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第八部・イギリス捜索 編
第八部・序章1 復帰
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「本日より仕事に復帰致します。今までの挽回をしたいと思っておりますので、どうぞ宜しくお願い致します」
週明け、会社に出社した香澄は秘書室で挨拶をし、深々と頭を下げた。
「待っていましたよ、赤松さん。無理はしませんようお気をつけて。ですが座ってこなせる仕事は、どんどんまわしていきますからね」
松井に言われ、香澄は「はいっ」と頷く。
チラリと河野を見れば、彼は以前御劔邸に来た時と変わりない表情で香澄をジッと見ている。
「歩けるようになるまで回復されて、何よりです。ドイツで事故に遭われたそうですが、いつどこで不運があるか分かりませんから、気を緩めないようお願いします」
淡々とした声で告げられたそれは、香澄を案じているのか「ぼやぼやしてるなよ」と言いたいのだか分からない。
それが、河野由貴男という男なのだと思った。
「では、ミーティングを始めましょうか。今日の社長のスケジュールを確認し、各自役割を振っていきます。秘書が三人になると、こういう事ができて嬉しいですね」
「そうですね。河野さん、改めまして宜しくお願い致します」
今日着ているシンプルな白いトップスにベージュのワイドパンツは、いずれもChief Everyの物だ。
ワイドパンツはウエストに共布のリボンベルトもあり、クールさの中に可愛さがあってお気に入りだ。
首には金色の細い鎖にアクセント程度のペンダントがあり、それも佑からプレゼントされた物だ。
リボンモチーフのペンダントヘッドなのだが、可愛らしいし小さいので、オフィスにつける範疇だと思っている。
佑からも「毎日のアイテムの中に、何か一つ俺が贈ったアクセサリーをつけてほしい」という注文を受けており、目立つ物はつけられないが、シンプルな物なら……と妥協案を出した。
その結果、年始にChief Everyで働き出してから、香澄の手元にアクセサリーがどんどん増えていったのについては、あまり考えないようにしている。
「では、本日の社長のスケジュールは午前中に社内で会議、十三時からCM会社の方とのアポイントがありますので、社長室で一時間ほどミーティングになります。十四時になりましたらすぐ会社を出て、雑誌ran-ranの撮影とインタビューがあります。十六時になり日本橋へ向かって料亭『みなだ』でお食事です。二十一時にM-techの真澄様とミーティングがてらバーでお話です」
社用スマホで佑のスケジュールを確認しつつ、松田から話を聞く。
相変わらず佑は一日ぎっしりと動いていて多忙だ。
「社外同行は、私と赤松さんが担当します」
「え……っ? は、はい!」
てっきり秘書室待機だと思っていたので、香澄は驚いて顔を上げる。
「公私混同はされないようにと進言しましたが、社長も赤松さんの怪我の具合が心配なようです。今日同行してもらって様子を見て、今後どのように仕事をしてもらうか私の方で考えます」
「分かりました!」
気合いを入れて頷くと、松井が河野を見る。
「河野さんは十六時までに、社内でまとめられた夏セールの数字と秋物新作の動きを、Chief EveryとCEP両方の把握しておいてください。本日『みなだ』で会食されます百貨店のアパレル担当者に、売り場の事について話し合われる参考になりますので」
「承知しました」
会社に待機だと言われても、やはり河野の顔色は変わらない。
(河野さんはどういう時に感情を見せるのかな)
不思議に思ったが、そろそろ始業時間なので香澄もデスクについた。
メールボックを開き、相変わらず凄まじい量のメールに「うん」と思わず頷く。
だが向かいのデスクに座った河野が「社内回覧送信します」と、すでに仕事を一つ終えているのに気付くと、「負けていられない」と気合いを入れマウスを握った。
「赤松さん! 復帰おめでとう!」
昼になり社員食堂に向かうと、成瀬、水木、荒野が手にトレーを持って同じテーブルについてきた。
香澄の向かいには佑が座っていて、三人は「社長、お邪魔します」と挨拶をして香澄の隣や佑の隣に座る。
「怪我、もう大丈夫なの? 普通に歩いているようだけど」
「はい。ゆっくり静養させて頂いたので、歩くぐらいなら大丈夫なんです」
トマトとツナの冷製パスタ、グリーンサラダをとった香澄は、手と口を動かしつつ彼女たちに応対する。
「日本でも事故とか、思いがけない事って本当にあるから、気を付けてね?」
「ふふ。それ、河野さんにも言われました」
水木の言葉にクスクス笑うと、河野の名前を聞いて三人が顔を見合わせ意味深な表情になる。
週明け、会社に出社した香澄は秘書室で挨拶をし、深々と頭を下げた。
「待っていましたよ、赤松さん。無理はしませんようお気をつけて。ですが座ってこなせる仕事は、どんどんまわしていきますからね」
松井に言われ、香澄は「はいっ」と頷く。
チラリと河野を見れば、彼は以前御劔邸に来た時と変わりない表情で香澄をジッと見ている。
「歩けるようになるまで回復されて、何よりです。ドイツで事故に遭われたそうですが、いつどこで不運があるか分かりませんから、気を緩めないようお願いします」
淡々とした声で告げられたそれは、香澄を案じているのか「ぼやぼやしてるなよ」と言いたいのだか分からない。
それが、河野由貴男という男なのだと思った。
「では、ミーティングを始めましょうか。今日の社長のスケジュールを確認し、各自役割を振っていきます。秘書が三人になると、こういう事ができて嬉しいですね」
「そうですね。河野さん、改めまして宜しくお願い致します」
今日着ているシンプルな白いトップスにベージュのワイドパンツは、いずれもChief Everyの物だ。
ワイドパンツはウエストに共布のリボンベルトもあり、クールさの中に可愛さがあってお気に入りだ。
首には金色の細い鎖にアクセント程度のペンダントがあり、それも佑からプレゼントされた物だ。
リボンモチーフのペンダントヘッドなのだが、可愛らしいし小さいので、オフィスにつける範疇だと思っている。
佑からも「毎日のアイテムの中に、何か一つ俺が贈ったアクセサリーをつけてほしい」という注文を受けており、目立つ物はつけられないが、シンプルな物なら……と妥協案を出した。
その結果、年始にChief Everyで働き出してから、香澄の手元にアクセサリーがどんどん増えていったのについては、あまり考えないようにしている。
「では、本日の社長のスケジュールは午前中に社内で会議、十三時からCM会社の方とのアポイントがありますので、社長室で一時間ほどミーティングになります。十四時になりましたらすぐ会社を出て、雑誌ran-ranの撮影とインタビューがあります。十六時になり日本橋へ向かって料亭『みなだ』でお食事です。二十一時にM-techの真澄様とミーティングがてらバーでお話です」
社用スマホで佑のスケジュールを確認しつつ、松田から話を聞く。
相変わらず佑は一日ぎっしりと動いていて多忙だ。
「社外同行は、私と赤松さんが担当します」
「え……っ? は、はい!」
てっきり秘書室待機だと思っていたので、香澄は驚いて顔を上げる。
「公私混同はされないようにと進言しましたが、社長も赤松さんの怪我の具合が心配なようです。今日同行してもらって様子を見て、今後どのように仕事をしてもらうか私の方で考えます」
「分かりました!」
気合いを入れて頷くと、松井が河野を見る。
「河野さんは十六時までに、社内でまとめられた夏セールの数字と秋物新作の動きを、Chief EveryとCEP両方の把握しておいてください。本日『みなだ』で会食されます百貨店のアパレル担当者に、売り場の事について話し合われる参考になりますので」
「承知しました」
会社に待機だと言われても、やはり河野の顔色は変わらない。
(河野さんはどういう時に感情を見せるのかな)
不思議に思ったが、そろそろ始業時間なので香澄もデスクについた。
メールボックを開き、相変わらず凄まじい量のメールに「うん」と思わず頷く。
だが向かいのデスクに座った河野が「社内回覧送信します」と、すでに仕事を一つ終えているのに気付くと、「負けていられない」と気合いを入れマウスを握った。
「赤松さん! 復帰おめでとう!」
昼になり社員食堂に向かうと、成瀬、水木、荒野が手にトレーを持って同じテーブルについてきた。
香澄の向かいには佑が座っていて、三人は「社長、お邪魔します」と挨拶をして香澄の隣や佑の隣に座る。
「怪我、もう大丈夫なの? 普通に歩いているようだけど」
「はい。ゆっくり静養させて頂いたので、歩くぐらいなら大丈夫なんです」
トマトとツナの冷製パスタ、グリーンサラダをとった香澄は、手と口を動かしつつ彼女たちに応対する。
「日本でも事故とか、思いがけない事って本当にあるから、気を付けてね?」
「ふふ。それ、河野さんにも言われました」
水木の言葉にクスクス笑うと、河野の名前を聞いて三人が顔を見合わせ意味深な表情になる。
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