【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

文字の大きさ
上 下
362 / 1,559
第七部・双子襲来 編

判官さま

しおりを挟む
「ここのほうじ茶、セルフサービスなんです。無料で頂けるのありがたい……」

 そう言いつつ、紙コップに人数分のお茶を淹れ、二人分をクラウスに持たせた。

「ちょっと日差し強いですが、せっかくですし外で食べましょう」

 テーブルとベンチは埋まっていて、香澄は店の向かいにある石垣に座った。
 佑が隣に座り、反対側にやや揉めて「僕がお茶運んだから僕」とクラウスが腰掛ける。

「いただきます」

 紙コップを地面に置き、香澄は、はむっと餅にかぶりつく。

「んー……」

 焼きたての餅は香澄の口元からビヨーンと伸び、双子が大ウケする。

「すっげぇ! 餅すげぇ! ピザみたい」
「僕もいただきます!」

 クラウスが香澄を真似て判官さまにかぶりつき、同じようにビヨーンと餅を伸ばす。佑とアロイスも続いた。

「……ん、美味いな。餡子が甘すぎなくて、温かいのもあって本当に美味い」
「でしょ?」

 佑が認めてくれた事で香澄が喜び、小さい餅にさらにかぶりつく。

「小さいからこれでワンコインは頷けるけど、これだけ美味いなら安すぎない?」
「そうそう。チョコレートでも一粒数百円するしね?」

「……確かに佑さんにもらった高級チョコ美味しかったですけど、私はスーパーで買えるチョコの方が、気軽に美味しく食べられます」

 むぐむぐと口を動かし、香澄がうなる。

「カスミは本当に庶民的だなぁ。ま、そこが魅力なんだけど」
「だよなぁ。ネイルだってジュエリーネイルしてるの見た事ないし、ほんのりピンクベージュで地味なもんだよな」

「ジュエリー……ネイル?」

 ほうじ茶を飲んで、香澄は首を傾げる。

「あれ? 知らない? 本物の宝石をネイルパーツにしてつけるの」

 アロイスに言われ、香澄は目をまん丸にした。

「そっ、そんなのあるんですか? む、むりむり!」
「お前ら、香澄に向かって庶民とか地味とか言うなよ。香澄はそのままが可愛いんだから」

 餅を食べ終えて熱いお茶をすする佑が、半眼になって双子を睨む。

「まぁ、そうだけどさ! 可愛い子ってどんどん飾りたくなるよね」
「……異論はない。だが香澄は素材が抜群にいいんだ。無理に飾ることもないさ」

 ちょっとその気になればいつでも最高級の物で飾る準備ができているくせに、佑は理解のある態度を取る。
 それが分かっている双子は、「はっ」と鼻先でせせら笑い、「むっつりめ」と呟く。

 男たちの会話を脇に、香澄はマイペースに地元紹介を続ける。

「この公園、春になったら桜が綺麗なんですよ。お花見しながらジンギスカン、道民あるあるって言われますね」

 脚をそろえて前に出し、香澄は大好きな空間に目を細める。

「東京の桜もとても綺麗でした。本州って枝垂れ桜もたくさんあっていいですよね。北海道ってエゾヤマザクラやソメイヨシノ、ヤエザクラが多い印象で、枝垂れ桜ってあまり見なくて。……でもやっぱり、ここが好きだなぁ」

 言いながらふぅふぅとお茶を冷まし、静かに啜る。

「……また、来ような?」

 ポン、と頭を撫でられ、香澄は破顔した。

「うんっ」





 その後、駐車場で待機していた車に乗り込み、またホテルに戻る。

 双子が札幌駅直結の百貨店に向かうのを見送ってから、佑と香澄はスイートルームで休憩を取る。

「脚、大丈夫か?」
「うん、平気。それよりルームサービスありがとう。いまアフターヌーンティー頂いたら、夕食入るかな? 頑張ろう」

 リラックスしたワンピース姿でソファに座った香澄は、オットマンに足を乗せてのんびりくつろぐ。

「久しぶりの札幌を満喫できた?」
「……うん。本当にありがとう」

 お礼を……と思い、香澄は隣に座っている佑の頬にチュッとキスをした。
 佑はヘーゼルの瞳でチラリと香澄を見たあと、魅力的な笑みを浮かべる。

「お礼なら、もうちょっと情熱的でもいいよ?」

 佑は香澄の肩を抱き、そのまま二の腕をなぞって腰へ手を下ろす。
 ぐっと抱き寄せられ、気がつけば佑の腰の上に向かい合わせに座らされていた。

「……あ、……ありが、と……ぅ」

 三十歳を超えるのに、佑の頬はツルンとなめらかだ。

 彼の頬を両手で包み、香澄はゆっくり顔を近付けてキスをしようとする。

 それなのに、彼はじっと香澄を見つめたままだ。
しおりを挟む
感想 560

あなたにおすすめの小説

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない

若松だんご
恋愛
 ――俺には、将来を誓った相手がいるんです。  お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。  ――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。  ほげええっ!?  ちょっ、ちょっと待ってください、課長!  あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?  課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。  ――俺のところに来い。  オオカミ課長に、強引に同居させられた。  ――この方が、恋人らしいだろ。  うん。そうなんだけど。そうなんですけど。  気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。  イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。  (仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???  すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。 その肩書きに恐れをなして逃げた朝。 もう関わらない。そう決めたのに。 それから一ヶ月後。 「鮎原さん、ですよね?」 「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」 「僕と、結婚してくれませんか」 あの一夜から、溺愛が始まりました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

処理中です...