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第七部・双子襲来 編
トイレの話
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「時計台は駅前通りより東にあるので、ちょっと歩きますよ」
「OK」
その後、ぶらりと歩いて時計台まで行って写真を撮る。
クラウスが「思ってたよりこぢんまりしてて……。何て言うか地味だね」と言ったが、札幌民である香澄もそう思っているので否定はしない。
「昔、札幌農学校という学校が作られたんですが、ここは入学式とか卒業式を行う所だったみたいです。学校そのものがこの辺りから今の北大近くに移動したあとは、時計台って呼ばれてるみたいですよ」
「へぇ、知らなかった」
佑が頷き、香澄は彼に向かって微笑む。
「ふぅん……。でもなんだか近代的なオフィスビルに囲まれて、あんまり風情がないね。せっかく建物は古くて雰囲気があるのに、何か勿体ないよ」
「確かにそうかもしれませんね。ヨーロッパだと景観を守って建物の雰囲気を統一しますが、日本は……というか札幌はまず近代的な建物ありきな気がします」
ゆっくりとその場を立ち去り、大通公園に向かって南へ歩きつつ会話を続ける。
「そうだな。この雑多とした近代的な建物の風景が『日本の景色』になっている気がする。今になって電柱を地下に埋める所もできたようだが、日本は電柱を地上に出してしまうのに慣れてしまった感じがある。電気が通い始めた頃からすでにそうだったから、すべてを地中に埋めるとなると莫大な金がかかるだろうし」
佑の言葉を聞いたアロイスとクラウスが、彼の肩を組んでマウントを取る。
「ブルーメンブラットヴィルって綺麗な街だろ? タスク」
「はいはい。あの街が美しいのは分かってるよ。でもお前らこそ、日本の料理が美味しくて堪らないって羨ましがってるだろ。あとトイレ」
切り返した佑に、双子は悔しそうに、だが嬉しそうに頷いた。
「そう! それ! 日本人の作る料理ってもう変態的に美味しい。どんなジャンルにも手を出してとことん突き詰めて研究してくんだよなぁ。で、そこらへんの店に入っても、まず味は保証されてるだろ? で、いろーんなのが出てくる。いいなぁ!」
「トイレでケツ洗うのも変態的な発想だけど、慣れたらホント最高だよね。あと、ペーパーが柔らかい! ケツに優しい! うーん、あのシャワーのやつ、もっとあちこちに増えたらいいのになぁ。冬場に便座が温かいのもいいよなぁ」
割とはばからない声でトイレの話をするので、恥ずかしい。
だがふと不思議に思い、佑に尋ねてみた。
「佑さん。どうして海外では普及しないのかな?」
トイレの話は恥ずかしいが、ここは流れだ。
「水質の問題だと思うよ。日本は軟水だけど、ヨーロッパは硬水だから。水の中に石灰分が入っていて、凝固したらメンテナンスが大変なんだ。あと日本ほど水が綺麗じゃない国では、不純物が混じった水をデリケートな部分に当てる事の危険性もある」
「そっかぁ……」
こんなに便利な物なのになぜ普及しないのだろう? と思っていたが、さすがに納得した。
「でもクラウザー家はメンテする金あるから、導入してるけどね」
ペロリと舌を出し、アロイスが悪戯っぽく笑う。
「そうそう。オーマがいるお陰で、クラウザー家に日本のいい所がほどよく入っているね。お陰で僕ら一族は全員日本語話せるし、箸使いも上手だ。オーマが好きな焼き魚だって、僕ら上手に食べられるもんね」
「子供の頃は面倒な食べ物だなって思ってたけど、焼き魚って美味いよね。俺たち日本来るたびに定食屋みたいなところ行っちゃうよ。サンマの塩焼き好きだろ? アジも美味いよね。あ、あと焼き魚じゃないけどサバ味噌も好き。なによりサシミって最強に美味いだろ? あとなんたってスシ! 日本人って魚の美味い食べ方たくさん知ってていいよなぁ」
双子の話題が魚食に向かい、香澄が丁度いいとばかりに提案する。
「あの、これから円山方面に向かいますが、そちらの方に美味しいお寿司屋さんを知っているので、行きませんか? 予約取れたらなんですが」
「行く!」
「金なら出すから店教えて」
「ちょっと待っててくださいね。電話掛けて確かめてみます」
できる事なら札幌で美味しい思い出を作ってほしいと思い、店に電話を掛ける。
歩きながら電話をし、数分後に香澄は弾むような笑みを浮かべて三人にピースサインを出した。
「良かった! 四人なら入れますって。……あ、でも……」
ふと護衛の事を思い出し、香澄はチラッと後方を見やる。
「いいって。彼らは彼らで別に食事とるから」
「そうそう。何て言う店?」
双子に促され、香澄は特別な時に行っている寿司屋の名前を口にする。
「柳さんです。近く『ネプチューン』っていう回転寿司があるんですが、個人的に札幌にある回転寿司の中で一番美味しいと思っています。こっちはまたいつか」
ううん、と顎に手をやりうなる香澄を、佑が微笑んで見ている。
「OK」
その後、ぶらりと歩いて時計台まで行って写真を撮る。
クラウスが「思ってたよりこぢんまりしてて……。何て言うか地味だね」と言ったが、札幌民である香澄もそう思っているので否定はしない。
「昔、札幌農学校という学校が作られたんですが、ここは入学式とか卒業式を行う所だったみたいです。学校そのものがこの辺りから今の北大近くに移動したあとは、時計台って呼ばれてるみたいですよ」
「へぇ、知らなかった」
佑が頷き、香澄は彼に向かって微笑む。
「ふぅん……。でもなんだか近代的なオフィスビルに囲まれて、あんまり風情がないね。せっかく建物は古くて雰囲気があるのに、何か勿体ないよ」
「確かにそうかもしれませんね。ヨーロッパだと景観を守って建物の雰囲気を統一しますが、日本は……というか札幌はまず近代的な建物ありきな気がします」
ゆっくりとその場を立ち去り、大通公園に向かって南へ歩きつつ会話を続ける。
「そうだな。この雑多とした近代的な建物の風景が『日本の景色』になっている気がする。今になって電柱を地下に埋める所もできたようだが、日本は電柱を地上に出してしまうのに慣れてしまった感じがある。電気が通い始めた頃からすでにそうだったから、すべてを地中に埋めるとなると莫大な金がかかるだろうし」
佑の言葉を聞いたアロイスとクラウスが、彼の肩を組んでマウントを取る。
「ブルーメンブラットヴィルって綺麗な街だろ? タスク」
「はいはい。あの街が美しいのは分かってるよ。でもお前らこそ、日本の料理が美味しくて堪らないって羨ましがってるだろ。あとトイレ」
切り返した佑に、双子は悔しそうに、だが嬉しそうに頷いた。
「そう! それ! 日本人の作る料理ってもう変態的に美味しい。どんなジャンルにも手を出してとことん突き詰めて研究してくんだよなぁ。で、そこらへんの店に入っても、まず味は保証されてるだろ? で、いろーんなのが出てくる。いいなぁ!」
「トイレでケツ洗うのも変態的な発想だけど、慣れたらホント最高だよね。あと、ペーパーが柔らかい! ケツに優しい! うーん、あのシャワーのやつ、もっとあちこちに増えたらいいのになぁ。冬場に便座が温かいのもいいよなぁ」
割とはばからない声でトイレの話をするので、恥ずかしい。
だがふと不思議に思い、佑に尋ねてみた。
「佑さん。どうして海外では普及しないのかな?」
トイレの話は恥ずかしいが、ここは流れだ。
「水質の問題だと思うよ。日本は軟水だけど、ヨーロッパは硬水だから。水の中に石灰分が入っていて、凝固したらメンテナンスが大変なんだ。あと日本ほど水が綺麗じゃない国では、不純物が混じった水をデリケートな部分に当てる事の危険性もある」
「そっかぁ……」
こんなに便利な物なのになぜ普及しないのだろう? と思っていたが、さすがに納得した。
「でもクラウザー家はメンテする金あるから、導入してるけどね」
ペロリと舌を出し、アロイスが悪戯っぽく笑う。
「そうそう。オーマがいるお陰で、クラウザー家に日本のいい所がほどよく入っているね。お陰で僕ら一族は全員日本語話せるし、箸使いも上手だ。オーマが好きな焼き魚だって、僕ら上手に食べられるもんね」
「子供の頃は面倒な食べ物だなって思ってたけど、焼き魚って美味いよね。俺たち日本来るたびに定食屋みたいなところ行っちゃうよ。サンマの塩焼き好きだろ? アジも美味いよね。あ、あと焼き魚じゃないけどサバ味噌も好き。なによりサシミって最強に美味いだろ? あとなんたってスシ! 日本人って魚の美味い食べ方たくさん知ってていいよなぁ」
双子の話題が魚食に向かい、香澄が丁度いいとばかりに提案する。
「あの、これから円山方面に向かいますが、そちらの方に美味しいお寿司屋さんを知っているので、行きませんか? 予約取れたらなんですが」
「行く!」
「金なら出すから店教えて」
「ちょっと待っててくださいね。電話掛けて確かめてみます」
できる事なら札幌で美味しい思い出を作ってほしいと思い、店に電話を掛ける。
歩きながら電話をし、数分後に香澄は弾むような笑みを浮かべて三人にピースサインを出した。
「良かった! 四人なら入れますって。……あ、でも……」
ふと護衛の事を思い出し、香澄はチラッと後方を見やる。
「いいって。彼らは彼らで別に食事とるから」
「そうそう。何て言う店?」
双子に促され、香澄は特別な時に行っている寿司屋の名前を口にする。
「柳さんです。近く『ネプチューン』っていう回転寿司があるんですが、個人的に札幌にある回転寿司の中で一番美味しいと思っています。こっちはまたいつか」
ううん、と顎に手をやりうなる香澄を、佑が微笑んで見ている。
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