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第八部・イギリス捜索 編
いざ別荘へ
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『その……。言ってしまうと乱交パーティーみたいなものだ。女性は全員ピル服用が義務づけられているから、安心して中出しできるんだ。食べ放題飲み放題で、いい食い物と酒が出てくる。隅でクスリをやってる奴もいるが、特に何も言われない。たまに女が商品になってオークションが開かれる事もある。これだけやっても警察に見つからないのは、主催者のバックに強力な誰かがいるからだそうだ』
まさかそんなパーティーがあったのかと、双子までもが目を見開き驚いている。
佑に至っては言葉を失っている始末だ。
テオは自分の妹が主催者であると察し、表情を強張らせていた。
『それで、そこに参加するために必要なものはあるかね? 警備の方は?』
マルコに促され、片方が話す。
『毎回開催される場所は違っていて、会場に入るには招待状を見せる必要がある。顔が分からないのは当たり前だが、招待状に目と髪の色、身長が書かれてある。それをチェックされたあとは特に問題ない。あと、ドレスコードがあって男は全員タキシードだ』
『ふむ……。二人とも黒髪に……一人はブルーアイで一人はブラウンアイか。適任の者はいるかね?』
マルコが振り返り、全員がそれぞれの髪と目の色を確認する。
『僕らは金髪だからダメだね。辛うじてマティアスの髪が濃いブラウンだけど……。タスクも純粋な黒髪じゃないよね』
適任ではないような言われ方をされたが、佑はどうしても自分で乗り込まないと気が済まない。
すぐに解決策を思いつき、提案する。
『髪を染めればいい。その辺の店に、一時的に染められるカラーワックスがあるだろう』
『じゃあ、俺も髪を染める。あのクズに引導を渡すのが他人では申し訳ない』
すかさずテオも立候補し、モデル二人と身長がそれほど変わらない事を確認する。
『じゃあ、君たちは仮面とタキシード、招待状を我々に渡して、どこへなりとも好きに行きなさい。私は今回の事を追求しない。礼はタスクにしてもらうつもりだからな』
マルコに言われ、イタリア人モデル二人は胸を撫で下ろす。
『ではタスク、それと……君はテオ? 急いで着替えてきなさい。私はしかるべき所に連絡をし、車の手配もしておこう』
『恩に着ます』
佑は頭を下げ、話はあとだと言わんばかりにモデルに向かって顎をしゃくった。
彼らが宿泊している部屋に入り、テオと二人でタキシードのサイズを確認する。
その間に護衛たちがボウネス内を駆け回り、すぐにカラーワックスを手に入れて戻って来た。
マルコは友人であるイギリス警察の上層部に連絡をし、すみやかに、だが秘密裏に動いてもらう。
かくして黒髪の佑とテオができあがり、二人はエミリアの別荘へ向かった。
時刻は二十時すぎになっており、空は暗い。
焦りばかりが募り、佑はマスクの下で顔を強張らせていた。
残る者は離れた場所に待機し、中に入った二人が合図をするまで、警察と共に待機する手はずになっている。
エミリアの別荘は土地が広く、参加者の他に誰も立ち入る雰囲気がない。
一目で高級と分かる車が次々に停まり、中から仮面をつけた人々が談笑しながら別荘に入ってゆく。
時間を見て、佑は車のドアを開けた。
『行こう、テオ』
『……本当にすまない』
『すべては香澄をちゃんと取り戻してからだ』
小声で言葉を交わし、二人は招待状を手にゆっくり別荘に向かった。
別荘内ではすでに大音量で音楽が流され、中で人々が騒いでいる。
歩幅が大きくなりそうになったが、不審がられてはいけないと、必至に己を律する。
別荘に入ってすぐにエミリアとおぼしき女性の姿は認めた。
しかし香澄が見つからないのに正体がバレては話にならないので、酒を飲む振りをして各部屋を歩き回る事にした。
『アジア人なら体格ですぐ分かりそうなものだが……』
ボソリと呟いたテオに、佑は溜め息をつく。
『どこかに監禁しているのかもしれない』
二人はゆったりと別荘の中を歩きまわり、護衛が守りそれ以上奥に行けない場所以外はあらかた見た。
馬鹿騒ぎに苛立ちながら一時間ほど経った頃――。
『おい……』
どこからか喘ぎ声が聞こえ、ギョッとしたテオが佑を肘でつついた。
さりげなくそちらを見れば、人が大勢いるというのに、ドレスの上半身をはだけさせた女性がスカートをたくし上げ、男性に口淫させていた。
それを見た佑は、嫌悪を覚える。
改めて周りを見てみれば、踊っている者に紛れ、濃厚なキスを交わしている者が目立ち始めた。
十分もしない内にあちこちから肌がぶつかり合う音が聞こえ、男女のはばからない声が響きだす。
まさかそんなパーティーがあったのかと、双子までもが目を見開き驚いている。
佑に至っては言葉を失っている始末だ。
テオは自分の妹が主催者であると察し、表情を強張らせていた。
『それで、そこに参加するために必要なものはあるかね? 警備の方は?』
マルコに促され、片方が話す。
『毎回開催される場所は違っていて、会場に入るには招待状を見せる必要がある。顔が分からないのは当たり前だが、招待状に目と髪の色、身長が書かれてある。それをチェックされたあとは特に問題ない。あと、ドレスコードがあって男は全員タキシードだ』
『ふむ……。二人とも黒髪に……一人はブルーアイで一人はブラウンアイか。適任の者はいるかね?』
マルコが振り返り、全員がそれぞれの髪と目の色を確認する。
『僕らは金髪だからダメだね。辛うじてマティアスの髪が濃いブラウンだけど……。タスクも純粋な黒髪じゃないよね』
適任ではないような言われ方をされたが、佑はどうしても自分で乗り込まないと気が済まない。
すぐに解決策を思いつき、提案する。
『髪を染めればいい。その辺の店に、一時的に染められるカラーワックスがあるだろう』
『じゃあ、俺も髪を染める。あのクズに引導を渡すのが他人では申し訳ない』
すかさずテオも立候補し、モデル二人と身長がそれほど変わらない事を確認する。
『じゃあ、君たちは仮面とタキシード、招待状を我々に渡して、どこへなりとも好きに行きなさい。私は今回の事を追求しない。礼はタスクにしてもらうつもりだからな』
マルコに言われ、イタリア人モデル二人は胸を撫で下ろす。
『ではタスク、それと……君はテオ? 急いで着替えてきなさい。私はしかるべき所に連絡をし、車の手配もしておこう』
『恩に着ます』
佑は頭を下げ、話はあとだと言わんばかりにモデルに向かって顎をしゃくった。
彼らが宿泊している部屋に入り、テオと二人でタキシードのサイズを確認する。
その間に護衛たちがボウネス内を駆け回り、すぐにカラーワックスを手に入れて戻って来た。
マルコは友人であるイギリス警察の上層部に連絡をし、すみやかに、だが秘密裏に動いてもらう。
かくして黒髪の佑とテオができあがり、二人はエミリアの別荘へ向かった。
時刻は二十時すぎになっており、空は暗い。
焦りばかりが募り、佑はマスクの下で顔を強張らせていた。
残る者は離れた場所に待機し、中に入った二人が合図をするまで、警察と共に待機する手はずになっている。
エミリアの別荘は土地が広く、参加者の他に誰も立ち入る雰囲気がない。
一目で高級と分かる車が次々に停まり、中から仮面をつけた人々が談笑しながら別荘に入ってゆく。
時間を見て、佑は車のドアを開けた。
『行こう、テオ』
『……本当にすまない』
『すべては香澄をちゃんと取り戻してからだ』
小声で言葉を交わし、二人は招待状を手にゆっくり別荘に向かった。
別荘内ではすでに大音量で音楽が流され、中で人々が騒いでいる。
歩幅が大きくなりそうになったが、不審がられてはいけないと、必至に己を律する。
別荘に入ってすぐにエミリアとおぼしき女性の姿は認めた。
しかし香澄が見つからないのに正体がバレては話にならないので、酒を飲む振りをして各部屋を歩き回る事にした。
『アジア人なら体格ですぐ分かりそうなものだが……』
ボソリと呟いたテオに、佑は溜め息をつく。
『どこかに監禁しているのかもしれない』
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馬鹿騒ぎに苛立ちながら一時間ほど経った頃――。
『おい……』
どこからか喘ぎ声が聞こえ、ギョッとしたテオが佑を肘でつついた。
さりげなくそちらを見れば、人が大勢いるというのに、ドレスの上半身をはだけさせた女性がスカートをたくし上げ、男性に口淫させていた。
それを見た佑は、嫌悪を覚える。
改めて周りを見てみれば、踊っている者に紛れ、濃厚なキスを交わしている者が目立ち始めた。
十分もしない内にあちこちから肌がぶつかり合う音が聞こえ、男女のはばからない声が響きだす。
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