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第十部・ニセコ 編
親友との会話
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「普通より高い服や物を持っていても何も思わなくなって、〝普通〟になって人を自然と見下しちゃってるとか。自分の男性基準が佑さんになって、他の男性を並み以下だと思ってしまうとか。……何て言うか、札幌にいた自分と変わってしまった気がしているの」
溜め息混じりに言うと、麻衣は率直な意見をくれる。
「私はそう思わないけどさ、香澄は自分が無意識に誰かを見下してると思ってる? あんたって必要以上に自分を下に置いて、相手に礼を尽くそうとするでしょ。つらい時でも他人の悩み聞いたりして、学生時代に『よくやるなー』って感心してたよ? 他の子は香澄なら何でも聞いてくれると思って、〝都合良く愚痴を聞いてくれる相手〟ぐらいしか思ってなかったと思う。なのに香澄は自分の時間を削っても相手の話を聞いて、満足させるじゃん」
「……そっかなぁ。私、都合のいい女だった?」
冗談めかして笑うと、麻衣も笑顔を見せる。
「香澄って良くも悪くも、あんまり自分の意見を強く言おうとしないじゃん。だから結構人につけ込まれやすい……とは思うよ?」
「うーん、そっかぁ……。……それで、見下してるかの話に戻るけど、そうならないように気を付けているつもりなんだけどね。でも無意識って分からないでしょ?」
不安がる香澄に、麻衣はスパッと断言する。
「そもそもさ。嫌な奴って自分が嫌な奴って思われてるか、気にしないよ? 嫌な奴って自分がやっている事、全部正しいって思って疑わないもん。良心の呵責がないの。ある程度敵を作らないように〝いい人〟のフリをするけど、誰かをコソコソ悪く言う時に、自分がどれだけ醜悪な顔をしているかとか、全然気になってないと思うよ」
「……確かに」
麻衣の言い分に、香澄は頷く。
「でも香澄は違うでしょ? 香澄が自分の理想を追いかけて、『こういう人間でありたい』って思ってる限り、あんたは大丈夫」
「そう……かな」
「そうだよ。私は高校からの香澄しか知らないけど、十年近くの付き合いだよ? あんまり目標とか口にしない割に、自分に理想を掲げて日々努力する性格は分かってる。あんたは絶対大丈夫!」
ぱん、と腕を叩かれ、香澄は最後の一口を口に押し込んだ。
「ありがと! 麻衣に言われると安心するなぁ」
「なんも。逆に聞くしかできなくてごめんね。本当は東京に行って、側で聞いてあげたいんだけど」
「遠くても親友だよ?」
まっすぐ麻衣を見て微笑む香澄に、麻衣は顔の前でパタパタと手を振って横を向く。
「あんたそういう、ちょっと人たらしみたいなところあるから、それは気を付けた方がいいよ。下手な男なら絶対勘違いする」
「そ、そうかな? 私こう……エリアマネージャーやってた時も、結構ビシッとしてたつもりだけど」
「何て言うかねー。隙のあるオーラが出てるんだよね。香澄なら何しても怒らなさそうとか」
「えぇ!? 私ちゃんと嫌な事は嫌って言うよ?」
「だったらいいんだけどさ? 御劔さんも安心してる? 他の男のこと気にしたりしてない?」
「う……」
話がふりだしに戻り、佑の執着や過保護の話になる。
固まった香澄を見て、麻衣は何やら得心顔だ。
「御劔さんも人の子なんだろうね。雲の上の人の恋愛事情は分からないけど、きっと香澄を手放したくなくて必死なんだよ。私からすれば女なんてよりどりみどりに思えるけど、有名になるほど恋愛が難しくなるかもしれない。それにこういうと下世話だけど、結婚適齢期でしょ? 結婚するなら今なんじゃないかな。香澄が本当に運命の相手なんだよ」
「うん。私も佑さんしかいないって思ってる。あんなに私の事を大切にしてくれる人はいない。私だけじゃなくて、家族も環境も大切にしてくれようとしてる」
「ならいいじゃん。息抜きが終わったら、笑顔で『ただいま』って言ってあげたら?」
「うん……」
くぴ……とペットボトルのお茶を飲み、香澄はソファにもたれかかる。
「あのね? のろけていい?」
「どうぞどうぞ。本人の前で恥ずかしいなら、たっぷりのろけな? 私も御劔社長が格好いいのは分かってるし」
許可を得て、香澄はクッションを抱き締めながらゴロゴロ悶える。
「顔がいいの」
「うん、分かってる」
「毎日見ても、溜め息が出ちゃうぐらい格好いい。それで体も格好いいんだよ? 服脱ぐと、ほんっとうに毎回鼻血出ないか心配になる。あとすっごくいい匂い」
「うんうん」
「あとね、スーツが戦闘服なんだけど、私服姿もモデルさんみたいだし、何気なくTシャツ着ても、背中の肩甲骨の盛り上がりとか、ふぁーってなるの」
「お、マニアックきたね」
溜め息混じりに言うと、麻衣は率直な意見をくれる。
「私はそう思わないけどさ、香澄は自分が無意識に誰かを見下してると思ってる? あんたって必要以上に自分を下に置いて、相手に礼を尽くそうとするでしょ。つらい時でも他人の悩み聞いたりして、学生時代に『よくやるなー』って感心してたよ? 他の子は香澄なら何でも聞いてくれると思って、〝都合良く愚痴を聞いてくれる相手〟ぐらいしか思ってなかったと思う。なのに香澄は自分の時間を削っても相手の話を聞いて、満足させるじゃん」
「……そっかなぁ。私、都合のいい女だった?」
冗談めかして笑うと、麻衣も笑顔を見せる。
「香澄って良くも悪くも、あんまり自分の意見を強く言おうとしないじゃん。だから結構人につけ込まれやすい……とは思うよ?」
「うーん、そっかぁ……。……それで、見下してるかの話に戻るけど、そうならないように気を付けているつもりなんだけどね。でも無意識って分からないでしょ?」
不安がる香澄に、麻衣はスパッと断言する。
「そもそもさ。嫌な奴って自分が嫌な奴って思われてるか、気にしないよ? 嫌な奴って自分がやっている事、全部正しいって思って疑わないもん。良心の呵責がないの。ある程度敵を作らないように〝いい人〟のフリをするけど、誰かをコソコソ悪く言う時に、自分がどれだけ醜悪な顔をしているかとか、全然気になってないと思うよ」
「……確かに」
麻衣の言い分に、香澄は頷く。
「でも香澄は違うでしょ? 香澄が自分の理想を追いかけて、『こういう人間でありたい』って思ってる限り、あんたは大丈夫」
「そう……かな」
「そうだよ。私は高校からの香澄しか知らないけど、十年近くの付き合いだよ? あんまり目標とか口にしない割に、自分に理想を掲げて日々努力する性格は分かってる。あんたは絶対大丈夫!」
ぱん、と腕を叩かれ、香澄は最後の一口を口に押し込んだ。
「ありがと! 麻衣に言われると安心するなぁ」
「なんも。逆に聞くしかできなくてごめんね。本当は東京に行って、側で聞いてあげたいんだけど」
「遠くても親友だよ?」
まっすぐ麻衣を見て微笑む香澄に、麻衣は顔の前でパタパタと手を振って横を向く。
「あんたそういう、ちょっと人たらしみたいなところあるから、それは気を付けた方がいいよ。下手な男なら絶対勘違いする」
「そ、そうかな? 私こう……エリアマネージャーやってた時も、結構ビシッとしてたつもりだけど」
「何て言うかねー。隙のあるオーラが出てるんだよね。香澄なら何しても怒らなさそうとか」
「えぇ!? 私ちゃんと嫌な事は嫌って言うよ?」
「だったらいいんだけどさ? 御劔さんも安心してる? 他の男のこと気にしたりしてない?」
「う……」
話がふりだしに戻り、佑の執着や過保護の話になる。
固まった香澄を見て、麻衣は何やら得心顔だ。
「御劔さんも人の子なんだろうね。雲の上の人の恋愛事情は分からないけど、きっと香澄を手放したくなくて必死なんだよ。私からすれば女なんてよりどりみどりに思えるけど、有名になるほど恋愛が難しくなるかもしれない。それにこういうと下世話だけど、結婚適齢期でしょ? 結婚するなら今なんじゃないかな。香澄が本当に運命の相手なんだよ」
「うん。私も佑さんしかいないって思ってる。あんなに私の事を大切にしてくれる人はいない。私だけじゃなくて、家族も環境も大切にしてくれようとしてる」
「ならいいじゃん。息抜きが終わったら、笑顔で『ただいま』って言ってあげたら?」
「うん……」
くぴ……とペットボトルのお茶を飲み、香澄はソファにもたれかかる。
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「どうぞどうぞ。本人の前で恥ずかしいなら、たっぷりのろけな? 私も御劔社長が格好いいのは分かってるし」
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「うん、分かってる」
「毎日見ても、溜め息が出ちゃうぐらい格好いい。それで体も格好いいんだよ? 服脱ぐと、ほんっとうに毎回鼻血出ないか心配になる。あとすっごくいい匂い」
「うんうん」
「あとね、スーツが戦闘服なんだけど、私服姿もモデルさんみたいだし、何気なくTシャツ着ても、背中の肩甲骨の盛り上がりとか、ふぁーってなるの」
「お、マニアックきたね」
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