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第十一部・スペイン 編
メインディッシュ
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「……参りました。降参です」
「それなら採用で宜しいですね? 触れますよ?」
佑が社長モードで言い、両手でゆっくり香澄のウエストを押さえてきた。
「……んふっ」
くすぐったくて、香澄は身をよじらせる。
「……くそ、可愛すぎて心臓がもたない。香澄は俺を殺すのがうまいな」
「やだ、死なないで」
香澄はクスクス笑い、「人工呼吸」と言って佑にキスをした。
「――ん」
両手で彼の頬を包み、優しくキスをし、顔を離してから目を覗き込む。
体にまわった佑の手には、すっかり熱がこもっていた。
彼はねっとりとした手つきで香澄の尻たぶを揉み、時に秘部に近い肉を左右に拡げる。
「ん……」
そうされるだけで香澄の深部に火が灯り、お腹の奥が疼く。
「前菜はもう終わりでいい? 俺はもうお腹ペコペコで、早くメインを食べたい」
佑は香澄のお尻から腰をなぞり上げ、胸まで至ると乳房を揉み上げる。
香澄の喉がコクンと上下した音が、やけに響いた。
「全部、食べて」
ヒラリ、と赤いベビードールが空気を孕んでそよぐ。
ベッドの上に押し倒された香澄は、濡れた目で佑を見上げた。
白いシーツの上に香澄の黒髪とベビードールの布地が広がり、メイン料理として佑の目を楽しませる。
赤い蝶は獣に押さえつけられ、はたはたと薄い羽を頼りなく動かしたまま、その身につけた甘い蜜を獣に舐められた。
ゆっくりと暮れゆこうとするバルセロナの空を窓の外に、二人は長い夜を始めようとしていた――。
**
翌日は日曜日だったが、香澄は観光のために早起きをした。
この日はグエル公園、サグラダファミリアを回る予定だ。
少し腰がだるいが、昨晩夕方から始まったイチャイチャの二回目が終わった時に、「明日観光したいから、今日はこれで許して」と一生懸命お願いした。
佑は「せっかく海外で羽目を外せると思ったのにな」とブツブツ言いながらも、承諾してくれた。
そのあとディナーを軽くとり、ゆっくり眠りに就いた。
今朝は早めに支度をして、まずグエル公園に向かった。
どうやら八時前に入園してしまえば、何時間滞在しても入園料が無料だそうだ。
佑は気にしないだろうが、香澄はお得なほうがいい。
早朝だと人がいないという情報もありがたかった。
有名な観光地だと写真を撮りたくても人が入ってしまうので、早くに行けばシャッターチャンスが多くあるのではと思った。
グエル公園の正面から入場すると、神殿のような建物がそびえ、その前に白い階段が続いている。ここが有名なモニュメント階段らしい。
階段の真ん中には植え込みがあり、左右は白地に正方形の色とりどりなタイルがはめ込まれた、印象的な壁があった。
壁の上部には中世の城の屋根にあるような凸凹があり、どことなくチェスを連想した。
「ここは東京にもあるあの夢の国が、お手本にした場所らしいよ」
「本当? どことなく……」
言われてみればそう思えるが、言われなければ分からなかった。
「本当に人がいないね。ラッキー」
佑と手を繋いで階段を上がると、階段の中央にモザイクタイルでできた大きなトカゲの彫刻を見つける。
「このトカゲは有名な写真スポットだから、撮っておくといいよ」
「うん」
「このトカゲはバルセロナのシンボル的存在で、グエル公園の泉の守り主なんだ」
「ふぅん」
言われるがままに写真を撮ったあと、佑との思い出が欲しくなった。
「あの……、河野さん、すみませんが佑さんと一緒に写してもらっていいですか?」
本当は出張なのに、こんな事を河野に頼んで申し訳ない。
だが護衛は仕事があるし、瀬尾は車で待機している。
ペコペコと頭を下げる香澄に、河野はいつも通りの調子で「別に構いません」と言った。
「はい、写しますよ。……社長、顔がいやらしいです。ええ、その程度に引き締めてくだされば」
河野の注意に、香澄はぶふっと噴く。
それを佑が「こら」と窘めた時、カシャッとシャッター音がした。
「それなら採用で宜しいですね? 触れますよ?」
佑が社長モードで言い、両手でゆっくり香澄のウエストを押さえてきた。
「……んふっ」
くすぐったくて、香澄は身をよじらせる。
「……くそ、可愛すぎて心臓がもたない。香澄は俺を殺すのがうまいな」
「やだ、死なないで」
香澄はクスクス笑い、「人工呼吸」と言って佑にキスをした。
「――ん」
両手で彼の頬を包み、優しくキスをし、顔を離してから目を覗き込む。
体にまわった佑の手には、すっかり熱がこもっていた。
彼はねっとりとした手つきで香澄の尻たぶを揉み、時に秘部に近い肉を左右に拡げる。
「ん……」
そうされるだけで香澄の深部に火が灯り、お腹の奥が疼く。
「前菜はもう終わりでいい? 俺はもうお腹ペコペコで、早くメインを食べたい」
佑は香澄のお尻から腰をなぞり上げ、胸まで至ると乳房を揉み上げる。
香澄の喉がコクンと上下した音が、やけに響いた。
「全部、食べて」
ヒラリ、と赤いベビードールが空気を孕んでそよぐ。
ベッドの上に押し倒された香澄は、濡れた目で佑を見上げた。
白いシーツの上に香澄の黒髪とベビードールの布地が広がり、メイン料理として佑の目を楽しませる。
赤い蝶は獣に押さえつけられ、はたはたと薄い羽を頼りなく動かしたまま、その身につけた甘い蜜を獣に舐められた。
ゆっくりと暮れゆこうとするバルセロナの空を窓の外に、二人は長い夜を始めようとしていた――。
**
翌日は日曜日だったが、香澄は観光のために早起きをした。
この日はグエル公園、サグラダファミリアを回る予定だ。
少し腰がだるいが、昨晩夕方から始まったイチャイチャの二回目が終わった時に、「明日観光したいから、今日はこれで許して」と一生懸命お願いした。
佑は「せっかく海外で羽目を外せると思ったのにな」とブツブツ言いながらも、承諾してくれた。
そのあとディナーを軽くとり、ゆっくり眠りに就いた。
今朝は早めに支度をして、まずグエル公園に向かった。
どうやら八時前に入園してしまえば、何時間滞在しても入園料が無料だそうだ。
佑は気にしないだろうが、香澄はお得なほうがいい。
早朝だと人がいないという情報もありがたかった。
有名な観光地だと写真を撮りたくても人が入ってしまうので、早くに行けばシャッターチャンスが多くあるのではと思った。
グエル公園の正面から入場すると、神殿のような建物がそびえ、その前に白い階段が続いている。ここが有名なモニュメント階段らしい。
階段の真ん中には植え込みがあり、左右は白地に正方形の色とりどりなタイルがはめ込まれた、印象的な壁があった。
壁の上部には中世の城の屋根にあるような凸凹があり、どことなくチェスを連想した。
「ここは東京にもあるあの夢の国が、お手本にした場所らしいよ」
「本当? どことなく……」
言われてみればそう思えるが、言われなければ分からなかった。
「本当に人がいないね。ラッキー」
佑と手を繋いで階段を上がると、階段の中央にモザイクタイルでできた大きなトカゲの彫刻を見つける。
「このトカゲは有名な写真スポットだから、撮っておくといいよ」
「うん」
「このトカゲはバルセロナのシンボル的存在で、グエル公園の泉の守り主なんだ」
「ふぅん」
言われるがままに写真を撮ったあと、佑との思い出が欲しくなった。
「あの……、河野さん、すみませんが佑さんと一緒に写してもらっていいですか?」
本当は出張なのに、こんな事を河野に頼んで申し訳ない。
だが護衛は仕事があるし、瀬尾は車で待機している。
ペコペコと頭を下げる香澄に、河野はいつも通りの調子で「別に構いません」と言った。
「はい、写しますよ。……社長、顔がいやらしいです。ええ、その程度に引き締めてくだされば」
河野の注意に、香澄はぶふっと噴く。
それを佑が「こら」と窘めた時、カシャッとシャッター音がした。
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