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第七部・双子襲来 編

新千歳空港から札幌へ

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「まぁ、カスミは純情だし、それほど付き合った経験ないんでしょ? その数少ない元彼がろくでもないと、他の男もそうなのかって疑っちゃうの、分かる気がするよ。年齢の事は言いたくないけど、だからそんなに可愛くて条件がいいのに、その歳まで他の男と付き合ってなかったんでしょ?」

 また図星を突かれ、香澄は何も言えなくなって苦笑いする。

 その歳になって彼氏がいない、と言われるのはある意味苦痛ではある。
 けれど言葉の裏には、香澄の魅力を分かった上で「勿体ない」と思ってくれている気持ちがある。

 それが分かるからこそ、特に嫌な気持ちにはならなかった。

「今は最高の彼氏がいるから、なーんにも問題ないんです」

 佑の手を握ってにっこり笑うと、それを素直に認めるのが悔しい双子が茶化す。

「嫉妬深いけどね」
「客の前でキスしてセックスする男だけどね」

「ちょ……っ!」

 香澄は真っ赤になってワタワタするが、双子は遠慮なしに笑うのみだ。

 機体はすでに高度一万メートルに達して安定し、客室乗務員が軽食のメニューを出してきた。
 新千歳空港まで一時間半ほどのフライトになる。

 夜だけれど美味しそうなので軽食ぐらい……と思い、香澄は質のいい紙のメニューを受け取って品物を吟味し始めた。



**



 新千歳空港に着いたあと、前もって佑が連絡していたからか飛行機を降りると北海道のガレージに置いてある佑の車がスタンバイしていた。

「わ。いつもと比べてカジュアル」

 それまで東京で乗っていた車は、黒塗りの高級セダンだった。
 しかし現れたのは白い大型RV車で、その意外性に香澄が驚く。

「僕らも乗れるように手配してくれたんだよね?」
「そんなワケあるか」

 調子に乗ったクラウスに厳しい突っ込みを入れ、佑は二列目の左右に香澄と一緒に乗り込む。
 双子も秘書に車を用意させていたのだが、佑の車に乗りたがり三列目に乗車した。

 助手席には護衛の小山内が乗り込み、双子用の車と、もう一台に残りが乗った。

「お前らはどこに泊まるつもりだ?」
「ん? 一応駅前の大きいホテルを手配したけど? ロイヤルグランってトコ」
「――――」

 佑の顔が引き攣り、香澄は「あー……」と思わず彼の心中を察する。

 双子が襲来する前、佑は香澄に「札幌滞在の時は、ロイヤルグランのあの部屋を取っておいたから」と嬉しそうに言ってくれたのだ。

 二十二階にあるスイートを佑が押さえたとはいえ、ホテルにスイートが一部屋しかない訳ではない。
 そうそう利用される部屋でもないため、急遽VIPクラスから連絡が入ってきた時のため対応できるようにもなっている。

 今回はそれが徒になってしまった。

 佑は大きく息を吸い、ゆっくり吐き出す。
 この自分を落ち着かせるための呼吸法も、最近特によく見かけるようになった。

「言っておくが、ホテルに着いたらそれぞれ安らぎの時間とする。絶対に俺たちの邪魔をするな」

 噛みつくように言う佑の様子から、双子は行く先が同じホテルだと理解したようだ。

 二人はニヤニヤと笑い、わざとらしく「札幌は何が美味しいのかなぁ」とスマホで検索し始める。

 車は千歳ICをスイスイと走り、二十時前になり暗くなった道路を進んでゆく。

 近年では札幌で夏の暑い時期は、七月の後半や八月の頭という認識がある。
 北海道はお盆をすぎると急に秋めいてくるので、それが分かっている香澄は思いきり夏! という格好もしていない。

 ノースリーブだと寒い時もあるので、普通に半袖のカットソーにジャージ素材のゆったりとしたスカートだ。念のため、薄手のカーディガンも持ってきた。

「まー、それでもホテル内で偶然会っても仕方ないよねぇ」

 諦めの悪いクラウスが言い、佑が唇を歪める。

 ストレスが溜まっていそうな佑を見て、香澄は「あとでおっぱい触らせてあげよう」と思うのだった。





 約一時間弱車に揺られ、ようやく札幌中心部へ辿り着いた。

 高速から下りて見慣れた札幌市街の道路を通ると、佑のRV車はホテルロイヤルグランの地下駐車場へ入ってゆく。

「あー、着いた着いた!」
「カスミ、お疲れさん」

 佑が手を差し出してくれたので、それに掴まり車を降りる。

 最近はエスコートされる事にも慣れてしまった。
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