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第七部・双子襲来 編
佑なりの叱咤激励
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何せこの双子ときたら、ノリとおちょくりをメインに生きているので、佑が何かまじめに言おうとすればすぐに茶化されてしまう。
なので女性で彼らのお気に入りである香澄のいう事の方が、まじめに聞いてくれる確率は高い。
「……まぁ、趣味としてはそうだな。そっちの方がずっと有意義な時間になると思う。正直パーティーは、ビジネスや家関係で参加しなければならないもの以外は苦痛だ」
双子は顔を見合わせ「あー」と、残念そうに頷いている。
そしてキッチンに立っている香澄を見て、クラウスは微笑した。
「あの子、本当にいい子だよね。何が嫌なのかちょっと曖昧で分かんないけど、怒らないしいつもニコニコしてる。ま、そこが日本人的にちょっと危ういんだけどね。僕らの事も、一生懸命〝好きになれそうな所〟を探してくれてる。人の粗探しをして嫌いになる方が、ずっとラクなのにね」
弟の言葉を聞き、兄が頷く。
「カスミからすれば迷惑かけられたのに、必死になって俺らとタスクを仲良くさせようとしてるんだよねぇ? 根っからの善人っていうか……。見てて眩しいし、危なっかしいよね」
褒められて、佑は少しどや顔になる。
「だろう? 俺の自慢の婚約者だ」
「僕らと出会った女の子ってさ、『死ね、二度と連絡するな』って言うか、『本気にならないから、恋人のフリをし続けて』のどっちかになるんだよね」
あまりにあり得ない二択に、佑はげんなりする。
「それはお前らが不誠実な恋愛をしてるからだろ。いや、恋愛でもないな。生き方そのものが不誠実というか」
女性から『死ね』など言われた事のない佑は、呆れて首を左右に振る。
「誠実さなんて、どっかに忘れたよねー。まじめに生きようとする方が疲れるじゃん? 仕事は楽しいから全力でやるけどね。女って見返り求めるし、自分が愛した以上に俺らが愛し返さないと怒るんだよ」
ふわんと優しい出汁の香りと、餅が焼ける匂いがするなか、生々しい会話が交わされる。
双子の話を聞いて、佑はつくづく、本当に、心の底から、香澄と出会って良かったと思っていた。
反面、彼女に出会わなければ、自分も彼らと似たような価値観を持っていたかもしれない。そう思うとゾッとした。
「本当に、本気で自分を愛してくれる女性がほしいと思うなら、一度断捨離しろ」
「ダンシャリ? 寿司?」
「要らないものは捨てろって事だ。自分たちの外見や金、地位しか見てない女とは縁を切れ。セックスがしたいなら金で解決できる相手にしておけ。身の回りをクリーンにして初めて、綺麗な恋愛ができるんじゃないか? 泥水の中で、清水に住む魚は泳がない」
「泥水……ねぇ」
さんざんな言われようだが、心当たりはあるのか双子は皮肉げに笑う。
「僕らはすでにこういうイメージがついてるのに、今さら心の綺麗な女の子が寄ってくると思う?」
「諦めてるならどうにもならないだろ。誰かが陰で真剣に想ってるかもしれないのに、疑ってるお前らはその女性に気付けないんだ。『どうせ俺は汚れてる』って黄昏れて、諦めて、周りを見下して笑い飛ばす。物事を斜めに見て綺麗なものを見つけようとしないから、お前らはまともな女に出会えないんだよ」
「……きっつ」
「真実だろ? お前らが俺に好意を持っていたと知ったから叱咤激励してる。世の中全員が、お前らの我が儘を聞いてくれる訳じゃないんだ。知名度と金さえなかったら、お前ら本当にただの害悪だからな?」
「害悪……」
落ち込む双子を前に溜め息をつき、佑はチラッと香澄を見る。
「香澄を見て憧れる気持ちも分かる。それなら断捨離をした上で、香澄のような女性を探してみろ。お前らが我が儘を言っても、ちゃんと愛情から叱ってくれるような人だ。そういう人なら、一生付き合っていけると思うけどな?」
「ふぅん……」
「断捨離、ねぇ」
香澄は雑煮椀を四つ盆の上に乗せ、キッチンからダイニングに運ぼうとしている。
「香澄、俺が持つよ」
そこで佑が立ち上がり、香澄の手からヒョイと盆を取り上げた。
「ありがとう、佑さん。お二人とも、お雑煮できましたよ。昨日もお餅四つ食べられたので、今日も四つ入れておきました。多かったら残していいですからね?」
「……カスミ尊い」
「今の話のあとだと、マジ天使に見える」
キッチンで換気扇を回していた香澄は、三人の会話が聞こえていない。
突然褒められて首を傾げつつも、彼女は箸を取りにまたキッチンへ戻った。
なので女性で彼らのお気に入りである香澄のいう事の方が、まじめに聞いてくれる確率は高い。
「……まぁ、趣味としてはそうだな。そっちの方がずっと有意義な時間になると思う。正直パーティーは、ビジネスや家関係で参加しなければならないもの以外は苦痛だ」
双子は顔を見合わせ「あー」と、残念そうに頷いている。
そしてキッチンに立っている香澄を見て、クラウスは微笑した。
「あの子、本当にいい子だよね。何が嫌なのかちょっと曖昧で分かんないけど、怒らないしいつもニコニコしてる。ま、そこが日本人的にちょっと危ういんだけどね。僕らの事も、一生懸命〝好きになれそうな所〟を探してくれてる。人の粗探しをして嫌いになる方が、ずっとラクなのにね」
弟の言葉を聞き、兄が頷く。
「カスミからすれば迷惑かけられたのに、必死になって俺らとタスクを仲良くさせようとしてるんだよねぇ? 根っからの善人っていうか……。見てて眩しいし、危なっかしいよね」
褒められて、佑は少しどや顔になる。
「だろう? 俺の自慢の婚約者だ」
「僕らと出会った女の子ってさ、『死ね、二度と連絡するな』って言うか、『本気にならないから、恋人のフリをし続けて』のどっちかになるんだよね」
あまりにあり得ない二択に、佑はげんなりする。
「それはお前らが不誠実な恋愛をしてるからだろ。いや、恋愛でもないな。生き方そのものが不誠実というか」
女性から『死ね』など言われた事のない佑は、呆れて首を左右に振る。
「誠実さなんて、どっかに忘れたよねー。まじめに生きようとする方が疲れるじゃん? 仕事は楽しいから全力でやるけどね。女って見返り求めるし、自分が愛した以上に俺らが愛し返さないと怒るんだよ」
ふわんと優しい出汁の香りと、餅が焼ける匂いがするなか、生々しい会話が交わされる。
双子の話を聞いて、佑はつくづく、本当に、心の底から、香澄と出会って良かったと思っていた。
反面、彼女に出会わなければ、自分も彼らと似たような価値観を持っていたかもしれない。そう思うとゾッとした。
「本当に、本気で自分を愛してくれる女性がほしいと思うなら、一度断捨離しろ」
「ダンシャリ? 寿司?」
「要らないものは捨てろって事だ。自分たちの外見や金、地位しか見てない女とは縁を切れ。セックスがしたいなら金で解決できる相手にしておけ。身の回りをクリーンにして初めて、綺麗な恋愛ができるんじゃないか? 泥水の中で、清水に住む魚は泳がない」
「泥水……ねぇ」
さんざんな言われようだが、心当たりはあるのか双子は皮肉げに笑う。
「僕らはすでにこういうイメージがついてるのに、今さら心の綺麗な女の子が寄ってくると思う?」
「諦めてるならどうにもならないだろ。誰かが陰で真剣に想ってるかもしれないのに、疑ってるお前らはその女性に気付けないんだ。『どうせ俺は汚れてる』って黄昏れて、諦めて、周りを見下して笑い飛ばす。物事を斜めに見て綺麗なものを見つけようとしないから、お前らはまともな女に出会えないんだよ」
「……きっつ」
「真実だろ? お前らが俺に好意を持っていたと知ったから叱咤激励してる。世の中全員が、お前らの我が儘を聞いてくれる訳じゃないんだ。知名度と金さえなかったら、お前ら本当にただの害悪だからな?」
「害悪……」
落ち込む双子を前に溜め息をつき、佑はチラッと香澄を見る。
「香澄を見て憧れる気持ちも分かる。それなら断捨離をした上で、香澄のような女性を探してみろ。お前らが我が儘を言っても、ちゃんと愛情から叱ってくれるような人だ。そういう人なら、一生付き合っていけると思うけどな?」
「ふぅん……」
「断捨離、ねぇ」
香澄は雑煮椀を四つ盆の上に乗せ、キッチンからダイニングに運ぼうとしている。
「香澄、俺が持つよ」
そこで佑が立ち上がり、香澄の手からヒョイと盆を取り上げた。
「ありがとう、佑さん。お二人とも、お雑煮できましたよ。昨日もお餅四つ食べられたので、今日も四つ入れておきました。多かったら残していいですからね?」
「……カスミ尊い」
「今の話のあとだと、マジ天使に見える」
キッチンで換気扇を回していた香澄は、三人の会話が聞こえていない。
突然褒められて首を傾げつつも、彼女は箸を取りにまたキッチンへ戻った。
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