑はホッとしたように微笑んで頭を撫でてきた。

 それから、言い含めてくる。

「五つ星ホテルだけど、ホテルの内部にどんな人がいるか分からない。移動する時は護衛に伝えて。べったりついて歩かれるのが嫌なら、目立たない所を歩くぐらいの配慮はしてくれる」

「うん」

「ホテルの外に出てもいいけど、タクシーは使わず護衛に運転させて。買い物は護衛にカードを持たせてあるから、それを使ってくれ」

「……そ、そんなのいい。自分の買い物ぐらい自分でするよ」

 いつも通り反抗したが、また頭を撫でられる。

「いいか、香澄。ここはスペインだ。俺の言う事を聞いて。俺は仕事があるから側にいてやれない。警戒はしすぎなぐらいで丁度いい。何かあったら一人で対応しようとしないで、必ず護衛に言う。いいね?」

「はい」

「腰は立つ?」

 言われてモゾモゾと身じろぎし、少し力が入るようになったのを確認する。

「そろそろ」

「ん、良かった。俺に連絡がある時はなるべく河野に。緊急の時は直接かけてくれ」

「うん、分かった」

 香澄はゆっくり起き上がり、背中をヘッドボードに預ける。
 そんな彼女を、佑が抱き寄せた。

「……あったかい。布団の中でぬくぬくしてたから、体がホカホカしてる」

「レンチンしたてです」

 冗談を言うと、佑は笑う。

「行ってきます」

 佑は唇にチュッとキスをして、ベッドルームを出ていく。
 姿が見えなくなる前にこちらを振り返り、投げキスをした。

 足音が遠くなり、ドアが開閉する音が聞こえる。

「……いつも『俺は日本人の感覚だ』って言ってるけど、やってる事はかなり駄々甘で、海外っぽいなぁ」

 呟いて笑ってから、香澄はゆっくりベッドをおりる。

 まずシャワーを浴びて、朝の活動をする事にした。



**



 香澄はブラウンのニットと揃いのニットスカートを身に纏い、朝食レストランへ行く。

 そしてビュッフェで黙々と皿に食べ物を盛っていた。

 佑に言われた通り、部屋を出る時は久住と佐野に連絡をした。
 彼らはもう朝食を終えたそうなので、香澄の席から少し離れた場所で待機してもらっている。

 遅い時間になるとあまり人気ひとけがない。

 のんびりとスパニッシュオムレツの焼き上がりを待っていると、「Hi.」と声を掛けられた。

「え?」

 顔を上げると、見覚えのある男性が立っている。
 昨日の朝に、ジュースサーバー前で声を掛けてきたラテン系のイケメンだ。

『今日は一人なの?』

 英語で話しかけられ、香澄はきょと、と目を瞬かせる。

『昨日はご親切にありがとうございました。連れは仕事です』

『なら、ブランチを一緒にとってもいい?』

『ご遠慮します』

 同席してもいいかと尋ねられ、香澄は首を横に振る。

 ここで頷けば佑が嫉妬し、怒る。

『いいじゃないか! 減るもんじゃないし』

 だが男性は気さくに話し、香澄の後ろで食べ物を皿にとっている。

『じゃあ、こうしよう。君は自分の席で座って食べる。僕は〝自由席〟に座る』

 そう言われ、頑なに拒絶してもこの手合いは諦めないと理解した。
 双子がいい例だ。

『朝食の間だけですよ』

 香澄は溜め息をつき、譲歩する。

『俺はフェルナンド。フェルって呼んで。君は?』

『……カスミ・アカマツです』

 溜め息をついた香澄は、焼きたてのスパニッシュオムレツをトレーに置いて席に向かった。

 ほどなくしてフェルナンドはトレーを手に、香澄の向かいに座る。

 久住たちは異変を覚えて立ちあがったが、香澄は「その場で待機してくださって大丈夫です」と手でサインを送った。
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