【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

文字の大きさ
上 下
435 / 1,559
第八部・イギリス捜索 編

河野の考察

しおりを挟む
「それならば、闇パーティーのようなものが開かれると考えていいでしょう。ギャラリーがいなければエミリア氏の欲望は叶えられません。このままロンドンの〝表〟で人捜しをしても、赤松さんは見つかりません。〝裏〟のネットワークで闇パーティーが開かれないか情報を集める必要があります」

「分かった」

 自分たちが焦りのあまり、見当違いの努力をしていた事を自覚し、ドッと疲れが押し寄せる。

 河野は「糖分を摂取します」と言って、お茶菓子のチョコレートを口に放り込んだ。
 それを食べ終えたあと、彼はもう一つの事実を付け加える。

「医者の準備をした方がいいでしょう」
「医者?」

 ギクリとして尋ねると、やはり河野は淡々と答える。

「赤松さんはお人好しで人をすぐ信じます。美点であるか欠点であるかは置いておきましょう。エミリア氏が彼女を酷い目に遭わせようとしているとして、それに気付けないほど鈍感でもないと思うのです。彼女は社長の隣にいる女性だからこそ、特に他の女性からの悪意に敏感になっていると思います」

「確かに……」

「マティアス氏にレイプされたと思い込み、同性のエミリア氏が唯一の味方というように振る舞い、彼女を頼り縋るでしょう。いつまで動揺したままかは分かりませんが、長時間のフライトを経て、イギリスに来てからもかなりの日数が経っています。その中で冷静さを取り戻せない赤松さんではないと思うのです。初対面の相手を信じて海外まで着いてきてしまっていいのか、簡単に辞職願を書いたが良かったのか。私の知る彼女なら、深く考え悩むと思います」

「そう……、だな」

 確かに香澄は流されやすい。

 しかし自分で考える事をすぐに放棄する女性ではない。

 流されて長いものに巻かれる性格なら、今頃佑は思うままに可愛がっていただろう。
 好きに遊んで楽しく過ごし、笑顔で佑を迎え癒やす、そんな存在になっていたかもしれない。

 それをよしとしなかったのが、香澄自身の強い意志だ。

「思い直したなら、どんな手段を使ってでも社長に連絡をしたでしょう。しかししなかった。やろうと思えば、エミリア氏のスマホを借りるなり、英語を話せるので事情を話して誰かに電話を借りて、社長に連絡をして迎えに来てもらうぐらい簡単なのです」

「ああ、そう思う」

「裏を返せば、それができなかったのです。通信手段がない。または使えない状況にあった。最悪を想定すれば、エミリア氏に何らかの薬物を飲まされ、正常な思考を奪われた可能性もあります。それならば、エミリア氏が本能を出しても逃げ出せず、連れ回されても逃げられないと言われても納得できます」

 薬物と言われ、佑はぞくりと鳥肌を立てた。

「赤松さんはChief Everyの第二秘書をこなす能力のある、しっかりとした大人の女性です。機転が利き、語学力もあります。それなのに社長に連絡一つよこさず姿をくらましたままというのは、少し考えにくいのです。幾らショックを受けていても、彼女がそこまで恩知らずな女性とは思えません」

「そうだな……」

 佑も最悪は想定していたつもりだった。
 だが本心では考えたくなく、現実的な可能性を脳裏に思い浮かべる事すら拒絶していた。

「香澄は……自力でものを考えられず、身動きが取れない状況にあると思っていいだろう。最悪、それを想定して動く」

「はい」

「仮に闇パーティーが行われるとして、集まる者はヒースロー空港を使うだろう。エミリアの知り合いなら、上流階級でロンドンの高級ホテルに泊まる確率も高い。マルコの力も借りて、セレブで少し黒い噂のある者がロンドンに来ていないか聞いてみる」

「承知致しました」

 佑は立ち上がり、すぐにホテルのロビーにマルコを探しに行く事にする。

 河野という援軍を得て、かなり頭の中は冷静になった。

 松井に感謝し、佑はエレベーターのボタンを押した。





 いつも佑がロビーでマルコを見るのは、十八時を回った頃だ。

 バカンスの予定を孫娘の出産のためにとったと言っていたが、祖父という立場にもなれば、ナーバスになっている孫娘にできる事も少ないのだろう。

 彼と話していた時、『男親や祖父なんてものは、いざという時に求められないものだな』と少し寂しそうに笑っていたのを覚えている。

 それでも昼間は孫娘が入院している病院に向かい、妊婦が口にしても大丈夫な物などを届けているらしい。

 そんな彼は、暇があればホテルのロビーで世界中から訪れる客と会話を楽しんでいる。
 その中で、黒い噂のあるセレブがいてもおかしくない。
しおりを挟む
感想 560

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜

青花美来
恋愛
「……三年前、一緒に寝た間柄だろ?」 三年前のあの一夜のことは、もう過去のことのはずなのに。 一夜の過ちとして、もう忘れたはずなのに。 「忘れたとは言わせねぇぞ?」 偶然再会したら、心も身体も翻弄されてしまって。 「……今度こそ、逃がすつもりも離すつもりもねぇから」 その溺愛からは、もう逃れられない。 *第16回恋愛小説大賞奨励賞受賞しました*

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。 その肩書きに恐れをなして逃げた朝。 もう関わらない。そう決めたのに。 それから一ヶ月後。 「鮎原さん、ですよね?」 「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」 「僕と、結婚してくれませんか」 あの一夜から、溺愛が始まりました。

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...