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第十一部・スペイン 編

受難の門~朝から…… ☆

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「誕生の門は見上げた時の視点誘導を計算して、上の彫刻を大きくしたそうだ」

「あ、なるほど……。そうだね。遠近があるから、上にある彫刻を普通に作ったらとっても小さくなっちゃう」

「こちらの受難の門は下の彫刻は大きく、上の彫刻は小さく作られている。だから間延びした印象を持ってしまう。中には『昇天している姿を表しているのだから、〝上〟が遠く見えるこの作り方が正しい』という人もいる」

「そっかぁ……」

 受難の門のかなり上に、昇天するキリストの彫刻がある。
 しかしかなり小さく、目を眇めてやっと見えるぐらいだ。

「装飾過多と言っていい誕生の門に比べて、受難の門は正反対デザインにしたのは、ガウディの意思だ。できた当時は勿論批判があったが、スビラックス氏は『批判は過ぎ、作品は残る』という言葉を残した」

 佑の言葉を聞き、香澄はもう一度受難の門を見る。

 確かに生誕の門に比べ、装飾がなくシンプルすぎて寂しい。
 のっぺりとしていて無機質な感じがする。

 だがその奥に秘められたものがあるような気がする。

 シンプルなだけ、考える余白があるのかもしれない。

 受難の門はすべてが死に包まれ、悲しみと静謐、静かな昇天を表したのなら、これもまたガウディの意図そのものではないだろうかう。

「佑さんがいてくれて良かった。私、何も知らなかったら、受難の門の評価が低いままだったかもしれない。きっと彫刻家の人もガウディの作品に携わるっていう事で、プレッシャーがあったかもしれないね。その上で批判を浴びてなお完成に向けて尽力して……。なんだか強い意志を感じる」

 感想を口にすると、佑がそっと抱き寄せてポンポンと肩を撫でてきた。

 しばらく受難の門を見ていると、車が来たと河野から連絡を受けた。
 瀬尾が運転する車に乗り、一度ホテルに戻る事にした。



 ホテルで少し休憩したあとに、香澄は動きやすい格好からワンピースに着替え、レストランでランチを取る。

 昼食のあとは、部屋でゆっくり過ごす事にした。



**



「ん……。…………んン?」

 朝目覚めた香澄は、妙な感覚に内心首を傾げる。

 ――気持ちいい。

 お腹の中に熱くて大きくて、硬いモノが出たり入ったりして……。

「ん! ちょ……っ」

 それが何であるか悟った瞬間、一気に香澄は覚醒した。
 横向きになって寝ている体は、後ろから佑に抱き締められている。そして後ろから彼の熱杭が香澄の蜜壷に入り込んでいるのだ。

「起きたか? おはよう。お邪魔してます」

「ちょ……っ、も、もぉぉ……っ」

 昨晩も散々したのに、朝っぱらから! と慌てて離れようとするが、次の瞬間佑がバッと羽毛布団をはね除け、香澄の太腿を抱え上げた。

「あんっ!」

 一際強く最奥まで突き込まれ、思わず甘い声が漏れる。
 知らないうちによく解された場所は、もうすでに潤沢な蜜を讃えて佑を頬張り、グチュグチュと咀嚼していた。

「一回スッキリさせて」

「もぉっ、も、――や、やぁもぉっ! ぁ、あぁあんっ」

 文句を言いたいのにズンズンと突き上げられ、口からは甘ったるい声しか出てこない。

 散々喘がされたあとに最奥で吐精され、香澄は朝から疲れ果てて何も言えなくなってしまった。





「……香澄。ごめんって」

「――知らない」

 香澄はまだ腰が立たず、裸のままベッドで寝ている。

 一方佑は先にレストランで朝食を終え、スーツを着てネクタイを締めていた。

「愛してるから。ごめん」

 そういう言い方はずるいと思う。

 クシャクシャになった羽根布団にくるまった香澄は、顔の下半分を隠し目だけでジロッと佑を睨む。

 戦闘着であるスーツに身を包んだ佑は、怒っているのに表情が緩んでしまいそうになるほど格好いい。
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