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第八部・イギリス捜索 編
殺意の行方 ★
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『カイ! カスミさんを私の部屋に!』
『は!? 俺たちの部屋に連れて行くに決まってるだろ!!』
エミリアに指図され、佑は青筋を浮かべて怒鳴り返す。
だが、エミリアに頬を強く叩かれた。
『しっかりして! レイプされたっていうのに、側に男性がいて落ち着くとでも思っているの? それにあなたは、今の彼女が一番〝会いたくない人〟でしょう? 彼女の気持ちも考えてあげて』
ハッキリと〝会いたくない人〟と言われ、佑の胸にズキンと痛みが走る。
ショックを受けて固まっている間に、エミリアは香澄のお腹の前でベルトを結び、肩を貸して立たせる。
しかしそれに佑が手を貸そうとして香澄に触れた瞬間、彼女がまた暴れ出した。
「離して! 離してえええぇええぇっ!!」
これほどまでの、女性の絶叫を聞いた事がない。
あまりに可哀相で、ショックで、佑は涙を流していた。
『いいから! カイはここにいて!』
また怒鳴られ、香澄はエミリアに連れられて彼女の部屋に連れて行かれる。
途中まで二人を追った佑は、呆然と廊下に立ち尽くす。
大切なものがたやすく傷つけられ、奪われた喪失感と悲しみ、激しい怒りで、胃の奥がおかしくなって吐き気すらこみ上げる。
そして佑は酷い顔色で振り向く。
視線の先には――、マティアス。
お気に入りの香澄を傷つけられたのに、なぜ双子は騒がないのかという疑問すら抱けないでいた。
佑はヘーゼルの目を見開き、呼吸を荒くしたまま拳を握る。
一歩踏み出し、双子が「待て」「落ち着け」と腕を引っ張り、羽交い締めするのを、渾身の力で振り払った。
「よくも……!!」
その時、彼の中にあったのは純粋な怒りと憎しみ、殺意だった。
この一撃で死ねばいいのに、と思い、彼は思いきりマティアスの顔を殴りつけた。
「っっ――――」
右拳の衝撃と痛みと共に、涙がとめどなく溢れる。
――香澄のショックは、こんなもんじゃないはずだ。
無表情で二発目を振りかぶった時、双子によって関節を決められた。
「待て! タスク、待てったら!」
「殺す気か!?」
頭の一部が焼き切れた佑は、激しい目でマティアスを睨み、吠える。
「殺してやる!!」
佑は涙を流し、咆哮した。
〝世界の御劔〟と呼ばれる誰もが憧れるセレブが、「殺してやる」と口走る。
双子に押さえられ、仕立てのいいスーツが破れようが構わず、マティアスに一矢報いようとして激しく暴れた。
同じフロアに宿泊する客が、廊下に出て迷惑そうな顔をするなか、佑は双子に部屋まで引きずられていった。
部屋に押し込まれた佑は目から光を失い、ぼんやりと立ち尽くす。
そのと突然口元を押さえたかと思うと、洗面所に駆け込んで便器に顔を突っ込んだ。
こみ上げたものをすべて吐き出し、涙も流す。
胃の中にあった物がすべて出たと思うのに、胸の奥でとぐろを巻いている黒い感情は出てくれない。
あらかた吐き出して座り込んでいると、便器の中身が自動で流れていった。
トイレットペーパーで鼻をかみ、涙を拭っていると、後ろから声がした。
「ホラ、これ飲めよ」
アロイスが水のペットボトルを手渡してくる。
礼も言わず受け取ったあと、佑はボトルの半分ぐらいまで水を飲む。
力なく洗面所の壁にもたれ掛かった佑は、かすれた声で尋ねた。
「……誰にも知られずあいつを消すには、どうすればいい」
暗い炎の灯った声で呟くと、クラウスが溜め息をつく。
「タスク、頭冷やせ。マティアスの性格は知ってるだろ。こういうとアレだけど、あいつは僕たちよりずっと思慮深い。理由がなくてあんな事すると思うか?」
「俺の部屋から香澄を連れ出して犯した。それ以上の事実があるか? どうやって殺せばいい?」
「まず殺すから思考を離せ。話はそれからだ」
こんな事態に陥ったというのに、いつもとは違って冷静さを貫いている双子が、だんだん憎らしくなってきた。
壁に背中を預け、佑は射殺しそうな目で双子を睨み上げた。
『は!? 俺たちの部屋に連れて行くに決まってるだろ!!』
エミリアに指図され、佑は青筋を浮かべて怒鳴り返す。
だが、エミリアに頬を強く叩かれた。
『しっかりして! レイプされたっていうのに、側に男性がいて落ち着くとでも思っているの? それにあなたは、今の彼女が一番〝会いたくない人〟でしょう? 彼女の気持ちも考えてあげて』
ハッキリと〝会いたくない人〟と言われ、佑の胸にズキンと痛みが走る。
ショックを受けて固まっている間に、エミリアは香澄のお腹の前でベルトを結び、肩を貸して立たせる。
しかしそれに佑が手を貸そうとして香澄に触れた瞬間、彼女がまた暴れ出した。
「離して! 離してえええぇええぇっ!!」
これほどまでの、女性の絶叫を聞いた事がない。
あまりに可哀相で、ショックで、佑は涙を流していた。
『いいから! カイはここにいて!』
また怒鳴られ、香澄はエミリアに連れられて彼女の部屋に連れて行かれる。
途中まで二人を追った佑は、呆然と廊下に立ち尽くす。
大切なものがたやすく傷つけられ、奪われた喪失感と悲しみ、激しい怒りで、胃の奥がおかしくなって吐き気すらこみ上げる。
そして佑は酷い顔色で振り向く。
視線の先には――、マティアス。
お気に入りの香澄を傷つけられたのに、なぜ双子は騒がないのかという疑問すら抱けないでいた。
佑はヘーゼルの目を見開き、呼吸を荒くしたまま拳を握る。
一歩踏み出し、双子が「待て」「落ち着け」と腕を引っ張り、羽交い締めするのを、渾身の力で振り払った。
「よくも……!!」
その時、彼の中にあったのは純粋な怒りと憎しみ、殺意だった。
この一撃で死ねばいいのに、と思い、彼は思いきりマティアスの顔を殴りつけた。
「っっ――――」
右拳の衝撃と痛みと共に、涙がとめどなく溢れる。
――香澄のショックは、こんなもんじゃないはずだ。
無表情で二発目を振りかぶった時、双子によって関節を決められた。
「待て! タスク、待てったら!」
「殺す気か!?」
頭の一部が焼き切れた佑は、激しい目でマティアスを睨み、吠える。
「殺してやる!!」
佑は涙を流し、咆哮した。
〝世界の御劔〟と呼ばれる誰もが憧れるセレブが、「殺してやる」と口走る。
双子に押さえられ、仕立てのいいスーツが破れようが構わず、マティアスに一矢報いようとして激しく暴れた。
同じフロアに宿泊する客が、廊下に出て迷惑そうな顔をするなか、佑は双子に部屋まで引きずられていった。
部屋に押し込まれた佑は目から光を失い、ぼんやりと立ち尽くす。
そのと突然口元を押さえたかと思うと、洗面所に駆け込んで便器に顔を突っ込んだ。
こみ上げたものをすべて吐き出し、涙も流す。
胃の中にあった物がすべて出たと思うのに、胸の奥でとぐろを巻いている黒い感情は出てくれない。
あらかた吐き出して座り込んでいると、便器の中身が自動で流れていった。
トイレットペーパーで鼻をかみ、涙を拭っていると、後ろから声がした。
「ホラ、これ飲めよ」
アロイスが水のペットボトルを手渡してくる。
礼も言わず受け取ったあと、佑はボトルの半分ぐらいまで水を飲む。
力なく洗面所の壁にもたれ掛かった佑は、かすれた声で尋ねた。
「……誰にも知られずあいつを消すには、どうすればいい」
暗い炎の灯った声で呟くと、クラウスが溜め息をつく。
「タスク、頭冷やせ。マティアスの性格は知ってるだろ。こういうとアレだけど、あいつは僕たちよりずっと思慮深い。理由がなくてあんな事すると思うか?」
「俺の部屋から香澄を連れ出して犯した。それ以上の事実があるか? どうやって殺せばいい?」
「まず殺すから思考を離せ。話はそれからだ」
こんな事態に陥ったというのに、いつもとは違って冷静さを貫いている双子が、だんだん憎らしくなってきた。
壁に背中を預け、佑は射殺しそうな目で双子を睨み上げた。
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