560 / 1,544
第十部・ニセコ 編
神経を逆なでする惚気
しおりを挟む
「有名人ってどういうエッチするんですか? やっぱりヤバイ性癖とか持ってます?」
「げほっ」
いきなりな質問をされ、香澄は飲み込みかけた唾に咳き込み、目をまん丸に見開く。
(人様のエッチなんてどうだっていいでしょお!)
心の中で絶叫するのだが、口では素直に言えない。
とりあえず自分も彼の向かいにあるソファに座り、モゴモゴと言い訳をする。
「そ……その。そういう事はあんまり人には言わない事で……」
「……まー、そうですね。じゃあ、香澄さんは御劔佑のどこが好きなんです? 顔? 金持ちなところ?」
そう尋ねられ、気持ちがスンッと冷めてしまった。
佑のすべてが好きで、大好きで感謝していて、一生の恩人だと思っている。
好きな所なんて挙げ連ねたら一晩では語りきれない。
なのに、やはり一般的に見て有名人を好きになる理由は、その二点しかないのだと思い知る。
しょんぼりしながらも、精一杯彼の魅力を伝えた。
「とても素敵な人ですよ。社員思いで、Chief Everyはホワイト企業として何度も受賞しています。オフィスだって社員ファーストな場所になっていて、子連れで出勤したママさんのための保育所もあります」
「確かに美点ですが、それは性格じゃないでしょう」
和也はさして興味なさそうに言う。
思わず、香澄は内心で唇を噛んだ。
佑の優しさや思いやりが今のChief Everyを作っている。
彼がもっと利己的で冷たい人だったなら、会社だってこれほど大きくならなかっただろう。
(……私、佑さんが作った会社から、まるっと彼の事が好きなんだよなぁ)
和也に「どこが好き?」と尋ねられて、改めて香澄は佑への想いを自覚してゆく。
そして今度は、ちゃんと伝わるように彼の素晴らしさを語る。
「落ち着いていて、何をさせてもパーフェクトで、料理も上手いんです。自宅にいる時も、疲れてるのに家事を手伝ってくれて、いつでも私を気遣ってくれます。でもちょっと焼きもちを妬いたら、少し余裕がなくなったりして、そこも愛おしいです。短所のない完璧な人に見えますが、ちゃんと人間臭くて、彼という一人の人間が好きなんです」
「ふぅん……」
次第に熱の籠もっていく香澄の言葉を、自分から質問したくせに和也は興味なさそうに相槌を打つ。
「毎日仕事で忙しくて、国内海外出張もしているのに、滞在先のホテルのジムも含め、体を鍛えて体力づくりにも余念がありません。ストイックで、自分に厳しいんです。なのに私も一緒に運動しようとすると、初心者のところまで戻ってくれて一緒にしてくれたり……。結局、優しいんですよね。人を思いやる余裕があるんです」
運動着姿の佑を思い出し、香澄はにやけそうになる顔を必死に抑える。
「見た目だって芸能人に引けを取らないほど美形ですが、佑さんの良さはそこだけじゃないんです。有名人だと外見や言動、年収とかに気が向きがちですが、そうじゃないんです。佑さんは――」
和也を直視しながら好きな人の魅力をプレゼンするのは恥ずかしいので、香澄はずっと窓の外を見ていた。
爪をツルツルと弄りながら話していたのだが、不意に顔に影がかかって上を向く。
すぐ側に和也が立っていて、感情の分からない目でジッとこちらを見ていた。
「な……なんですか?」
ソファに座り直すふりをして少し離れると、和也がソファに膝を載せる。
「香澄さんっていい女ですよね。可愛いしスタイルいいし、一途で健気な感じがします」
「あ……、ど、どうも……」
褒められているというのに、素直に喜べる雰囲気ではない。
和也は徐々に距離を詰め、追い詰められた香澄は思わず腰を上げる。
「あっ」
だが肩を上から押さえつけられ、座らされる。
危機感と共にハッとして和也を見上げると、目の奥に危険な熱を宿した彼が歪んだ笑みを浮かべていた。
「俺、年上が好みなんですよ。包容力がありそうで、人生経験豊富なのに、どこか純粋だとドンピシャなんです」
「そ、そうなの?」
和也の手を払ってまた立ち上がろうとしたが、グイッと手を引っ張られたかと思うと、ソファの上に押し倒されてしまった。
「ちょ……っ」
――駄目!
逃げようと脚をバタつかせ上体を起こそうとするが、和也が馬乗りになって敵わない。
急に、健二に車の中でレイプされたトラウマと、覚えはないのにマティアスにレイプされかけた思い出が蘇り、ぐっと気分が悪くなり吐き気を覚える。
「げほっ」
いきなりな質問をされ、香澄は飲み込みかけた唾に咳き込み、目をまん丸に見開く。
(人様のエッチなんてどうだっていいでしょお!)
心の中で絶叫するのだが、口では素直に言えない。
とりあえず自分も彼の向かいにあるソファに座り、モゴモゴと言い訳をする。
「そ……その。そういう事はあんまり人には言わない事で……」
「……まー、そうですね。じゃあ、香澄さんは御劔佑のどこが好きなんです? 顔? 金持ちなところ?」
そう尋ねられ、気持ちがスンッと冷めてしまった。
佑のすべてが好きで、大好きで感謝していて、一生の恩人だと思っている。
好きな所なんて挙げ連ねたら一晩では語りきれない。
なのに、やはり一般的に見て有名人を好きになる理由は、その二点しかないのだと思い知る。
しょんぼりしながらも、精一杯彼の魅力を伝えた。
「とても素敵な人ですよ。社員思いで、Chief Everyはホワイト企業として何度も受賞しています。オフィスだって社員ファーストな場所になっていて、子連れで出勤したママさんのための保育所もあります」
「確かに美点ですが、それは性格じゃないでしょう」
和也はさして興味なさそうに言う。
思わず、香澄は内心で唇を噛んだ。
佑の優しさや思いやりが今のChief Everyを作っている。
彼がもっと利己的で冷たい人だったなら、会社だってこれほど大きくならなかっただろう。
(……私、佑さんが作った会社から、まるっと彼の事が好きなんだよなぁ)
和也に「どこが好き?」と尋ねられて、改めて香澄は佑への想いを自覚してゆく。
そして今度は、ちゃんと伝わるように彼の素晴らしさを語る。
「落ち着いていて、何をさせてもパーフェクトで、料理も上手いんです。自宅にいる時も、疲れてるのに家事を手伝ってくれて、いつでも私を気遣ってくれます。でもちょっと焼きもちを妬いたら、少し余裕がなくなったりして、そこも愛おしいです。短所のない完璧な人に見えますが、ちゃんと人間臭くて、彼という一人の人間が好きなんです」
「ふぅん……」
次第に熱の籠もっていく香澄の言葉を、自分から質問したくせに和也は興味なさそうに相槌を打つ。
「毎日仕事で忙しくて、国内海外出張もしているのに、滞在先のホテルのジムも含め、体を鍛えて体力づくりにも余念がありません。ストイックで、自分に厳しいんです。なのに私も一緒に運動しようとすると、初心者のところまで戻ってくれて一緒にしてくれたり……。結局、優しいんですよね。人を思いやる余裕があるんです」
運動着姿の佑を思い出し、香澄はにやけそうになる顔を必死に抑える。
「見た目だって芸能人に引けを取らないほど美形ですが、佑さんの良さはそこだけじゃないんです。有名人だと外見や言動、年収とかに気が向きがちですが、そうじゃないんです。佑さんは――」
和也を直視しながら好きな人の魅力をプレゼンするのは恥ずかしいので、香澄はずっと窓の外を見ていた。
爪をツルツルと弄りながら話していたのだが、不意に顔に影がかかって上を向く。
すぐ側に和也が立っていて、感情の分からない目でジッとこちらを見ていた。
「な……なんですか?」
ソファに座り直すふりをして少し離れると、和也がソファに膝を載せる。
「香澄さんっていい女ですよね。可愛いしスタイルいいし、一途で健気な感じがします」
「あ……、ど、どうも……」
褒められているというのに、素直に喜べる雰囲気ではない。
和也は徐々に距離を詰め、追い詰められた香澄は思わず腰を上げる。
「あっ」
だが肩を上から押さえつけられ、座らされる。
危機感と共にハッとして和也を見上げると、目の奥に危険な熱を宿した彼が歪んだ笑みを浮かべていた。
「俺、年上が好みなんですよ。包容力がありそうで、人生経験豊富なのに、どこか純粋だとドンピシャなんです」
「そ、そうなの?」
和也の手を払ってまた立ち上がろうとしたが、グイッと手を引っ張られたかと思うと、ソファの上に押し倒されてしまった。
「ちょ……っ」
――駄目!
逃げようと脚をバタつかせ上体を起こそうとするが、和也が馬乗りになって敵わない。
急に、健二に車の中でレイプされたトラウマと、覚えはないのにマティアスにレイプされかけた思い出が蘇り、ぐっと気分が悪くなり吐き気を覚える。
20
お気に入りに追加
2,511
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!
臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。
そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。
※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています
※表紙はニジジャーニーで生成しました
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる