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第七部・双子襲来 編
ゆっくりと飲み交わす
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「〝色々〟ってほとんどあいつらが原因だろ。俺もたまに東京から離れたかったし、丁度良かったんだ」
「でも、佑さんのお家のお墓、行けなかったね」
結局、佑の出張や双子の事があり、今回御劔家の墓参りはあとから二人で行く事にしたのだ。
電話でアンネに謝ったが「まだ結婚してないんだし、そこまで気にしなくていいわよ。それより気をつけて帰省しなさい」と言われた。
相変わらずそっけないのだか、気を遣ってくれているのだか分からない。
「それほど気にしなくていいよ。会ったら会ったで、うるさい人たちだし」
「でも、クラウザー家の方々はお会いしたけど、御劔家のご親戚にはまだきちんとご挨拶していないから、いつか結婚前に……とは思ってる」
「うん、そうだな。家族の食事会はしたけど、親戚はまだだったな。そのうち調整するよ」
佑の父――衛には兄と弟、妹がおり、従兄弟も伯父のところに男兄弟が二人、叔父のところに兄妹、叔母のところは三姉妹がいる。
いずれも佑より年下の従妹が、佑にメロメロらしい。
最初はアンネが御劔家に入って、お国柄からくる性格の違いなどで少しぎこちなかったらしい。
それでも今は打ち解けて、親戚の誕生日やイベント事があるたびに集まるほどは仲がいいようだ。
親戚はいずれも関東にいて、いざという時に集まりやすいのだとか。
それはそうと、今は香澄の親戚の話だ。
「香澄のご親戚に会うのは初めてか。緊張するな」
「みんな、楽しみにしてると思うよ。女性陣はサインもらいたがるかも」
「そんないいものかな」
「いいものだよ」
穏やかない会話をしていると、酒が運ばれてきた。
佑はおつまみに、チーズと生ハムの盛り合わせと、ミックスナッツと枝豆を頼んだ。
「香澄、乾杯しよう」
「うん」
「じゃあ、札幌で良質なウサギを拾えた記念のホテルを祝して」
「何それ」
思わずクスクスと笑ってグラスを合わせると、透明な音がする。
「ん……、おいし。桃だーいすき」
「知ってるよ」
香澄が「自分で買うから買ってもいい?」と言って桃で有名な県から、上等な白桃を一箱取り寄せたのはつい最近のことだ。
「あとね、さくらんぼも好き。洋梨も好き。和梨も」
「よし、秋になる前に最高級の洋梨を予約するぞ」
「だからそういう、お父さんみたいなのやめてって」
「お父さん」
あまりな言われように、佑が真顔になる。
「佑さんは?」
「んー……、そうだな。グレープフルーツとかオレンジとか、柑橘系かな。学生の時はスイカをバカみたいに食べてたな」
「ふふ、カブトムシみたい」
「俺はお父さんカブトムシか」
がくっと項垂れた佑を前に、とうとう香澄はケラケラ笑い出した。
「ごめんごめん。佑さんはイケメンですよ」
いい気分になってクイッとカクテルの残りを飲んでしまうと、香澄は立ち上がった。
「ちょっとお手洗い行ってくるね。ついでにバーテンダーさんにカクテル注文してくる」
「ああ。……でもカウンターにいるあいつらには気を付けて。絡まれたらひっぱたいていいから」
「そんな事しないよ」
心配してくれる気持ちを嬉しく思い、香澄はバッグを手に個室を出た。
ムードのいいフロアは人が割と入っていて、高級ホテルに相応しい客層が静かに酒を楽しんでいる。
(次はラズベリーのカクテルにしよう)
頭の中でメニューを思い出し、香澄は美味しそうなカクテルを思い描いてニコニコする。
通り過ぎ様に見たカウンターでは、双子が座ったままだ。
彼らの前にいるバーテンダーの女性は、香澄より少し年下ぐらいだ。
双子からあれこれ話しかけられていても、終始笑顔なので「偉いなぁ」と思ってしまう。
(可愛い子だな)
女性はバーテンダーの制服の上からでも、どんっと質量のある胸が目立つ。
よく見ると童顔だが、それをカバーするような前下がりボブが大人っぽい。
色白で目がクリッとしていて、仕事用に目立たない色のリップを塗っているが、唇がふっくらしていてそのヌーディーさが色っぽい。
笑い声は軽やかで、耳心地のいい声だ。
「でも、佑さんのお家のお墓、行けなかったね」
結局、佑の出張や双子の事があり、今回御劔家の墓参りはあとから二人で行く事にしたのだ。
電話でアンネに謝ったが「まだ結婚してないんだし、そこまで気にしなくていいわよ。それより気をつけて帰省しなさい」と言われた。
相変わらずそっけないのだか、気を遣ってくれているのだか分からない。
「それほど気にしなくていいよ。会ったら会ったで、うるさい人たちだし」
「でも、クラウザー家の方々はお会いしたけど、御劔家のご親戚にはまだきちんとご挨拶していないから、いつか結婚前に……とは思ってる」
「うん、そうだな。家族の食事会はしたけど、親戚はまだだったな。そのうち調整するよ」
佑の父――衛には兄と弟、妹がおり、従兄弟も伯父のところに男兄弟が二人、叔父のところに兄妹、叔母のところは三姉妹がいる。
いずれも佑より年下の従妹が、佑にメロメロらしい。
最初はアンネが御劔家に入って、お国柄からくる性格の違いなどで少しぎこちなかったらしい。
それでも今は打ち解けて、親戚の誕生日やイベント事があるたびに集まるほどは仲がいいようだ。
親戚はいずれも関東にいて、いざという時に集まりやすいのだとか。
それはそうと、今は香澄の親戚の話だ。
「香澄のご親戚に会うのは初めてか。緊張するな」
「みんな、楽しみにしてると思うよ。女性陣はサインもらいたがるかも」
「そんないいものかな」
「いいものだよ」
穏やかない会話をしていると、酒が運ばれてきた。
佑はおつまみに、チーズと生ハムの盛り合わせと、ミックスナッツと枝豆を頼んだ。
「香澄、乾杯しよう」
「うん」
「じゃあ、札幌で良質なウサギを拾えた記念のホテルを祝して」
「何それ」
思わずクスクスと笑ってグラスを合わせると、透明な音がする。
「ん……、おいし。桃だーいすき」
「知ってるよ」
香澄が「自分で買うから買ってもいい?」と言って桃で有名な県から、上等な白桃を一箱取り寄せたのはつい最近のことだ。
「あとね、さくらんぼも好き。洋梨も好き。和梨も」
「よし、秋になる前に最高級の洋梨を予約するぞ」
「だからそういう、お父さんみたいなのやめてって」
「お父さん」
あまりな言われように、佑が真顔になる。
「佑さんは?」
「んー……、そうだな。グレープフルーツとかオレンジとか、柑橘系かな。学生の時はスイカをバカみたいに食べてたな」
「ふふ、カブトムシみたい」
「俺はお父さんカブトムシか」
がくっと項垂れた佑を前に、とうとう香澄はケラケラ笑い出した。
「ごめんごめん。佑さんはイケメンですよ」
いい気分になってクイッとカクテルの残りを飲んでしまうと、香澄は立ち上がった。
「ちょっとお手洗い行ってくるね。ついでにバーテンダーさんにカクテル注文してくる」
「ああ。……でもカウンターにいるあいつらには気を付けて。絡まれたらひっぱたいていいから」
「そんな事しないよ」
心配してくれる気持ちを嬉しく思い、香澄はバッグを手に個室を出た。
ムードのいいフロアは人が割と入っていて、高級ホテルに相応しい客層が静かに酒を楽しんでいる。
(次はラズベリーのカクテルにしよう)
頭の中でメニューを思い出し、香澄は美味しそうなカクテルを思い描いてニコニコする。
通り過ぎ様に見たカウンターでは、双子が座ったままだ。
彼らの前にいるバーテンダーの女性は、香澄より少し年下ぐらいだ。
双子からあれこれ話しかけられていても、終始笑顔なので「偉いなぁ」と思ってしまう。
(可愛い子だな)
女性はバーテンダーの制服の上からでも、どんっと質量のある胸が目立つ。
よく見ると童顔だが、それをカバーするような前下がりボブが大人っぽい。
色白で目がクリッとしていて、仕事用に目立たない色のリップを塗っているが、唇がふっくらしていてそのヌーディーさが色っぽい。
笑い声は軽やかで、耳心地のいい声だ。
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