350 / 1,544
第七部・双子襲来 編
札幌でお墓参り
しおりを挟む
朝食を終えて出掛けようとした時、双子の部屋の前を通ったが、はまだシンとしている。眠っているようだ。
「よし、この隙に行こう」
絶好の機会と言わんばかりに佑は香澄の手を引いてエレベーターに乗り込んだ。
そのまま地下駐車場で運転手と護衛と合流し、札幌市清田区にある霊園へ向かった。
香澄は移動中に母と連絡を取り、お盆時期なので多少渋滞するが順調に道程を進められていると伝えた。
霊園は六十六万平米あり、基本的にマイカーで来る事を想定されており、駐車場も広い。
巨大な公園と言っていい印象で、整然と墓が並んでいる他は緑も多い。
「へぇ、本当に広々とした所だな。さすが北海道だ」
車から降り、佑がサングラスを外して目を細める。
佑はよくサングラスを掛けていて、そのバリエーションも多彩だ。
かなり凝っているようで、気に入ったブランドの物は色違いで揃えるというコレクターぶりを見せている。
それでも彼の目の色が普通の日本人よりずっと薄い事を考えると、目が光に弱くそれを守るためにサングラスをしているのはすぐ分かる。
ただのお洒落ではなく健康のためなのだと思うと、純日本人の香澄からすれば「大変なのだな」と思う事も多々ある。
「佑さん、眩しいでしょ。サングラスしていていいよ」
「いや、こういう時ぐらいちゃんとしてたいし」
「そうじゃなくて」
会話をしながらも、石段を下りて小路を進んでゆく。
吹き抜ける風が気持ち良く、晴天とはいかないが、雨もギリギリ降らずで御の字だ。
「あ、お母さんたちもう来てるみたい」
香澄が「あそこ」と示した先には、数人の集まりがある。
「わ。もうお墓の掃除とか終わってるのかな」
香澄は急ぎ足になり、佑もその後を追う。
「こんにちは!」
香澄が大きな声を出すと、香澄の両親と弟、赤松家の人々が振り向いた。
「香澄! あんた走っても大丈夫なの?」
驚いた様子の母に、香澄はピースサインをしてみせる。
「走ってないない。これは急ぎ足です。おじさん、おばさんお久しぶりです」
「香澄ちゃん、久しぶり」
「あっくん、久しぶりー」
やけにテンション高く香澄に挨拶をしてきたのは、伯父の従兄だ。
長男の家は男兄弟なため、従兄弟兄弟はいつも「妹がほしい」とぼやいていたそうだ。
親戚が集まると、香澄はその兄弟に可愛がられるという図式が成立していた。
従兄とハイタッチをする香澄の後ろで、佑が「こんにちは。初めまして」と綺麗に一礼してみせる。
「きゃああああ……っ! 御劔佑様、麗しい……っ! まさかお墓参りに来て会えるだなんて……っ!」
黄色い悲鳴を上げているのは、次男のところの従姉妹だ。
次男の娘たちは佑より少し年上と年下ぐらいの年齢で、それぞれ既婚と独身だ。
姉は小さい子を抱っこしているが、夫がいようが何だろうがファンはファンらしい。
叔母のところの姉妹は二十代半ばと大学生で、こちらはもっとファン心理がこじれている表情をしている。
「御劔様、格好いい……!」
「一緒に写真撮ってもらってもいいですか?」
まるで芸能人を前にした興奮ぶりに、佑も苦笑する。
「お墓の前はさすがにやめておきましょう。あとでお墓から離れた場所でなら、もちろん歓迎します」
香澄も従姉妹相手だと嫉妬する気にもならないのか、その姿を見てケラケラと笑っている。
「来るの遅くてごめんね? これでも一応急いで頂いたんだけど」
「いいって。いつも役割分担は決まってるし、掃除って言っても大した事しないし」
香澄と栄子が話をしていると、仏花を手にした佑がおずおずと前に出る。
「すみません。ホテルで手配してもらって買ったのですが、一緒に飾って頂いてもいいですか?」
仏花にしては立派すぎる花束に、栄子が「あらーっ」と目を丸くする。
「御劔さん、こんな立派なお花すみません。飾らせて頂きますね」
花ばさみを持つ栄子に、香澄が「私がやるよ」と言い仏花を受け取る。
左脚を少しかばってしゃがみ、高さが揃うように花の茎を切る香澄を、佑が後ろから微笑んで見守っていた。
帰省の目的は墓参りなので、二人とも左手首に略式の数珠をしている。
崇の両親である祖父母がじんわりと佑に近付き、頭を下げた。
「よし、この隙に行こう」
絶好の機会と言わんばかりに佑は香澄の手を引いてエレベーターに乗り込んだ。
そのまま地下駐車場で運転手と護衛と合流し、札幌市清田区にある霊園へ向かった。
香澄は移動中に母と連絡を取り、お盆時期なので多少渋滞するが順調に道程を進められていると伝えた。
霊園は六十六万平米あり、基本的にマイカーで来る事を想定されており、駐車場も広い。
巨大な公園と言っていい印象で、整然と墓が並んでいる他は緑も多い。
「へぇ、本当に広々とした所だな。さすが北海道だ」
車から降り、佑がサングラスを外して目を細める。
佑はよくサングラスを掛けていて、そのバリエーションも多彩だ。
かなり凝っているようで、気に入ったブランドの物は色違いで揃えるというコレクターぶりを見せている。
それでも彼の目の色が普通の日本人よりずっと薄い事を考えると、目が光に弱くそれを守るためにサングラスをしているのはすぐ分かる。
ただのお洒落ではなく健康のためなのだと思うと、純日本人の香澄からすれば「大変なのだな」と思う事も多々ある。
「佑さん、眩しいでしょ。サングラスしていていいよ」
「いや、こういう時ぐらいちゃんとしてたいし」
「そうじゃなくて」
会話をしながらも、石段を下りて小路を進んでゆく。
吹き抜ける風が気持ち良く、晴天とはいかないが、雨もギリギリ降らずで御の字だ。
「あ、お母さんたちもう来てるみたい」
香澄が「あそこ」と示した先には、数人の集まりがある。
「わ。もうお墓の掃除とか終わってるのかな」
香澄は急ぎ足になり、佑もその後を追う。
「こんにちは!」
香澄が大きな声を出すと、香澄の両親と弟、赤松家の人々が振り向いた。
「香澄! あんた走っても大丈夫なの?」
驚いた様子の母に、香澄はピースサインをしてみせる。
「走ってないない。これは急ぎ足です。おじさん、おばさんお久しぶりです」
「香澄ちゃん、久しぶり」
「あっくん、久しぶりー」
やけにテンション高く香澄に挨拶をしてきたのは、伯父の従兄だ。
長男の家は男兄弟なため、従兄弟兄弟はいつも「妹がほしい」とぼやいていたそうだ。
親戚が集まると、香澄はその兄弟に可愛がられるという図式が成立していた。
従兄とハイタッチをする香澄の後ろで、佑が「こんにちは。初めまして」と綺麗に一礼してみせる。
「きゃああああ……っ! 御劔佑様、麗しい……っ! まさかお墓参りに来て会えるだなんて……っ!」
黄色い悲鳴を上げているのは、次男のところの従姉妹だ。
次男の娘たちは佑より少し年上と年下ぐらいの年齢で、それぞれ既婚と独身だ。
姉は小さい子を抱っこしているが、夫がいようが何だろうがファンはファンらしい。
叔母のところの姉妹は二十代半ばと大学生で、こちらはもっとファン心理がこじれている表情をしている。
「御劔様、格好いい……!」
「一緒に写真撮ってもらってもいいですか?」
まるで芸能人を前にした興奮ぶりに、佑も苦笑する。
「お墓の前はさすがにやめておきましょう。あとでお墓から離れた場所でなら、もちろん歓迎します」
香澄も従姉妹相手だと嫉妬する気にもならないのか、その姿を見てケラケラと笑っている。
「来るの遅くてごめんね? これでも一応急いで頂いたんだけど」
「いいって。いつも役割分担は決まってるし、掃除って言っても大した事しないし」
香澄と栄子が話をしていると、仏花を手にした佑がおずおずと前に出る。
「すみません。ホテルで手配してもらって買ったのですが、一緒に飾って頂いてもいいですか?」
仏花にしては立派すぎる花束に、栄子が「あらーっ」と目を丸くする。
「御劔さん、こんな立派なお花すみません。飾らせて頂きますね」
花ばさみを持つ栄子に、香澄が「私がやるよ」と言い仏花を受け取る。
左脚を少しかばってしゃがみ、高さが揃うように花の茎を切る香澄を、佑が後ろから微笑んで見守っていた。
帰省の目的は墓参りなので、二人とも左手首に略式の数珠をしている。
崇の両親である祖父母がじんわりと佑に近付き、頭を下げた。
43
お気に入りに追加
2,511
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!
臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。
そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。
※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています
※表紙はニジジャーニーで生成しました
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる