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第十一部・スペイン 編

朝食ビュッフェに行く準備

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(乳首……感じるのかな)

 佑は香澄に腕枕をし、もう片方の腕で香澄を抱いて眠っている。
 くり……と佑の乳首を押してみるが、彼は何も反応しない。

(私のと違って乳頭? が小さいな。全体的に平らで……これ、刺激与えても大きくならないんだろうか)

 そう思うと気になって仕方なくなり、香澄はクリクリと佑の乳首を弄り回す。

「んー……」

 夢中になって攻め出すと、なかなか大きくならない佑の乳首に思わずうなり声を漏らす。

(舐めたら感じるかな?)

 佑の胸元に顔を埋めて乳首にチロチロと舌を這わせた時、「こら!」と佑の声がして後頭部を押さえられた。

「んぶっ」
「くすぐったい!」

 笑った佑はそのまま香澄を抱いて、仰向けになる。

「悪いのはこの手か? それともこの唇か?」

 笑った佑は香澄の両手にチュッチュッとキスをし、そのあとにぶちゅーっと唇にキスをする。

「んふふふふ……」

 キスをされたまま香澄は笑い、顔を離した佑も笑顔だ。

「おはよ」

「うん、おはよう」

 覆い被さったままの佑は、寝癖がついていないか確かめるように自分の髪を掻き上げた。
 それから香澄の直毛を撫でる。

「香澄は寝癖知らずだな」

「そうでもないよ? たまに根元からミヨーンって浮き上がってる時もあるし」

「寝癖のついた香澄、確実に可愛いじゃないか。どうして見せてくれない?」

「もー。寝癖姿を見せられる訳ないじゃない」

 香澄は怒ったふりをして佑の胸板を押し、起き上がるとベッドの下に落ちていたガウンを羽織る。

 何とか立ちあがると洗面所に向かい、うがいをしてから手洗いも済ませた。

 佑も所用を済ませているあいだ、香澄はカーテンを開けて朝のバルセロナを窓から見下ろす。

「んー……。異国」

「朝食、入る?」

「うん、どれぐらいで食べられる?」

「ルームサービスのつもりだったけど、ビュッフェに行きたいか?」

「あー……。じゃあ、ホテルの中をちょっと見てみたいから、今日は食べに行きたい」

「分かった。じゃあ服を着ようか」

 そのあと洗面所で顔を洗い、念入りにスキンケアをする。

 化粧水は肌に吸わせるだけ吸わせるのが香澄の流儀だ。
 美容液をリフトアップマッサージしながら塗り、保湿クリームもしっかり塗ってアイクリームでアイケアをする。

 ビュッフェに向かうのにフルメイクはしないが、ベースメイクはしておく事にした。

 日焼け止めを塗って下地を塗り、コンシーラー。
 リキッドファンデーションには、リキッドハイライターを少し混ぜて薄くつける。
 軽くティッシュで押さえ、フェイスパウダーをパフではたく。

 ササッとパウダーのハイライトとチークを入れ、眉はスクリューブラシで梳かしたあと、ペンシルとパウダー、眉マスカラでナチュラルに描く。

 目元はとりあえず、ビューラーで上げた睫毛にマスカラ下地を塗っておいた。

「よし!」

 そのあとスーツケースを開いて、洋服を吟味する。

 さすが佑らしく、秋を意識したアイテムが詰められていた。

 とりあえず、黒いドルマンニットとテラコッタカラーのワイドパンツを選んで着る。
 シューズケースにどんな服にも合わせやすい物が何足か入っていたので、焦げ茶色のブーティーを履いた。

 髪は食事をするのに邪魔になってはいけないので、千鳥柄のワンポイントがついたヘアゴムで緩いポニーテールにした。

「おまたせ!」

 お洒落に気を遣うと、ついつい時間が掛かってしまう。

「待ってないよ。ん、可愛い」

 佑は黒いテーパードパンツにストライプのシャツ姿で、テレビでスペイン語のニュースを見ていた。

「よし、行こうか」

 部屋を出ると、フロアコンシェルジュが挨拶してきた。

『おはようございます。御劔様、赤松様』

 佑は彼に朝食について伝える。

『今日はレストランに行って朝食をとります』

『どうぞ行ってらっしゃいませ』

 笑顔で送り出され、二人はエレベーターにのった。
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