577 / 1,549
第十部・ニセコ 編
ルカが所持する豪邸別荘
しおりを挟む
(……あーあ……)
どうしてこう、自分はどこへ行ってもうまくできないのだろうか。
香澄が異性として求めるのは佑しかいない。
彼のもとに戻るために己を見つめようとしているのに、他の男性など目に入らない。
それを真奈美に伝えたくても、上手に伝えられる気がしなかった。
和也と同じように、「好きなら側にいればいいじゃないですか」と言われそうな気がする。
けれど事情はそう簡単ではない。
その背景にマティアスやエミリア、双子やアドラーたちが関わった一連の出来事がある。
それを出会ったばかりの彼女たちに、教える義理もなかった。
(平穏な生活を乱してしまったのは申し訳ない。でも私だって望んであんな怖い思いをした訳じゃないのにな……。真奈美ちゃんは和也くんを好きだから、〝あれ〟をされても嬉しいんだろうな)
望んでいない好意、接近はこうも苦痛だ。
それなのに理解を示さず敵視されるのはつらい。
「若いから仕方がない」と自分に言い聞かせようとしても、トラウマを思い起こされるあの行動を許せないと思ったし、見当違いな嫉妬をする真奈美にも苛立ちを抱いてしまう。
(うまくいかないなぁ……)
もう一度心の中で呟き、香澄は溜め息をついた。
その後、香澄は秋成と聡子から快く送り出された。
ルカも若者たちとの不穏な空気を察し、『夕食までカスミを預かる』と言ってくれる。
そして現在、香澄は例の四億するらしいルカの別荘に来ていた。
「ふわぁ……凄い……」
別荘の外観は周囲の自然に馴染むようなナチュラルな色合いで、ダークカラーやレンガ調を用いられている。
窓が広いと中は寒くなりそうなイメージだが、御劔邸のように日差しをたっぷり取り入れるために、別荘全体に大きな窓が取り付けられていた。
中に入ると玄関脇にはスキーやスノボを収納できる場所があり、勿論シューズクローゼットもある。
頭上は吹き抜けになっていてシャンデリアが下がっていた。
『カスミはさ、僕のアシスタントっていう名目だけど、あっちでの人間関係が気まずいなら、こっちでのんびり過ごしなよ。僕も話し相手ができて嬉しいし、二人でゆったり読書したりして凄そう』
『ありがとうございます』
ありがたい申し出に香澄はお礼を言うが、そんなに甘えてしまっていいのかな? と不安になる。
『一階は温泉と客室がメインなんだ。露天風呂もあるよ。客室は三つ。身の回りの世話をする人がいる層向けだから、そのためのメイドルームもある』
『メイドルーム!』
聞き慣れない単語を聞いて、香澄は目をまん丸にした。
階段を上がった二階にリビングダイニングがあり、ガラスの仕切りになっているので二階のフロア全体が見えてとても広く思える。
『すごぉ……』
リビングには当たり前に暖炉があり、フロアはパーティーができそうな広さがある。
十五人ほどは座れそうなソファに、大きな液晶テレビにスピーカー、天井からは勿論シャンデリアが下がっていた。
内装は基本的にすべて温かみを感じさせる木目調で、素晴らしいキッチンでは見栄えを重視して、冷蔵庫などもすべて木のドアの奥に隠されていた。
勿論ワインセラー完備のうえ、美しい木製の壁と思える裏には大容量の収納がある。
それに対応して長いダイニングテーブルがあり、こちらも十五人前後は座れるようになっていた。
『本来ならシェフを呼んであれこれやってもらう用みたいだね。そっちはストックルームになってて、裏手でシェフに下ごしらえ等の仕事をしてもらい、表では見栄え用の調理をしてもらうとか、使い分けるみたいだ。勿論、食材を保存する場所もあるよ』
バーカウンターがある場所には、重厚感のある革張りのソファセットがあり、暖炉に当たり景色を眺めながらの贅沢なシガールームとなっていた。
『二階にはマスタールームが二部屋あるけど、僕はその一つしか使ってないんだ。勿体ないでしょ』
『確かに』
こんなに広すぎる豪邸に一人でポツンと住んでいるのを思うと、誰かさんを思い出す。
ルカに『エスプレッソの準備をするから、自由に見てていいよ』と言われ、香澄は別荘内を探検させてもらった。
一階の温泉はとても立派で、客室の手洗いとバスルームも、ホテルの高級な部屋のようだ。
満足して二階に戻るといい匂いがする。
ルカはキッチンでマキネッタを用いて、エスプレッソを淹れていた。
マキネッタは、独得な形をしたポットのような物で、底部分に水を入れ、エスプレッソの粉をセットして火に掛けると、エスプレッソが抽出される仕組みになっている。
どうしてこう、自分はどこへ行ってもうまくできないのだろうか。
香澄が異性として求めるのは佑しかいない。
彼のもとに戻るために己を見つめようとしているのに、他の男性など目に入らない。
それを真奈美に伝えたくても、上手に伝えられる気がしなかった。
和也と同じように、「好きなら側にいればいいじゃないですか」と言われそうな気がする。
けれど事情はそう簡単ではない。
その背景にマティアスやエミリア、双子やアドラーたちが関わった一連の出来事がある。
それを出会ったばかりの彼女たちに、教える義理もなかった。
(平穏な生活を乱してしまったのは申し訳ない。でも私だって望んであんな怖い思いをした訳じゃないのにな……。真奈美ちゃんは和也くんを好きだから、〝あれ〟をされても嬉しいんだろうな)
望んでいない好意、接近はこうも苦痛だ。
それなのに理解を示さず敵視されるのはつらい。
「若いから仕方がない」と自分に言い聞かせようとしても、トラウマを思い起こされるあの行動を許せないと思ったし、見当違いな嫉妬をする真奈美にも苛立ちを抱いてしまう。
(うまくいかないなぁ……)
もう一度心の中で呟き、香澄は溜め息をついた。
その後、香澄は秋成と聡子から快く送り出された。
ルカも若者たちとの不穏な空気を察し、『夕食までカスミを預かる』と言ってくれる。
そして現在、香澄は例の四億するらしいルカの別荘に来ていた。
「ふわぁ……凄い……」
別荘の外観は周囲の自然に馴染むようなナチュラルな色合いで、ダークカラーやレンガ調を用いられている。
窓が広いと中は寒くなりそうなイメージだが、御劔邸のように日差しをたっぷり取り入れるために、別荘全体に大きな窓が取り付けられていた。
中に入ると玄関脇にはスキーやスノボを収納できる場所があり、勿論シューズクローゼットもある。
頭上は吹き抜けになっていてシャンデリアが下がっていた。
『カスミはさ、僕のアシスタントっていう名目だけど、あっちでの人間関係が気まずいなら、こっちでのんびり過ごしなよ。僕も話し相手ができて嬉しいし、二人でゆったり読書したりして凄そう』
『ありがとうございます』
ありがたい申し出に香澄はお礼を言うが、そんなに甘えてしまっていいのかな? と不安になる。
『一階は温泉と客室がメインなんだ。露天風呂もあるよ。客室は三つ。身の回りの世話をする人がいる層向けだから、そのためのメイドルームもある』
『メイドルーム!』
聞き慣れない単語を聞いて、香澄は目をまん丸にした。
階段を上がった二階にリビングダイニングがあり、ガラスの仕切りになっているので二階のフロア全体が見えてとても広く思える。
『すごぉ……』
リビングには当たり前に暖炉があり、フロアはパーティーができそうな広さがある。
十五人ほどは座れそうなソファに、大きな液晶テレビにスピーカー、天井からは勿論シャンデリアが下がっていた。
内装は基本的にすべて温かみを感じさせる木目調で、素晴らしいキッチンでは見栄えを重視して、冷蔵庫などもすべて木のドアの奥に隠されていた。
勿論ワインセラー完備のうえ、美しい木製の壁と思える裏には大容量の収納がある。
それに対応して長いダイニングテーブルがあり、こちらも十五人前後は座れるようになっていた。
『本来ならシェフを呼んであれこれやってもらう用みたいだね。そっちはストックルームになってて、裏手でシェフに下ごしらえ等の仕事をしてもらい、表では見栄え用の調理をしてもらうとか、使い分けるみたいだ。勿論、食材を保存する場所もあるよ』
バーカウンターがある場所には、重厚感のある革張りのソファセットがあり、暖炉に当たり景色を眺めながらの贅沢なシガールームとなっていた。
『二階にはマスタールームが二部屋あるけど、僕はその一つしか使ってないんだ。勿体ないでしょ』
『確かに』
こんなに広すぎる豪邸に一人でポツンと住んでいるのを思うと、誰かさんを思い出す。
ルカに『エスプレッソの準備をするから、自由に見てていいよ』と言われ、香澄は別荘内を探検させてもらった。
一階の温泉はとても立派で、客室の手洗いとバスルームも、ホテルの高級な部屋のようだ。
満足して二階に戻るといい匂いがする。
ルカはキッチンでマキネッタを用いて、エスプレッソを淹れていた。
マキネッタは、独得な形をしたポットのような物で、底部分に水を入れ、エスプレッソの粉をセットして火に掛けると、エスプレッソが抽出される仕組みになっている。
21
お気に入りに追加
2,546
あなたにおすすめの小説
『逃れられない淫らな三角関係』番外編 ヘルプラインを活用せよ!
臣桜
恋愛
『逃れられない淫らな三角関係』の番外編です。
やりとりのある特定の読者さまに向けた番外編(小冊子)です。
他にも色々あるのですが、差し障りのなさそうなものなので公開します。
(他の番外編は、リアルブランド名とかを出してしまっている配慮していないものなので、ここに載せるかは検討中)
地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~
あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる