【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

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第九部・贖罪 編

偶然の再会

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 昼食をとったあと、佑たちはホテルのスイートルームを出た。

 アドラーは別のホテルを取っているようだ。
 彼らは竹本の家に挨拶に行ったり、東京観光を数日楽しむらしい。

 香澄は結局、双子とマティアスと一緒に半日東京観光をする事にした。

「じゃあ、車を呼ぶから少し待っていてくれ」

 フロントで清算を終えたあと、佑がそう言ってスマホを取りだし少し離れた所へ歩いて行く。
 香澄は双子とマティアスを座らせようと、ロビー内の空いたソファを探そうとしていた。

 ――と、女性の声がする。

「あら? あなた……」
「え?」

 思わずそちらを見ると、身なりのいい女性が立っている。
 その顔は忘れられない、香澄に平手をした――。

「小野瀬さん……」

 一度はアンネに佑とお見合いをセッティングされた、社長令嬢だ。
 そして佑に断られ、直後に香澄が一緒にいたために、思いきり勘違いをされてビンタしてきた苛烈なお嬢様だ。

 百合恵はフェミニンなワンピースに薄手のカーディガンを羽織った格好だ。

 彼女は香澄を頭のてっぺんからつま先まで遠慮なくジロジロと見る。
 それからロビーの隅に電話をしている佑がいるのを見て、溜め息をついた。

「御劔さんとまだ続いていらっしゃるのね」
「は、はい……」

 どうしたものかと狼狽えていると、空気を読まない双子が近づいてきた。

「カスミ、誰それ?」
「またカスミに意地悪する女の子?」

 名誉に関わる言い方をされ、さすがに百合恵もギクッとして周囲を窺う。

「なんですか、あなた達」
「……ふぅん? 名刺あげよっか」

 双子は面白がるように名刺ホルダーからデザインチックな名刺を取りだし、百合恵に差し出す。

「どうも……」

 百合恵は強張った顔のままアロイスから名刺を受け取り、英語表記のそれを読み目を見開く。

「え……っ? 『アロクラ』の……!?」

 そして目の前のうり二つの美形を見比べ、信じられないとさらに瞠目する。
 その時、佑が電話を終えて戻ってきた。

「香澄、もう少ししたら小金井さんが……、小野瀬さん?」

 佑も彼女に気付き、表情をやや曇らせ足を止める。

『カイの昔の女か?』

 そこでやはり空気を読まないマティアスが言葉を挟み、香澄が苦笑する。

『以前、佑さんとお見合いをされた社長令嬢です。その時のお話はお断りして、今に至っています』

 百合恵は香澄がペラペラと英語を話しているのを見て、目を丸くしている。

『バッカ! タスク、カスミがいるのにお見合いなんてしたの!? ばっかじゃね?』
『お見合いなんてするなら、カスミ僕らにちょうだいよ』

『婚約が決まる前の話だ!』

 つられて英語で言い、佑はばつの悪そうな顔で百合恵を見る。

「小野瀬さん、お久しぶりです。その後お元気でしたか?」

 百合恵は佑がもうすでに自分を「百合恵さん」と呼ばなくなった事を知り、表情を強ばらせる。

「え、ええ。御劔さんもそこの秘書さんと婚約されたとか……」

 百合恵に言われ、佑は苦く笑う。

「以前は小野瀬さんに恥をかかせるような事をしてしまい、申し訳ございませんでした。あなたにも良い人が現れるようお祈りします」

 佑にやんわりと、けれどきっぱりと〝気持ちはない〟と言われ、百合恵は苦笑する。

「今、幸せですか?」

 百合恵に尋ねられ、佑は最近あった様々な事を思いだしほんの一瞬だけ口ごもる。
 が、すぐに心の底からの笑みを浮かべ、香澄の頭をポンと撫でた。

「幸せですよ」

 きっぱり言われ、百合恵は半ば呆れたように、半ば羨ましそうに微笑む。

「いいなぁ。あーあ、あのとき御劔さんとうまくいっていたら、私も今苦しんでいなかったかもしれませんね」

 苦しむと聞いて、香澄は焦って尋ねる。
 少なからず、百合恵が佑とうまくいかなかった事に責任は感じているからだ。

「な……何か、苦しまれているんですか?」

「一回り年上の男性に、ずいぶん気に入られてしまったんです。家柄や財産は申し分ない人なのですが、どうしても……外見とか年齢とか、気になるじゃないですか」

 覚えている限り百合恵は二十六歳で、一回り上と言われても三十六歳だ。
 佑だって三十二歳だし、老けていると言っては可哀想な年齢にも思えるが……。
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