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第七部・双子襲来 編

噂になってたよね

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「~~~~っ!!」

 羞恥のあまり身を固くし、香澄は脚をバタつかせた。

「ふ……っ、ははっ。そうだな、夕飯食べてなかったもんな。ごめん。俺も腹減ったし、お楽しみは食べてからにしようか」

 佑が香澄の背中と腰を支え、グイッと引き起こす。
 香澄は顔を真っ赤にしたまま佑と目を合わせられず、両手で胸を隠して俯く。

「香澄? 腹が鳴るぐらいなんだ。可愛いじゃないか。俺はずっと聞いていたいけど」
「……それはただの変態」

「あはは。……で、何が食べたい?」

 香澄の羞恥を察してか、佑は彼女をまた膝の上に乗せ、ギュッと抱き締めて胸を隠す。「んー……イタリアンかな」

「よし。じゃあホテルにイタリアンレストランがあったはずだから、そこでいいか?」
「うん。お腹すいた!」

 ぴょこっと佑の膝から下りると、香澄は床に落ちたブラジャーを拾い背中を向けてモソモソと着ける。

 しかし佑が窓ガラスの反射を利用してガン見しているのには、最後まで気付かないのだった。





 少しいい所で食事をする事も想定し、よそ行きのワンピースを持ってきて早速役に立った。

 レストランに向かえば、コンシェルジュから連絡が行っていたのかスムーズに席まで案内してもらえた。

 都合良く個室が空いていたとも思えない。
 なので佑がホテルに来る事を見越して、どのレストランでも個室を空けてくれていた……かもしれない。

 途中で佑の顔を見た日本人女性は、「はぁ……っ」と息を吸い込んで固まっていた。
 レストラン入り口から個室に向かうまでも、佑は注目を浴びた。

 顔だけでも極上の美形なのに、スーツを纏った体までもイケメンなのだ。
 彼を御劔佑と認識した者全員が、一瞬時を忘れて彼に見入った。

「すごく見られてたね。さすが佑さんだなぁ」

 ウエイターにコースを頼み、食前酒にシャンパンを頼んだあと、香澄がほう……と溜め息をつく。

「こういう事を言うと〝嫌な奴〟って思われるけど、もう慣れたよ」
「うーん……。そうだね。いつ頃から?」

「〝イケメン若手社長が手がける、最新アパレルブランド〟みたいなコピーで雑誌に紹介されたのが、二十四、五の頃かな。その〝イケメン〟もちょっと揶揄している感じだった」

「あー、何かあるよね。仕事に顔は関係ないのに、わざわざそういうのつけるの」

 香澄が同意すると、佑は苦笑いする。

「メディアはとにかく目を引くコピーが一番だからな。注目さえ浴びる事ができれば、あとは二の次だ。それでもあんまり事実無根な事を書けば訴えられるから、一応気を遣ってはいるみたいだけど」

「佑さんと週刊誌とかの関係も根深そう」

 思わず呟くと、彼はまた苦笑いする。

「でもお陰で仕事が増えてChief Everyが注目されたっていうのはあるかな。メディア露出がどっと増えて、会社も大きくなった。……反面、二十半ばには体を壊したけど。会社は勢いづいた。けど、どこか仕事が減るのが怖くて、今もメディアの仕事も受けてるっていう感じかな」

「怖いの?」

 佑のような存在になれば、気に入らない仕事なら好きに断っているのかと思っていた。
 決定権はすべて佑にあり、彼の一言ですべてが左右されるのだといっても過言ではない権力があるはずだ。

「血筋がどうであれ、俺の根っこは一般市民だ。金勘定だって普通に『もったいない』と思うし、仕事があって体が空いてるなら受けたいと思うよ。それに、結局どの業界でも横の繋がりは大事だし」

 静かに言い、佑はシャンパンを飲む。

「モデルのNOZOMIさんと噂になってたよね。〝御劔社長と腕組みデート〟って」
「ぶふっ」

 急に過去のスキャンダルを出され、佑がシャンパンを噴いた。

「……疑ってるのか?」

 濡れた口元をナプキンで拭い、佑は目をまん丸にして香澄を見る。

「特に疑ってはないけど、不意に思い出したの。当時テレビを見てたらワイドショーでやってたから、『あ、最近よく見るこのイケメン社長はそうなんだ。綺麗な人同士付き合うんだなぁ』って思ってただけ」

「あれは……。違う……」

 ガクリと佑が項垂れ、言い訳をしたいと挙手する。
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