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第八部・イギリス捜索 編
彼女の狂気
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勿論、なぜこうなったかなど、考えられるはずもなかった。
何も考えられない。ゆえに何も疑えない。
自分がどうして〝ここ〟にいるのかすら分からない。
ただ一つ分かっているのは、頼れるのはエミリア一人だけという事だ。
エミリアは香澄に肩を貸し、再度ベッドに横にさせる。
そして彼女の髪を撫で、息をついて微笑んだ。
『……数日ここにいて、落ち着いたら別荘に移動しましょうか』
『ん……』
うまく返事ができない香澄に、エミリアは姉のように言い聞かせる。
『きっと色々な疲れがドッと出てしまったのよ。ゆっくり休みなさい。食事はすべてルームサービスにするから大丈夫。私も側にいてあげるから、安心して』
そのあと、朝食が用意されるまで香澄は横になったまま待つ事にした。
これから食事をとらなければいけないのに、目を閉じるとあっという間に眠りの淵に引き込まれていった。
香澄が深い寝息を立てるのを見て、エミリアは気だるげに髪を掻き上げた。
そして先ほどまでの温かみをいっさい失った声で呟く。
『困った子ね。まだこんな元気があるのね』
それに応えたのは、寝室内に控えていたエミリアの護衛だ。
『ドクターが出した薬はかなり強い向精神薬です。昨晩からそれほど投与していませんが、これだけ意識を奪えれば十分でしょう』
それにエミリアは乱暴な息をつく。
『まぁ、眠りっぱなしになって意識が混濁してくれれば、それでいいんだけれど』
エミリアは香澄がどうなってもいいと考えている一方で、護衛の方が彼女の体を心配しているようだった。
『ですが投与しすぎると、副作用の心配があります。動けなくさせ、眠気で思考を奪うのが目的でしょうが、あまり飲ませすぎると喉の渇きから水中毒になる可能性もあります。そうなれば死の危険性もあり……』
護衛はどこか気の毒そうに香澄を見やり、事前に医師から説明を受けたらしい副作用を述べてゆく。
だがエミリアは護衛の心配など歯牙にも掛けず、逆に面白そうに口端をつり上げた。
『おまけに副作用で母乳も出るんですって? あら、孕んでいないから母乳って言わないわね。出た時は吸ってみたら?』
エミリアに話を振られ、護衛は曖昧に微笑んでごまかす。
彼女は彼の返事を待たず、異様な熱の籠もる目で香澄を見た。
『別にどうなってもいいわ。〝パーティー〟で皆さんに喜んでもらったあとは、誰かに下げ渡すつもりだもの。カイだって大勢の精液を注がれた豚なんてもういらないでしょう? さすがのアロクラだって〝ナシ〟だと言って笑うと思うわ。そう言えばあの二人、クリームパイネタのアダルトビデオが好きだったっけ。動画を撮ってあげるのもいいわね』
海外で言うクリームパイというのは、中出しの意味だ。
エミリアは美しく微笑んだまま聞くもおぞましい言葉を口にし、香澄の頭を撫でた。
『いい子ね。そのまま意識をなくした肉人形になりなさい。弛緩して締まりがなくても、孔さえあれば喜ぶ変態は大勢いるわ。あなたのためにいやらしい衣装を用意してあげるから楽しみにしていてね? あなたが〝パーティー〟の主役よ』
半開きになった香澄の口端からは、細い糸が引いていた。
それを見てエミリアは手を打ち鳴らし、狂ったように笑う。
『やだぁ! あはははははは!! 見て! この子涎を垂らして寝ているわ! 汚ぁい!』
そんな彼女を、護衛は引き攣った表情で見守るしかできない。
『フラウ……』
エミリアに声を掛けようとした護衛を、それまでご機嫌で笑っていたエミリアがピシャッと叱った。
『フラウって言わないで! イギリス貴族のようにレディと言いなさいと言ったでしょう! いつになったら覚えるの! このバカ!』
癇癪を起こす彼女に、護衛は従順に頭を下げる。
『申し訳ございません』
無抵抗な護衛に、ベッドに腰掛けたエミリアは指を突きつけ尊大な態度で告げた。
『あなた達が必要としている莫大な保険金は、私の祖父が握っているという事を忘れないで。それに私に忠誠を誓っているんでしょう? 美しい私に従いたいんでしょう?』
試すように尋ねたあと、エミリアは大きく脚を広げ、ガウンのリボンをスルリと引いた。
シルクのガウンの下には、何も纏っていない。
生地の間から覗く白い肌を見て、護衛は生唾を呑み込み目に欲を宿す。
そんな彼に、嘲るように笑ったエミリアが命じる。
『舐めなさい。犬みたいに跪いて主人を慰めるのよ。嬉しいでしょう?』
その屈辱的な命令を、護衛は顔色を変えずに受け入れた。
『光栄です。レディ・エミリア』
彼は床に膝を着き、エミリアの太腿を開かせて彼女の秘部に顔を埋める。
すぐにピチャピチャという水音が聞こえ、エミリアはうっとりと微笑んだ。
何も考えられない。ゆえに何も疑えない。
自分がどうして〝ここ〟にいるのかすら分からない。
ただ一つ分かっているのは、頼れるのはエミリア一人だけという事だ。
エミリアは香澄に肩を貸し、再度ベッドに横にさせる。
そして彼女の髪を撫で、息をついて微笑んだ。
『……数日ここにいて、落ち着いたら別荘に移動しましょうか』
『ん……』
うまく返事ができない香澄に、エミリアは姉のように言い聞かせる。
『きっと色々な疲れがドッと出てしまったのよ。ゆっくり休みなさい。食事はすべてルームサービスにするから大丈夫。私も側にいてあげるから、安心して』
そのあと、朝食が用意されるまで香澄は横になったまま待つ事にした。
これから食事をとらなければいけないのに、目を閉じるとあっという間に眠りの淵に引き込まれていった。
香澄が深い寝息を立てるのを見て、エミリアは気だるげに髪を掻き上げた。
そして先ほどまでの温かみをいっさい失った声で呟く。
『困った子ね。まだこんな元気があるのね』
それに応えたのは、寝室内に控えていたエミリアの護衛だ。
『ドクターが出した薬はかなり強い向精神薬です。昨晩からそれほど投与していませんが、これだけ意識を奪えれば十分でしょう』
それにエミリアは乱暴な息をつく。
『まぁ、眠りっぱなしになって意識が混濁してくれれば、それでいいんだけれど』
エミリアは香澄がどうなってもいいと考えている一方で、護衛の方が彼女の体を心配しているようだった。
『ですが投与しすぎると、副作用の心配があります。動けなくさせ、眠気で思考を奪うのが目的でしょうが、あまり飲ませすぎると喉の渇きから水中毒になる可能性もあります。そうなれば死の危険性もあり……』
護衛はどこか気の毒そうに香澄を見やり、事前に医師から説明を受けたらしい副作用を述べてゆく。
だがエミリアは護衛の心配など歯牙にも掛けず、逆に面白そうに口端をつり上げた。
『おまけに副作用で母乳も出るんですって? あら、孕んでいないから母乳って言わないわね。出た時は吸ってみたら?』
エミリアに話を振られ、護衛は曖昧に微笑んでごまかす。
彼女は彼の返事を待たず、異様な熱の籠もる目で香澄を見た。
『別にどうなってもいいわ。〝パーティー〟で皆さんに喜んでもらったあとは、誰かに下げ渡すつもりだもの。カイだって大勢の精液を注がれた豚なんてもういらないでしょう? さすがのアロクラだって〝ナシ〟だと言って笑うと思うわ。そう言えばあの二人、クリームパイネタのアダルトビデオが好きだったっけ。動画を撮ってあげるのもいいわね』
海外で言うクリームパイというのは、中出しの意味だ。
エミリアは美しく微笑んだまま聞くもおぞましい言葉を口にし、香澄の頭を撫でた。
『いい子ね。そのまま意識をなくした肉人形になりなさい。弛緩して締まりがなくても、孔さえあれば喜ぶ変態は大勢いるわ。あなたのためにいやらしい衣装を用意してあげるから楽しみにしていてね? あなたが〝パーティー〟の主役よ』
半開きになった香澄の口端からは、細い糸が引いていた。
それを見てエミリアは手を打ち鳴らし、狂ったように笑う。
『やだぁ! あはははははは!! 見て! この子涎を垂らして寝ているわ! 汚ぁい!』
そんな彼女を、護衛は引き攣った表情で見守るしかできない。
『フラウ……』
エミリアに声を掛けようとした護衛を、それまでご機嫌で笑っていたエミリアがピシャッと叱った。
『フラウって言わないで! イギリス貴族のようにレディと言いなさいと言ったでしょう! いつになったら覚えるの! このバカ!』
癇癪を起こす彼女に、護衛は従順に頭を下げる。
『申し訳ございません』
無抵抗な護衛に、ベッドに腰掛けたエミリアは指を突きつけ尊大な態度で告げた。
『あなた達が必要としている莫大な保険金は、私の祖父が握っているという事を忘れないで。それに私に忠誠を誓っているんでしょう? 美しい私に従いたいんでしょう?』
試すように尋ねたあと、エミリアは大きく脚を広げ、ガウンのリボンをスルリと引いた。
シルクのガウンの下には、何も纏っていない。
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そんな彼に、嘲るように笑ったエミリアが命じる。
『舐めなさい。犬みたいに跪いて主人を慰めるのよ。嬉しいでしょう?』
その屈辱的な命令を、護衛は顔色を変えずに受け入れた。
『光栄です。レディ・エミリア』
彼は床に膝を着き、エミリアの太腿を開かせて彼女の秘部に顔を埋める。
すぐにピチャピチャという水音が聞こえ、エミリアはうっとりと微笑んだ。
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