【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

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第九部・贖罪 編

双子とのデート

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 だが、もうすでに手遅れだと理解している。

 香澄は〝決めて〟しまった。

 残っているのは、グジグジと痛む己の胸のしこりのみだ。

「……マジか」

 素の声で呟き、目の前が涙で曇る。

 のろのろと右を向くと、磨りガラスの向こうで香澄のシルエットが動いている。
 彼女はもう、佑が世話を焼かなくても一人であの肌の手入れをし、ドライヤーを掛けられる。

 ――いや、元から一人でできていた。

 ――俺が彼女の成長の妨げをしていたのか?
 ――俺はいないほうがいいのか?
 ――俺は香澄にとって〝不要な存在〟なのか?

 ジワジワと、〝もう一人の自分〟の声が佑を蝕んでゆく。

 香澄は言わなかった言葉を勝手に想像し、心の闇が成長していく。

 心の奥底にある器からとぷりと闇が溢れ――、佑の目から涙を滴らせた。



**



 土曜日の夜は、それぞれの寝室で眠った。

 香澄もあんな自分勝手な事を言っておいて、佑と同じベッドで眠れるほど図太くない。

 翌朝はなるべく普通に振る舞って朝食を作り、いつものように佑と向かい合って食事をした。

「今日のコーディネート、俺が考えたの着てくれるか? せめて俺が選んだ服で、他の男とデートをしてほしい」
「うん、分かった」

 多少のぎこちなさはあったものの、二人とも子供ではないのでいつも通りに振る舞った。

 朝食後、平時通り二人で食器を片付け、香澄がハンドクリームを塗っていると、佑が手を握って自分の指も絡めてきた。

「佑さんもハンドクリーム分けてほしいの?」

 まるで女子高生みたいだな、と微笑ましく思い、香澄はチューブからもう一回分ハンドクリームを出し、佑の手を優しくマッサージした。

 自分よりもずっと大きな手を両手で包み、手の甲と掌にすりすりとハンドクリームをなじませ、指の一本一本も握って塗り込み、指の股まですり込む。

「はい、終わり」

 しっとりとした佑の手に満足し、香澄は彼に微笑みかけた。

「ありがとう」

 本当は彼が理由をつけて、手を握りたいだけなのは分かっている。
 それでもこうやって見せかけの優しさで、深刻な空気になるのを誤魔化す自分を狡いと思った。

「じゃあ、服を選ぼうか」
「うん、お任せします。私のスタイリストさん」

 冗談めかして言うと、クシャッと頭を撫でられた。





 結局、香澄の服はカジュアルな感じに落ち着いた。

 レンガ色のチェックロングプリーツスカートに、上は胸元にフォトプリントのある薄手のTシャツ。
 その上にジージャンを羽織り、足元は安定感のある太いヒールのショートブーツを履いた。

 佑はなるべく目立たないようにとサックスシャツの下にVネックの白Tシャツ、グレンチェックのアンクルパンツにスニーカーとかなりカジュアルだ。

 しかし地毛の色が薄い髪に、スラリと高い身長にモデル並みのプロポーション、加えて整った顔立ちにブランド物のサングラスを掛けていると、否が応でも目を引いてしまう。

(たとえ芋ジャージ着てても、佑さんなら格好いいんだろうな)

 そんな事を考えながら、香澄は双子と待ち合わせしたお台場に向かった。

 十七世紀から十八世紀ほどのヨーロッパの街並みを模したテーマパーク型ショッピングモールに向かうと、ひときわ目立つ噴水前に双子とマティアスが立っていた。
 三人ともサングラスを掛けているのだが、隠しきれないイケメンオーラが出ていて周囲の目を引いている。

(う……。勇気がいるな)

 そう思ったものの、香澄は腕時計を確認してから小走りに彼らに近付いて行った。

「お待たせしました!」
「まだ時間前だよ」
「お~、アロそのセリフ鉄板でない?」
『おはよう、カスミ』

 マティアスがドイツ語で挨拶をしてきて、香澄は昨晩の事を思い出し一瞬固まる。

 だがすぐに笑顔を浮かべ、『おはようございます』と挨拶をした。
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