339 / 1,544
第七部・双子襲来 編
同じ個室で
しおりを挟む
そして双子は迷いのない手つきで誰かに電話を掛けた。
アロイスは相手が出た途端、イタリア語で話しだす。
『もしもし? ダニエラ? 俺、アロイス。突然だけどさ、もう会わないから』
スピーカーの向こうで、女性が激しく驚き抗議を示す。
『俺もクラも、もう君とプライベートで会わないし寝ない。でも君はモデルとして最高だと思うから、仕事で縁があったら宜しくね。これが理由で仕事受けたくないなら、別のモデルを探すから、君は君で幸せな人生を歩む事を祈るよ』
アロイスはカクテル片手にわざと英語以外の言語で話し、こちらをチラッと見た美里をにウインクをする。
『は? 他の子たち? 全員手を切るよ? 君だけを嫌いになった訳じゃないから、心して。ダニエラも俺らの他に何人も恋人がいるでしょ? そっちにいけばいいじゃん。俺たちはもう賞味期限が切れたって事でもう終わりにして? じゃあね、元気で。今までありがとう。チャオ』
双子は延々と、一時間以上あちこちに電話をかけ続けた。
(わざと英語を使ってないんだろうなぁ。ちょっと気になる……)
ひっきりなしに電話を掛ける双子を見て、美里は手を動かしながらチラチラ二人を気にする。
(でも私には関係ないし……)
自分に言い聞かせた時、バーに新しい客が入ってきた。
(え?)
ここは札幌の中でもランクの高いホテルなので、勿論有名人が訪れる事もある。
美里だって並大抵の相手では驚かないようにしている。
けれど出入り口付近でスタッフに迎えられているのは、長身で見るからに美形な男性だ。
(御劔様だ! 今日も麗しいなぁ……)
札幌に来た時はこのホテルをひいきにしてくれている佑を、バーで何回も見かけている。
金遣いがいい上にスタッフに優しく、先輩バーテンダーが「綺麗なお酒の飲み方をされる方だね」と嬉しそうに言っていたのをよく覚えている。
(毎度様です。今回もごゆっくり)
心の中で呟き、美里は佑に向かって会釈をする。
ところが彼はカウンターにいる双子を見てフリーズし、フロアスタッフに向かって「個室は空いていますか?」と尋ねた。
(あれ? このお二人、それほどうるさくはないと思うんだけど、気になったのかな?)
時々彼とカウンターで話す事もあったため、ほんの少し残念にも思う。
(でも、お連れ様がいるからかな。ごゆっくりどうぞ……。確か、御劔様は一杯目はハイボールだったよね……)
そう思って用意をしていると、フロアガールが予想通りのオーダーをとってきた。
**
「お二人……いたね」
以前使った個室に通されたあと、香澄は小さく笑う。
バーに入った瞬間佑が固まり、何事かと思って彼の視線を追えばカウンターに双子がいて理解した。
二人はひっきりなしに電話を掛けていたようで、夜のゆったりした時間なのに違和感を覚えた。
(仕事の電話かな? ああ見えて凄い人だもんね)
そう思いながら、個室の席に座り遠くにある藻岩山のライトアップを目にする。
そして佑と出会った時もこの個室だったなと思い、笑ってしまった。
「あの時もこの個室だったっけ」
「だな。懐かしい」
笑い合ったあとメニューを手に取り、二人で見られるように垂直に置く。
だが佑は「一杯目はハイボールって決めてるから、じっくり見ていいよ」とメニューを押しやった。
「桃の時期なんだね。私、桃大好き」
季節のメニューと銘打った写真に、フルーツをふんだんに使った物が載っている。
確か初めてここに来た時は、洋梨のカクテルだった。
あの美味しさを思い出し、香澄は自然と笑顔になる。
「白桃のカクテルにしよっと」
「フードメニューはいいか?」
「今日はもう先にレストランでしっかり食べちゃったし、おつまみ程度なら」
ひとまず一杯目のドリンクを頼み、二人は何とはなしに夜景を見る。
「……今回、連れてきてくれてありがとう」
ポツンと呟き、香澄は正面から佑に微笑みかけた。
「色々あって、まだちゃんとお礼言えてなかった。自分で帰省しようと思ったら飛行機代とか掛かって、手続きも大変だった。私、自分の事ばっかりでダメだね」
自嘲めいた笑みを浮かべると、佑が首を横に振る。
アロイスは相手が出た途端、イタリア語で話しだす。
『もしもし? ダニエラ? 俺、アロイス。突然だけどさ、もう会わないから』
スピーカーの向こうで、女性が激しく驚き抗議を示す。
『俺もクラも、もう君とプライベートで会わないし寝ない。でも君はモデルとして最高だと思うから、仕事で縁があったら宜しくね。これが理由で仕事受けたくないなら、別のモデルを探すから、君は君で幸せな人生を歩む事を祈るよ』
アロイスはカクテル片手にわざと英語以外の言語で話し、こちらをチラッと見た美里をにウインクをする。
『は? 他の子たち? 全員手を切るよ? 君だけを嫌いになった訳じゃないから、心して。ダニエラも俺らの他に何人も恋人がいるでしょ? そっちにいけばいいじゃん。俺たちはもう賞味期限が切れたって事でもう終わりにして? じゃあね、元気で。今までありがとう。チャオ』
双子は延々と、一時間以上あちこちに電話をかけ続けた。
(わざと英語を使ってないんだろうなぁ。ちょっと気になる……)
ひっきりなしに電話を掛ける双子を見て、美里は手を動かしながらチラチラ二人を気にする。
(でも私には関係ないし……)
自分に言い聞かせた時、バーに新しい客が入ってきた。
(え?)
ここは札幌の中でもランクの高いホテルなので、勿論有名人が訪れる事もある。
美里だって並大抵の相手では驚かないようにしている。
けれど出入り口付近でスタッフに迎えられているのは、長身で見るからに美形な男性だ。
(御劔様だ! 今日も麗しいなぁ……)
札幌に来た時はこのホテルをひいきにしてくれている佑を、バーで何回も見かけている。
金遣いがいい上にスタッフに優しく、先輩バーテンダーが「綺麗なお酒の飲み方をされる方だね」と嬉しそうに言っていたのをよく覚えている。
(毎度様です。今回もごゆっくり)
心の中で呟き、美里は佑に向かって会釈をする。
ところが彼はカウンターにいる双子を見てフリーズし、フロアスタッフに向かって「個室は空いていますか?」と尋ねた。
(あれ? このお二人、それほどうるさくはないと思うんだけど、気になったのかな?)
時々彼とカウンターで話す事もあったため、ほんの少し残念にも思う。
(でも、お連れ様がいるからかな。ごゆっくりどうぞ……。確か、御劔様は一杯目はハイボールだったよね……)
そう思って用意をしていると、フロアガールが予想通りのオーダーをとってきた。
**
「お二人……いたね」
以前使った個室に通されたあと、香澄は小さく笑う。
バーに入った瞬間佑が固まり、何事かと思って彼の視線を追えばカウンターに双子がいて理解した。
二人はひっきりなしに電話を掛けていたようで、夜のゆったりした時間なのに違和感を覚えた。
(仕事の電話かな? ああ見えて凄い人だもんね)
そう思いながら、個室の席に座り遠くにある藻岩山のライトアップを目にする。
そして佑と出会った時もこの個室だったなと思い、笑ってしまった。
「あの時もこの個室だったっけ」
「だな。懐かしい」
笑い合ったあとメニューを手に取り、二人で見られるように垂直に置く。
だが佑は「一杯目はハイボールって決めてるから、じっくり見ていいよ」とメニューを押しやった。
「桃の時期なんだね。私、桃大好き」
季節のメニューと銘打った写真に、フルーツをふんだんに使った物が載っている。
確か初めてここに来た時は、洋梨のカクテルだった。
あの美味しさを思い出し、香澄は自然と笑顔になる。
「白桃のカクテルにしよっと」
「フードメニューはいいか?」
「今日はもう先にレストランでしっかり食べちゃったし、おつまみ程度なら」
ひとまず一杯目のドリンクを頼み、二人は何とはなしに夜景を見る。
「……今回、連れてきてくれてありがとう」
ポツンと呟き、香澄は正面から佑に微笑みかけた。
「色々あって、まだちゃんとお礼言えてなかった。自分で帰省しようと思ったら飛行機代とか掛かって、手続きも大変だった。私、自分の事ばっかりでダメだね」
自嘲めいた笑みを浮かべると、佑が首を横に振る。
42
お気に入りに追加
2,511
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!
臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。
そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。
※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています
※表紙はニジジャーニーで生成しました
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる