【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

文字の大きさ
上 下
452 / 1,559
第九部・贖罪 編

彼女のためにできる事

しおりを挟む
『香澄さんが起きて何か取り乱すような事があったら、私を呼びなさい。栄子さんは札幌にいるからすぐ来られないだろうし、クラウザー家が関わってこんな事になっただなんて、とてもじゃないけど伝えられないわ。もしかしたら女同士の方が何か役に立つかもしれない。それでも、義母になる私への遠慮や、クラウザー家への嫌悪があるかもしれない。その時は誰か専門の女性に任せるわ』

 アンネが全面的に香澄の味方になってくれる事を知り、佑は内心安堵する。

『専門の女性はもう雇っているから、身の回りの事は大丈夫だ』

 熊谷の事を話すと、二人は『プロがいるなら大丈夫ね』と安心した。

『香澄さんが意識を戻せば、彼女にすべての決定権があると伝えて。クラウザー家と関わりたくないと言ったなら、私も今後彼女に会うのを控える。それでも佑、私は一度あなたたちの結婚を許した。だから香澄さんがあなたを拒絶しない限り、彼女はあなたが守っていきなさい。私はお金を出す事ぐらいしかできない。資産で言えばあなたの方が上だけれど、私にファッティの遺産がいずれ回ってきたら、その大半を譲るわ。そうでもしなければ、香澄さんに申し訳が立たない』

 深く溜め息をつき、アンネは眉間の皺を揉む。
 澪も神妙な面持ちをしている。

『私、香澄さんともっと仲良くなりたいと思っていたけど、私もママと気持ちは同じ。オーパたちのせいで香澄さんがこんなに酷い目に遭ってしまったなんて、許されない事だわ。御劔家もろともクラウザー家を憎むなら、私も香澄さんに嫌われる覚悟をする』

 沈痛な表情で言う妹に、佑は本当なら『心配ない』と伝えたかった。

 香澄はとても優しい女性で、滅多な事で人を憎んだりしない。

 だが彼女はまだ寝たままで、事件の事をどこまで覚えているかも分からない。
 だから『香澄は澪を嫌わないから大丈夫だ』など、無責任な事は今は言えなかった。

 アンネが続ける。

『佑、ファッティを訴えなさい。訴えずとも示談金でがっぽりせしめなさい。それを丸ごと香澄さんの口座に突っ込むの。アロクラからも、マティアスからも大金を巻き上げればいいわ。マティアスはエミリアから賠償金が支払われるだろうし、あの子たちも香澄さんのためにお金を払う事に抵抗しないでしょう。もし何も罪悪感がないと言うのなら、縁を切るわ。それに……、一番はメイヤー家からね。フランクさんはエミリアを大事にしていたから、孫娘の不祥事のためならどれだけでもお金を出すでしょう』

 佑は思わず渋面になり、首を横に振る。

『……母さん。そんな、金だけで解決するようなやり方は駄目だ』
『じゃあ、他にどういう手があると言うの?』

 ジロリと睨まれ、佑もムッとして睨み返す。

『女性の尊厳を奪われたというのに、土下座をしたら解決できるとでも思っているの? 香澄さんにはケアが必要だわ。それにはお金がかかる。働けていなかった給料分も、別の場所から持ってこればいいじゃない。お金はすべてを解決するわ。いい? 困った時は札束で殴りなさい。こういう事ができるのは、あなたみたいな立場の特権よ。愛情とかそういうものは、あなたが与えなさい。他の人じゃ意味がないんだから』

 確かにアンネの言う通りだ。
 佑はしばし考えたあと、素直に頷いた。

『分かった。香澄の口座にしこたま金を入れる』

 受け入れた息子に頷き、アンネは脚を組む。

『あなたはまだファッティやアロクラたちに、連絡をしたくないでしょう。でもあちらはあちらで、怒られるべき人に怒られていると思うわ。特にムッティにね。ムッティはああ見えて芯が強い人だから、一度怒ったら怖いわよ。まぁ、私たちはこの歳になれば、親が離婚しようが好きにしてっていう感じだけどね。親は親で、自分の人生を生きるべきだわ』

 佑は物静かで上品な祖母の顔を思い浮かべる。
 そして微笑したまま仁王のごとき怒気を放ち、祖父を淡々とした言葉でなじる様子を想像した。

(やってやれ、オーマ)

 思わず、心の中で祖母をけしかける。

『まぁ、少し待つよ。何もかも一気に解決しようと思っていない。いま弁護士に準備をしてもらっているところだ。相手が多いから、まずはメイヤーと決着をつける。身内は逃げないと分かっているから、あとからでも遅くはない』

 淡々と言ってから、佑は天井に視線をやった。

 二階ではまだ香澄が昏々と眠っている。

 彼女のために何かできるのなら、それが金を吸い上げる事でも何でもいい。
 派手な浪費を好まない香澄だが、自由に使っていい金が増えたらきっと喜んでくれるだろう。

 そう思う傍ら、本当は「もっと他に何かあるだろう」と思ってしまう。
 香澄があれだけ傷付いているのに、できる事が金を集めるだけだなんて、何て情けない。

 しかし佑は一般家庭育ちとは言え、母が資産家なので裕福な子供時代を送ってきた。
 金で解決するという案にあっさり頷いてしまった自分に、アドラーの血筋を感じて残念な気持ちになった。

(俺だけが香澄に与えられる……。感情的な安らぎ、癒やし……か)

 佑は目を閉じ、香澄にとって何が一番いいのかを考える。

 気晴らしに旅行に行くには、香澄の体調が万全ではない。
 買い物を自由にしていいと言っても、「物なら溢れてる」と言われる。
しおりを挟む
感想 560

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜

青花美来
恋愛
「……三年前、一緒に寝た間柄だろ?」 三年前のあの一夜のことは、もう過去のことのはずなのに。 一夜の過ちとして、もう忘れたはずなのに。 「忘れたとは言わせねぇぞ?」 偶然再会したら、心も身体も翻弄されてしまって。 「……今度こそ、逃がすつもりも離すつもりもねぇから」 その溺愛からは、もう逃れられない。 *第16回恋愛小説大賞奨励賞受賞しました*

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。 その肩書きに恐れをなして逃げた朝。 もう関わらない。そう決めたのに。 それから一ヶ月後。 「鮎原さん、ですよね?」 「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」 「僕と、結婚してくれませんか」 あの一夜から、溺愛が始まりました。

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...