【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

文字の大きさ
上 下
343 / 1,559
第七部・双子襲来 編

これは、私のものです

しおりを挟む
 パーティーなどで双子の取り巻きに会った事はあるが、中には確かに「この子は本気そうだな」と感じた女性はいた。
 双子の見分けがつき、その片方を真剣に想っていただろうに、可哀相な話である。

 しかし彼らからすれば、「好きなら好きと言わない方が悪い。自分たちは遊び仲間だと思っていたから気付かない」と主張するかもしれない。

「……まぁ、子供じゃないしな。好きな女性は自分で決めるべきだし、仮に本気なら見守るしかないか」
「修羅場にならなきゃいいけど……」

 自分も修羅場に強いタイプではない香澄が、ぼんやりと呟いてラズベリーのカクテルを口にする。
 香澄の言葉を聞き、佑が溜め息混じりに呟いた。

「その時は彼女の味方になってあげよう。俺はあいつらの味方にはならないが、バーテンダーさんの事は……何ていうか、気の毒だから。身内の不始末という事で」

「あはは……」

 結局、双子が何をしても、佑が気を揉むのは変わらないのだった。



**



 一時間ほどバーで過ごしたあと、部屋に戻る事にした。

 香澄はバーを出る際、メモに自分の連絡先を書いて美里に渡した。

「お二人の事で困った時、良かったら連絡をください。力になれるかもしれません」
「ありがとうございます」

 女性だからか、美里は何の警戒もなくメモを受け取ってくれた。

 双子にロックオンされた彼女が、このまま無事でいられるとは思えない。

(頑張って……!)

 心の中で拳を握り、香澄はいまだカウンターに座っている双子をあとに、佑と共にバーを出た。





「……俺も香澄にああいうのされたかったな」

 エレベーターの中で佑がポツリと呟く。

「ん? 〝ああいうの〟って?」
「香澄に『これ、連絡先です』ってされたかった」

「もう、今さら何いってるの」

 香澄はクスクス笑い、彼の腕に腕を絡ませる。

 頭を寄せて甘えながらも、自分の心の奥にまだ黒いものが残っているのを自覚して、小さく息をつく。

 レストランで佑の話を聞き、生まれてしまった嫉妬心はいまだ燻っている。
 何とか軌道修正をして、場所を変えてバーでも普通に話せていたのに……。

 せっかくアルコールで少しハイになっていたのに、これから部屋に戻るとなると気持ちが落ちてくる。

 そして自分が「襲う」と宣言したのも、しっかり覚えていた。

 ポン……と電子音がし、二十二階にエレベーターが到着する。

 スイートルームのドア前で佑がカードキーをかざし、部屋の照明がついたのを確認してから、香澄は佑に抱きついた。

「っ……、かす、……み?」

 彼の背筋に額を押しつけたあと、グリグリとさらに額を擦りつける。

「…………バカ」

 佑の背中に顔を埋めたまま、呟く。
 とんっと背中を拳で打ったけれど、彼は前を向いたままだった。

「……ばか」

 香澄は横を向いて、右頬を押しつけたまま、もう一度呟く。

 そして手を伸ばしたかと思うと、佑のスラックスの上から股間を包んだ。

「……これは、私のものです」

 初歩英語のThis is a pen.のような言い方をし、香澄は手の中のモノをにぎにぎと揉む。

「俺のすべては香澄のものだよ」

 背中越しに彼の低い声が伝わり、それだけで泣きそうになる。

 佑の声が好きだ。
 低くて艶やかで、魅力的な声だ。

 会社で働いていても、社長としての威厳のある声がとても格好いい。

 ――この声が、自分以外の女性の名前を呼んでいたと想像するだけで、胸がどす黒い感情に支配される。

「……名前、呼んで」
「香澄」

「もっと」
「……香澄」

 自分の心の狭さを情けなく思い、香澄はいつのまにか涙を零していた。
しおりを挟む
感想 560

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。 その肩書きに恐れをなして逃げた朝。 もう関わらない。そう決めたのに。 それから一ヶ月後。 「鮎原さん、ですよね?」 「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」 「僕と、結婚してくれませんか」 あの一夜から、溺愛が始まりました。

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜

青花美来
恋愛
「……三年前、一緒に寝た間柄だろ?」 三年前のあの一夜のことは、もう過去のことのはずなのに。 一夜の過ちとして、もう忘れたはずなのに。 「忘れたとは言わせねぇぞ?」 偶然再会したら、心も身体も翻弄されてしまって。 「……今度こそ、逃がすつもりも離すつもりもねぇから」 その溺愛からは、もう逃れられない。 *第16回恋愛小説大賞奨励賞受賞しました*

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...