374 / 1,549
第八部・イギリス捜索 編
事前協力
しおりを挟む
「いってぇ!」
「仁王のグーパン!」
「ぶふっ、それ!」
双子のやり取りを聞いて、佑は眉間に皺を寄せながら疑問に思い、すぐに思い当たった。
どうやら大学生時代の地中海クルーズでの事件を揶揄してそう呼ばれているようだ。
(ガキ臭い……)
大きな溜め息をつくが、今に始まった事ではない。
佑は香澄が着替えて下りてくるまで玄関ホールのソファに座り、話題を変える。
「……で? 彼女はいつ来ると?」
「ああ、エミね。今週内には来るって言ってたよ」
「……まぁ、エミリアなら常識人だから、香澄を心配させる言動をしないと思っているが……」
「カスミがジェラシーしないか気にしてるんでしょ? 僕らだって分かってるよ。フォローするから心配するなって」
頼もしいのだかそうじゃないのだか分からないが、一応安心する。
「俺は香澄のフォローに徹するから、彼女の事はお前らに任せる」
「オッケー。でもタスク、何でエミのこと愛称で呼ばないの?」
「……少しでも親しげな気配を見せたら、香澄が心配するだろうが」
佑の返事に、双子は「そんな事で?」という顔で肩をすくめた。
「そうだ、タスク。協力代として、ワインセラーにあったアレッサンドラ1988飲んだから」
「は!?」
ワインセラーに大事に寝かせておいた、イタリアトスカーナの当たり年のワインを飲んだと言われ、佑の目が点になる。
「あと、冷蔵庫にあったチーズももらった」
「…………」
佑はぐしゃりと前髪ごと顔を覆い、盛大な溜め息をつく。
「……しっかり協力しろよ?」
なくなった物は仕方がないと割り切り、だが恨みがましい目で双子を睨む。
すると二人は「勿論!」と信用ならない無邪気な笑みを浮かべるのだった。
その時、階段を下りる足音が聞こえ、踊り場に姿を現した香澄が「あれっ?」と声を上がる。
「やだ。佑さん、着替えてなかったの? ごめんなさい」
「いいよ。俺もすぐ着替えるから、二人でシャワーに入ろう」
「ちょっ、何で!?」
「俺がシャワー浴びてる間に、香澄に何かあったら困る。二人で入った方が時間のロスもないだろう」
それはそうなのだが、双子がいる前で「いちゃいちゃする」と同義の事を言わないでほしい。
「サカるなよ? タスク」
「言っとくけど、僕たちがいる期間にセックスしたら、僕らにも考えがあるからね? 初日のアレは見逃すけど」
「言ってろ。ここは俺の家だ」
じろりと双子を睨んでから、佑は鞄を持って二階に上がっていった。
香澄は階段を上がっていった佑を見送ってから、双子に声を掛ける。
「お茶淹れますか? グリーンティーのほう」
「あ、や。別に気ぃ遣わなくていいよ?」
「そうそう。喉渇いたら勝手に何か飲んでるし」
「はぁ……」
香澄は双子にリビングに連れて行かれ、ソファに座らされる。
その向かいに、もはや自宅のようにくつろいだ様子で二人が腰掛けた。
「日本の水ってうまいよね。札幌行った時、水道水でもめっちゃ美味かった。やっぱ軟水だからかな」
「そうですね。普通に蛇口をひねって、そのお水を飲めたりお料理できるのは、幸福な事だと思います」
いつもの双子を見て、香澄は明野の申し出を断って良かったと心の中で自分を褒めた。
幾ら双子がとてもタフでも、煩わせる事があってはいけない。
双子にかかれば明野など秒殺だろうが、お互いのために深く関わらなくて正解なのだ。
(もし私が佑さんと知り合わないままで、お二人と知り合う機会があったとしても、まず近付こうと思わないけどな……)
とんでもない額の収入がある人で、ドイツの由緒ある家系出身で、本人たちも有名ブランドのデザイナーで経営者。
おまけに性格が破綻している。
そんな人に下手に関わったら、まず身の破滅だ。
普通なら軽く遊ばれた上で捨てられ、女性だけが入れあげて傷付く。
その過程でもし妊娠するような事があれば、一大事だ。
(……まぁ、お二人ならそういうミスはしないだろうけど)
「仁王のグーパン!」
「ぶふっ、それ!」
双子のやり取りを聞いて、佑は眉間に皺を寄せながら疑問に思い、すぐに思い当たった。
どうやら大学生時代の地中海クルーズでの事件を揶揄してそう呼ばれているようだ。
(ガキ臭い……)
大きな溜め息をつくが、今に始まった事ではない。
佑は香澄が着替えて下りてくるまで玄関ホールのソファに座り、話題を変える。
「……で? 彼女はいつ来ると?」
「ああ、エミね。今週内には来るって言ってたよ」
「……まぁ、エミリアなら常識人だから、香澄を心配させる言動をしないと思っているが……」
「カスミがジェラシーしないか気にしてるんでしょ? 僕らだって分かってるよ。フォローするから心配するなって」
頼もしいのだかそうじゃないのだか分からないが、一応安心する。
「俺は香澄のフォローに徹するから、彼女の事はお前らに任せる」
「オッケー。でもタスク、何でエミのこと愛称で呼ばないの?」
「……少しでも親しげな気配を見せたら、香澄が心配するだろうが」
佑の返事に、双子は「そんな事で?」という顔で肩をすくめた。
「そうだ、タスク。協力代として、ワインセラーにあったアレッサンドラ1988飲んだから」
「は!?」
ワインセラーに大事に寝かせておいた、イタリアトスカーナの当たり年のワインを飲んだと言われ、佑の目が点になる。
「あと、冷蔵庫にあったチーズももらった」
「…………」
佑はぐしゃりと前髪ごと顔を覆い、盛大な溜め息をつく。
「……しっかり協力しろよ?」
なくなった物は仕方がないと割り切り、だが恨みがましい目で双子を睨む。
すると二人は「勿論!」と信用ならない無邪気な笑みを浮かべるのだった。
その時、階段を下りる足音が聞こえ、踊り場に姿を現した香澄が「あれっ?」と声を上がる。
「やだ。佑さん、着替えてなかったの? ごめんなさい」
「いいよ。俺もすぐ着替えるから、二人でシャワーに入ろう」
「ちょっ、何で!?」
「俺がシャワー浴びてる間に、香澄に何かあったら困る。二人で入った方が時間のロスもないだろう」
それはそうなのだが、双子がいる前で「いちゃいちゃする」と同義の事を言わないでほしい。
「サカるなよ? タスク」
「言っとくけど、僕たちがいる期間にセックスしたら、僕らにも考えがあるからね? 初日のアレは見逃すけど」
「言ってろ。ここは俺の家だ」
じろりと双子を睨んでから、佑は鞄を持って二階に上がっていった。
香澄は階段を上がっていった佑を見送ってから、双子に声を掛ける。
「お茶淹れますか? グリーンティーのほう」
「あ、や。別に気ぃ遣わなくていいよ?」
「そうそう。喉渇いたら勝手に何か飲んでるし」
「はぁ……」
香澄は双子にリビングに連れて行かれ、ソファに座らされる。
その向かいに、もはや自宅のようにくつろいだ様子で二人が腰掛けた。
「日本の水ってうまいよね。札幌行った時、水道水でもめっちゃ美味かった。やっぱ軟水だからかな」
「そうですね。普通に蛇口をひねって、そのお水を飲めたりお料理できるのは、幸福な事だと思います」
いつもの双子を見て、香澄は明野の申し出を断って良かったと心の中で自分を褒めた。
幾ら双子がとてもタフでも、煩わせる事があってはいけない。
双子にかかれば明野など秒殺だろうが、お互いのために深く関わらなくて正解なのだ。
(もし私が佑さんと知り合わないままで、お二人と知り合う機会があったとしても、まず近付こうと思わないけどな……)
とんでもない額の収入がある人で、ドイツの由緒ある家系出身で、本人たちも有名ブランドのデザイナーで経営者。
おまけに性格が破綻している。
そんな人に下手に関わったら、まず身の破滅だ。
普通なら軽く遊ばれた上で捨てられ、女性だけが入れあげて傷付く。
その過程でもし妊娠するような事があれば、一大事だ。
(……まぁ、お二人ならそういうミスはしないだろうけど)
43
お気に入りに追加
2,546
あなたにおすすめの小説
『逃れられない淫らな三角関係』番外編 ヘルプラインを活用せよ!
臣桜
恋愛
『逃れられない淫らな三角関係』の番外編です。
やりとりのある特定の読者さまに向けた番外編(小冊子)です。
他にも色々あるのですが、差し障りのなさそうなものなので公開します。
(他の番外編は、リアルブランド名とかを出してしまっている配慮していないものなので、ここに載せるかは検討中)
地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~
あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる