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第七部・双子襲来 編
これは、私のものです
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パーティーなどで双子の取り巻きに会った事はあるが、中には確かに「この子は本気そうだな」と感じた女性はいた。
双子の見分けがつき、その片方を真剣に想っていただろうに、可哀相な話である。
しかし彼らからすれば、「好きなら好きと言わない方が悪い。自分たちは遊び仲間だと思っていたから気付かない」と主張するかもしれない。
「……まぁ、子供じゃないしな。好きな女性は自分で決めるべきだし、仮に本気なら見守るしかないか」
「修羅場にならなきゃいいけど……」
自分も修羅場に強いタイプではない香澄が、ぼんやりと呟いてラズベリーのカクテルを口にする。
香澄の言葉を聞き、佑が溜め息混じりに呟いた。
「その時は彼女の味方になってあげよう。俺はあいつらの味方にはならないが、バーテンダーさんの事は……何ていうか、気の毒だから。身内の不始末という事で」
「あはは……」
結局、双子が何をしても、佑が気を揉むのは変わらないのだった。
**
一時間ほどバーで過ごしたあと、部屋に戻る事にした。
香澄はバーを出る際、メモに自分の連絡先を書いて美里に渡した。
「お二人の事で困った時、良かったら連絡をください。力になれるかもしれません」
「ありがとうございます」
女性だからか、美里は何の警戒もなくメモを受け取ってくれた。
双子にロックオンされた彼女が、このまま無事でいられるとは思えない。
(頑張って……!)
心の中で拳を握り、香澄はいまだカウンターに座っている双子をあとに、佑と共にバーを出た。
「……俺も香澄にああいうのされたかったな」
エレベーターの中で佑がポツリと呟く。
「ん? 〝ああいうの〟って?」
「香澄に『これ、連絡先です』ってされたかった」
「もう、今さら何いってるの」
香澄はクスクス笑い、彼の腕に腕を絡ませる。
頭を寄せて甘えながらも、自分の心の奥にまだ黒いものが残っているのを自覚して、小さく息をつく。
レストランで佑の話を聞き、生まれてしまった嫉妬心はいまだ燻っている。
何とか軌道修正をして、場所を変えてバーでも普通に話せていたのに……。
せっかくアルコールで少しハイになっていたのに、これから部屋に戻るとなると気持ちが落ちてくる。
そして自分が「襲う」と宣言したのも、しっかり覚えていた。
ポン……と電子音がし、二十二階にエレベーターが到着する。
スイートルームのドア前で佑がカードキーをかざし、部屋の照明がついたのを確認してから、香澄は佑に抱きついた。
「っ……、かす、……み?」
彼の背筋に額を押しつけたあと、グリグリとさらに額を擦りつける。
「…………バカ」
佑の背中に顔を埋めたまま、呟く。
とんっと背中を拳で打ったけれど、彼は前を向いたままだった。
「……ばか」
香澄は横を向いて、右頬を押しつけたまま、もう一度呟く。
そして手を伸ばしたかと思うと、佑のスラックスの上から股間を包んだ。
「……これは、私のものです」
初歩英語のThis is a pen.のような言い方をし、香澄は手の中のモノをにぎにぎと揉む。
「俺のすべては香澄のものだよ」
背中越しに彼の低い声が伝わり、それだけで泣きそうになる。
佑の声が好きだ。
低くて艶やかで、魅力的な声だ。
会社で働いていても、社長としての威厳のある声がとても格好いい。
――この声が、自分以外の女性の名前を呼んでいたと想像するだけで、胸がどす黒い感情に支配される。
「……名前、呼んで」
「香澄」
「もっと」
「……香澄」
自分の心の狭さを情けなく思い、香澄はいつのまにか涙を零していた。
双子の見分けがつき、その片方を真剣に想っていただろうに、可哀相な話である。
しかし彼らからすれば、「好きなら好きと言わない方が悪い。自分たちは遊び仲間だと思っていたから気付かない」と主張するかもしれない。
「……まぁ、子供じゃないしな。好きな女性は自分で決めるべきだし、仮に本気なら見守るしかないか」
「修羅場にならなきゃいいけど……」
自分も修羅場に強いタイプではない香澄が、ぼんやりと呟いてラズベリーのカクテルを口にする。
香澄の言葉を聞き、佑が溜め息混じりに呟いた。
「その時は彼女の味方になってあげよう。俺はあいつらの味方にはならないが、バーテンダーさんの事は……何ていうか、気の毒だから。身内の不始末という事で」
「あはは……」
結局、双子が何をしても、佑が気を揉むのは変わらないのだった。
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一時間ほどバーで過ごしたあと、部屋に戻る事にした。
香澄はバーを出る際、メモに自分の連絡先を書いて美里に渡した。
「お二人の事で困った時、良かったら連絡をください。力になれるかもしれません」
「ありがとうございます」
女性だからか、美里は何の警戒もなくメモを受け取ってくれた。
双子にロックオンされた彼女が、このまま無事でいられるとは思えない。
(頑張って……!)
心の中で拳を握り、香澄はいまだカウンターに座っている双子をあとに、佑と共にバーを出た。
「……俺も香澄にああいうのされたかったな」
エレベーターの中で佑がポツリと呟く。
「ん? 〝ああいうの〟って?」
「香澄に『これ、連絡先です』ってされたかった」
「もう、今さら何いってるの」
香澄はクスクス笑い、彼の腕に腕を絡ませる。
頭を寄せて甘えながらも、自分の心の奥にまだ黒いものが残っているのを自覚して、小さく息をつく。
レストランで佑の話を聞き、生まれてしまった嫉妬心はいまだ燻っている。
何とか軌道修正をして、場所を変えてバーでも普通に話せていたのに……。
せっかくアルコールで少しハイになっていたのに、これから部屋に戻るとなると気持ちが落ちてくる。
そして自分が「襲う」と宣言したのも、しっかり覚えていた。
ポン……と電子音がし、二十二階にエレベーターが到着する。
スイートルームのドア前で佑がカードキーをかざし、部屋の照明がついたのを確認してから、香澄は佑に抱きついた。
「っ……、かす、……み?」
彼の背筋に額を押しつけたあと、グリグリとさらに額を擦りつける。
「…………バカ」
佑の背中に顔を埋めたまま、呟く。
とんっと背中を拳で打ったけれど、彼は前を向いたままだった。
「……ばか」
香澄は横を向いて、右頬を押しつけたまま、もう一度呟く。
そして手を伸ばしたかと思うと、佑のスラックスの上から股間を包んだ。
「……これは、私のものです」
初歩英語のThis is a pen.のような言い方をし、香澄は手の中のモノをにぎにぎと揉む。
「俺のすべては香澄のものだよ」
背中越しに彼の低い声が伝わり、それだけで泣きそうになる。
佑の声が好きだ。
低くて艶やかで、魅力的な声だ。
会社で働いていても、社長としての威厳のある声がとても格好いい。
――この声が、自分以外の女性の名前を呼んでいたと想像するだけで、胸がどす黒い感情に支配される。
「……名前、呼んで」
「香澄」
「もっと」
「……香澄」
自分の心の狭さを情けなく思い、香澄はいつのまにか涙を零していた。
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