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第八部・イギリス捜索 編
取り戻した愛しい女性 ★
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『……何だここは。ソドムとゴモラか』
テオが呟き、額に手をやる。
その時、佑の胸元に女性の手が這った。
とっさに顎を引き脇を見れば、赤いドレスを着たブルネットの女性が、マスクの奥から意味深な目を向けている。
『…………失礼』
佑は曖昧に微笑んで女性をやりすごし、飲み物を取りに行くふりをして彼女の誘いを断る。
――やがて、その時がきた。
『今日、とっておきのゲストがいるのよ。日本から連れて来た私の友達なの』
エミリアの声がし、佑の胸がドクッと嫌な音をたてた。
人々を掻き分けエミリアの声がした方へ向かうと、楽しそうな彼女が護衛に『連れてきて』と命じた。
『――――っ!!』
その時の感情を、なんと言い表したらいいだろう。
香澄が――、自分の婚約者が、淫らな服を着せられ力なく車椅子で運ばれている。
いつもならキラキラと輝いている目は光を失っている。
他者に移動されている様子から、自力で歩く事もできないのだろう。
強く拳を握りしめすぎ、掌に爪が食い込んだ。
『こちらはカスミさん。とても可愛い子でしょう? アジア人フェチの方ならきっとお気に召すはずよ』
――ああ、香澄だ。彼女だ。
――なんて姿に。
目は熱く潤み、鼻の奥がツンとして視界がぼやけた。
『脱毛済みで手入れが行き届いている肌だから、触っただけで勃起(エレクト)しちゃうかも』
エミリアの言葉に周囲がドッと笑い、中には香澄を見て股間を撫でている者もいる。
佑はこの場にいる全員を殺してやりたい初動に駆られる。
だが最後に残った理性でスマホを出し、興奮している者たちの背に隠れて河野に簡単な合図を送った。
『それにオプションとして、今ならこんな事もできるのよ』
見知らぬ者が大勢いる前でエミリアが香澄の剥き出しの乳房を握る。
すると、その先端からピュッと白い液体が漏れた。
『っっ――――っっ、…………っ!!』
耐えきれず佑は前に出ようとするが、興奮した男たちが香澄に押し寄せていてなかなか近寄れない。
渾身の力で男たちを掻き分けている内に、エミリアの次の言葉が聞こえた。
『でも出産直後じゃないから安心して? 薬の副作用なの。いずれ薬が抜けたらコレもなくなるわ。同時に意識もハッキリしてくるかもしれないけれど……。その時はいい〝ご主人様〟が躾けてくれるといいわね?』
――薬、だと!?
――よくも、……よくも俺の香澄に薬など!
マスクの下でとうに涙は流れ、佑は半狂乱になって男たちを押しのける。
テオも同様に男たちを押し、妹の凶行を止めようとしていた。
『いつもならここでオークションをしてもらうけど、今日は特別よ。じゃんけんで勝った人から、自由に犯していいわ。もちろん中出しOK。最後は誰かが引き取ってくれると助かるわ。私、この子いらないの』
――中出しなどさせて堪るか!!
――香澄は俺の女だ!!
――ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな!!
フーッ、フーッと荒々しい呼吸が食いしばった歯の間から漏れる。
歯を食いしばりすぎて奥歯が痛んだ気がしたが、どうでもいい。
男たちの間に手を差し込み、必死にかき分ける。
『じゃあ、この子を犯したいっていう人、手を上げて! 全員抱けるから焦らなくて大丈夫よ』
エミリアの言葉を聞き、男たちが獣のような声を上げ、自分が一番に香澄を犯そうと手を挙げる。
すでにズボンの間から出たペニスが見え、佑はそれを切り落としてやりたいと思った。
一番前にいた男の脇からズボッと佑の手が突き出て、そこから渾身の力で顔を出し前に出る。
――ああ。
何か考えるよりも先に腕が伸び、香澄を抱き上げた。
脱力した彼女に微笑みかけ、男たちの視線から守るために数歩離れる。
『あら、あなた気が早いわね? そんなにがっつかなくても大丈夫よ?』
エミリアの笑いを含んだ声がしたあと、テオの凄まじい平手が炸裂した音が聞こえたが、あとはもう知らない。
「……香澄」
自分のジャケットを被せ、愛しい女性に語りかける。
頭を撫で、頬を撫で、――――反応がないのを確認して彼の顔がクシャッと歪んだ。
「……香澄……っ」
うずくまったまま彼女を抱き締めた時、警察がなだれ込みすべてに決着がついた。
**
テオが呟き、額に手をやる。
その時、佑の胸元に女性の手が這った。
とっさに顎を引き脇を見れば、赤いドレスを着たブルネットの女性が、マスクの奥から意味深な目を向けている。
『…………失礼』
佑は曖昧に微笑んで女性をやりすごし、飲み物を取りに行くふりをして彼女の誘いを断る。
――やがて、その時がきた。
『今日、とっておきのゲストがいるのよ。日本から連れて来た私の友達なの』
エミリアの声がし、佑の胸がドクッと嫌な音をたてた。
人々を掻き分けエミリアの声がした方へ向かうと、楽しそうな彼女が護衛に『連れてきて』と命じた。
『――――っ!!』
その時の感情を、なんと言い表したらいいだろう。
香澄が――、自分の婚約者が、淫らな服を着せられ力なく車椅子で運ばれている。
いつもならキラキラと輝いている目は光を失っている。
他者に移動されている様子から、自力で歩く事もできないのだろう。
強く拳を握りしめすぎ、掌に爪が食い込んだ。
『こちらはカスミさん。とても可愛い子でしょう? アジア人フェチの方ならきっとお気に召すはずよ』
――ああ、香澄だ。彼女だ。
――なんて姿に。
目は熱く潤み、鼻の奥がツンとして視界がぼやけた。
『脱毛済みで手入れが行き届いている肌だから、触っただけで勃起(エレクト)しちゃうかも』
エミリアの言葉に周囲がドッと笑い、中には香澄を見て股間を撫でている者もいる。
佑はこの場にいる全員を殺してやりたい初動に駆られる。
だが最後に残った理性でスマホを出し、興奮している者たちの背に隠れて河野に簡単な合図を送った。
『それにオプションとして、今ならこんな事もできるのよ』
見知らぬ者が大勢いる前でエミリアが香澄の剥き出しの乳房を握る。
すると、その先端からピュッと白い液体が漏れた。
『っっ――――っっ、…………っ!!』
耐えきれず佑は前に出ようとするが、興奮した男たちが香澄に押し寄せていてなかなか近寄れない。
渾身の力で男たちを掻き分けている内に、エミリアの次の言葉が聞こえた。
『でも出産直後じゃないから安心して? 薬の副作用なの。いずれ薬が抜けたらコレもなくなるわ。同時に意識もハッキリしてくるかもしれないけれど……。その時はいい〝ご主人様〟が躾けてくれるといいわね?』
――薬、だと!?
――よくも、……よくも俺の香澄に薬など!
マスクの下でとうに涙は流れ、佑は半狂乱になって男たちを押しのける。
テオも同様に男たちを押し、妹の凶行を止めようとしていた。
『いつもならここでオークションをしてもらうけど、今日は特別よ。じゃんけんで勝った人から、自由に犯していいわ。もちろん中出しOK。最後は誰かが引き取ってくれると助かるわ。私、この子いらないの』
――中出しなどさせて堪るか!!
――香澄は俺の女だ!!
――ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな!!
フーッ、フーッと荒々しい呼吸が食いしばった歯の間から漏れる。
歯を食いしばりすぎて奥歯が痛んだ気がしたが、どうでもいい。
男たちの間に手を差し込み、必死にかき分ける。
『じゃあ、この子を犯したいっていう人、手を上げて! 全員抱けるから焦らなくて大丈夫よ』
エミリアの言葉を聞き、男たちが獣のような声を上げ、自分が一番に香澄を犯そうと手を挙げる。
すでにズボンの間から出たペニスが見え、佑はそれを切り落としてやりたいと思った。
一番前にいた男の脇からズボッと佑の手が突き出て、そこから渾身の力で顔を出し前に出る。
――ああ。
何か考えるよりも先に腕が伸び、香澄を抱き上げた。
脱力した彼女に微笑みかけ、男たちの視線から守るために数歩離れる。
『あら、あなた気が早いわね? そんなにがっつかなくても大丈夫よ?』
エミリアの笑いを含んだ声がしたあと、テオの凄まじい平手が炸裂した音が聞こえたが、あとはもう知らない。
「……香澄」
自分のジャケットを被せ、愛しい女性に語りかける。
頭を撫で、頬を撫で、――――反応がないのを確認して彼の顔がクシャッと歪んだ。
「……香澄……っ」
うずくまったまま彼女を抱き締めた時、警察がなだれ込みすべてに決着がついた。
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