上 下
456 / 1,508
第九部・贖罪 編

佑さんがほしいの。今すぐ ☆

しおりを挟む
「俺の方が体が大きいから、俺の勝ち」

 ギュウッと抱き締められ、香澄は思わずクスクス笑う。

「もー……。物理攻撃はずるい」

 そのあともしばらく、彼の首元に手を当て、体をすり寄せたり匂いを嗅いだり、とにかく佑を感じようとした。

 ――不安で堪らず、ただ佑に触りたい。
 ――触れ合って、体温を感じて安心したい。
 ――いっその事、全裸で絡み合って事後の彼の体重を感じたい。

(……淫乱って思われるかな)

 いつもなら雰囲気たっぷりに誘えたかもしれないのに、なぜだか今は不安のせいか自分に自信が持てず、思い切った事が言えない。

「香澄? 何がしたい? 横になりたいか?」

 佑も何かを察してくれているのか、懸命に香澄の望みを叶えようとしてくれている。

 香澄は少し唇を開き――閉じて、を繰り返し、しばらく迷ったあと、ポショッと彼の耳元で囁いた。

「……佑さんに直に触りたい。……えっちしたい」

 佑は微かに目を見開いた。
 そして返事をする代わりに、彼女を抱く指先にク……と力を込める。

「……ダメ?」

 そろりと窺う視線の先には、すでに熱を孕んだ佑の瞳があった。

「……ダメじゃない。俺もしたい。すっごいしたい。…………でも、いいのか?」

 まるで愛し合う事がいけない事のように言う佑に、香澄はほんのり頬を染めて笑う。

「……佑さんがほしいの。今すぐ」

 慣れているはずなのに、今はとても恥ずかしい。

 体がこの上なく熱くなり、香澄はまた佑の肩口に顔を埋めた。





 リビングのソファから抱き上げられて運ばれ、香澄が下ろされたのは主寝室のベッドの上だった。

 寝かされると同時に佑が覆い被さり、余裕のないキスを仕掛けてくる。
 キスをしながら彼は自分のTシャツの裾に手をかけ、息継ぎのタイミングで捲り上げて脱いだ。

「っは…………ぁ」

 懸命に酸素を求める香澄は、間接照明に照らされて筋肉の陰影を作る、佑の肉体に興奮した。

「……すき」

 佑が好きで、つい本音が漏れた。

 優しいところは泣き出しそうなぐらい好きだし、顔も好みすぎて直視できない。
 鍛え上げられた肉体を見た時は、漫画のキャラクターのように鼻血を噴いてしまいそうになる。

 目の前で御劔佑という一人の男性がいるだけで、どうしようもない想いに駆られて一杯一杯になってしまう。

 香澄はキャミソールとタップパンツ姿だ。
 まずタップパンツが下着ごと引きずり下ろされ、プリンとしたお尻が出てしまう。

 体を火照らせ期待していると、佑の手が少し迷ってキャミソールを脱がせてくる。

「……胸は変な感じしないか?」
「どうして?」

 胸の膨らみを撫でる手つきが優しすぎて、どこかもどかしい。
 いつもなら遠慮無く揉み、すぐに乳首を虐めてくるのに。

 質問に質問で返した香澄の様子を見てから、佑は少し迷ったあとやんわりと胸を揉んだ。

「痛くないか?」
「? ううん、痛くないよ?」

 佑は香澄をじっと見下ろし、何かに迷っているようだった。

 やがて、「ちょっと触って」と香澄の手を導く。

「ん……?」

 自分で胸を揉むよう促されたのかと思ったが、佑はどうやら乳首を触らせたいらしい。

 不思議に思って指先を這わせると、何か濡れた感触がある。

「なに……これ」

 濡れた指先を顔に近付け、匂いを嗅いでみる。――が、特に匂いはしない。

「香澄はいま、一時的におっぱいが出ているんだ」
「……なんで?」

 自然に考えるのなら、乳が出るのは出産後だろう。

 だが今の香澄はそういう事も考えられず、ただ不思議に思うだけだ。

 佑は少し言葉を迷わせ、遠回しな言い方をする。

「今は香澄の体に、おっぱいを出す成分が溜まってしまっているんだ。そのうち収まって出なくなるから、心配しなくていい。下着にくっつくとかあるみたいだから、斎藤さんに頼んで母乳パッドというのを買っておいてもらった」

「……そんなに出るの?」

 香澄は首を傾げる。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

[完結]キツネの嫁入り

66
BL / 完結 24h.ポイント:937pt お気に入り:381

女嫌いの騎士は呪われた伯爵令嬢を手放さない

恋愛 / 完結 24h.ポイント:170pt お気に入り:950

後宮に咲く薔薇

恋愛 / 完結 24h.ポイント:20,571pt お気に入り:771

【R-18】八年執着されましたが、幸せです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:149pt お気に入り:616

モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:177pt お気に入り:380

処理中です...