317 / 1,544
第七部・双子襲来 編
双子とスーパーで買い物
しおりを挟む
その日の朝食は予定通りそうめんにした。
双子が「これなら幾らでも入る」と言って何把茹でたか分からない。
「たった二分茹でて冷やすだけで、こんなに美味しい物が食べられるなんて、そうめんは神だ!」
とアロイスが言い、クラウスは早速ネットで高級そうめんを検索していた。
その後、プラプラと歩いて白金にあるスーパーへ向かい、餅を求める。
双子はショッピングカートを押してキャッキャと騒ぎ、目に付いた物すべて「安いね、買おうか」と言って手を伸ばすので、慌てて止めるの繰り返しだ。
「この牛肉で何か作って」と言われるなら買うのだが、目的もなく買いたがるので始末が悪い。
御劔邸の冷蔵庫が大きいとはいえ、業務用の冷蔵庫ではないし、斎藤の都合もある。
スーパー内には上品なマダムたちがいたが、全員見るも麗しい双子に視線をとられていた。
芸能人が現れるも珍しくない土地だが、まったく同じ顔をした美形の金髪碧眼双子というのはインパクトがあるのだろう。
その隣で香澄は、「今日はTシャツが白と黒だから、見分けがつきやすいな」とぼんやり思っている。
「お餅はお昼に食べますか? どう食べたいですか?」
「餅パーティーしよう!」
「あ、でも僕ゾウニも食べたいな。オーマが作ってくれるの美味しいんだ」
「分かりました。じゃあ三つ葉と柚子と……。つとは流石にこの時期ないですね。なるとを代用しましょう。椎茸は家にあったはず」
「ゾウニも日本各地で色んな食べ方あるんでしょ? 僕知ってる」
「そうですね。西日本では丸餅を使うとか、餡子の入ったお餅を入れる所もありますね。あとは味付けはすまし汁と白味噌に分かれてるっぽいです。お汁粉みたいな所もあるみたいで、面白いですよ」
「詳しいね! さすが俺のカスミ!」
アロイスに褒められ、香澄は「いえいえ」と手を振りつつ笑う。
「お餅が好きで、中学生頃にちょっと調べただけです」
「カスミはどういうのを作るの?」
「私は角餅を焼いて、すまし汁に椎茸と三つ葉、つとと柚子の皮を入れます。少なくとも札幌の実家でこう育ったので、これが普通だと思っていると言いますか……」
「ていうかさぁ。日本ってやっぱり多様性食文化ワールドだよね。祖国の悪口言う訳じゃないけど、ドイツいると大体ビール、ソーセージ、芋、芋、芋……だよな」
「Genau(それな)」
双子が頷き合い、「芋」がよほど面白かったのかケラケラと笑う。
「カスミもこのネタ覚えておきなよ。特にイタリア人とかにウケるよ」
「そうなんですか?」
確かにドイツはザワークラウトとマッシュポテトが必ず食事につくと聞くが、ヨーロッパの人の間でそれほど話題になっているのだろうか、と香澄は首を傾げる。
「一種の自虐ネタみたいになってるよね。大戦中、『この芋野郎』とか言われてたらしいよ」
「はぁー……。やっぱりジャガイモがよく採れるからですか? 札幌とミュンヘンが姉妹都市で、緯度も似ているんですよね?」
「そうそう。ドイツと芋は切り離せない感じだね」
「ふぅん……。大事な食料だったんですね。じゃあ、今晩肉じゃがとかにしますか? フライドポテトとか……」
「Nein!(ダメ!)せっかく日本に来たんだから、芋は忘れて日本の国際色ごちゃ混ぜな美味しいご飯が食べたいの」
「そうそう。オムライスとかたらこスパとか。日本ならではだよね」
「じゃあ、今晩オムライスにします?」
提案してみると、双子は顔を見合わせニパッと笑った。
「そうだね。外で食べるのもいつでもできるし。カスミの手料理食べさせてもらおう。で、後でタスクに自慢してやるんだ」
「もー……。それはいいですから」
何とか必要な物だけを購入した帰り道では、アロイスがエコバッグを持ってくれる。
「俺にエコバッグ持たせる女の子、世界中でカスミだけだよ」
「ご、ごめんなさい! 自分で持ちますから!」
香澄は慌てて彼の腕に手をやる。
先ほどは「俺が持つよ」と彼が申し出て、「悪いからいいです」と断ったものの、「こういうのは男に持たせておけばいいんだよ」と言われて持ってもらったのだが……。
「や、そうじゃなくて。それだけ自分がいい女だって自覚してね? っていうコト」
「はぁ……」
彼の言いたい事がよく分からないが、ひとまず頷いておく。
「カスミはこれだからなぁ~」
クラウスが意味ありげに笑い、アロイスもケタケタと笑う。
「タスクも苦労するな、こりゃ」
ジリジリと日差しが照りつける道を歩き、香澄は日傘の陰で首を傾げた。
**
双子が「これなら幾らでも入る」と言って何把茹でたか分からない。
「たった二分茹でて冷やすだけで、こんなに美味しい物が食べられるなんて、そうめんは神だ!」
とアロイスが言い、クラウスは早速ネットで高級そうめんを検索していた。
その後、プラプラと歩いて白金にあるスーパーへ向かい、餅を求める。
双子はショッピングカートを押してキャッキャと騒ぎ、目に付いた物すべて「安いね、買おうか」と言って手を伸ばすので、慌てて止めるの繰り返しだ。
「この牛肉で何か作って」と言われるなら買うのだが、目的もなく買いたがるので始末が悪い。
御劔邸の冷蔵庫が大きいとはいえ、業務用の冷蔵庫ではないし、斎藤の都合もある。
スーパー内には上品なマダムたちがいたが、全員見るも麗しい双子に視線をとられていた。
芸能人が現れるも珍しくない土地だが、まったく同じ顔をした美形の金髪碧眼双子というのはインパクトがあるのだろう。
その隣で香澄は、「今日はTシャツが白と黒だから、見分けがつきやすいな」とぼんやり思っている。
「お餅はお昼に食べますか? どう食べたいですか?」
「餅パーティーしよう!」
「あ、でも僕ゾウニも食べたいな。オーマが作ってくれるの美味しいんだ」
「分かりました。じゃあ三つ葉と柚子と……。つとは流石にこの時期ないですね。なるとを代用しましょう。椎茸は家にあったはず」
「ゾウニも日本各地で色んな食べ方あるんでしょ? 僕知ってる」
「そうですね。西日本では丸餅を使うとか、餡子の入ったお餅を入れる所もありますね。あとは味付けはすまし汁と白味噌に分かれてるっぽいです。お汁粉みたいな所もあるみたいで、面白いですよ」
「詳しいね! さすが俺のカスミ!」
アロイスに褒められ、香澄は「いえいえ」と手を振りつつ笑う。
「お餅が好きで、中学生頃にちょっと調べただけです」
「カスミはどういうのを作るの?」
「私は角餅を焼いて、すまし汁に椎茸と三つ葉、つとと柚子の皮を入れます。少なくとも札幌の実家でこう育ったので、これが普通だと思っていると言いますか……」
「ていうかさぁ。日本ってやっぱり多様性食文化ワールドだよね。祖国の悪口言う訳じゃないけど、ドイツいると大体ビール、ソーセージ、芋、芋、芋……だよな」
「Genau(それな)」
双子が頷き合い、「芋」がよほど面白かったのかケラケラと笑う。
「カスミもこのネタ覚えておきなよ。特にイタリア人とかにウケるよ」
「そうなんですか?」
確かにドイツはザワークラウトとマッシュポテトが必ず食事につくと聞くが、ヨーロッパの人の間でそれほど話題になっているのだろうか、と香澄は首を傾げる。
「一種の自虐ネタみたいになってるよね。大戦中、『この芋野郎』とか言われてたらしいよ」
「はぁー……。やっぱりジャガイモがよく採れるからですか? 札幌とミュンヘンが姉妹都市で、緯度も似ているんですよね?」
「そうそう。ドイツと芋は切り離せない感じだね」
「ふぅん……。大事な食料だったんですね。じゃあ、今晩肉じゃがとかにしますか? フライドポテトとか……」
「Nein!(ダメ!)せっかく日本に来たんだから、芋は忘れて日本の国際色ごちゃ混ぜな美味しいご飯が食べたいの」
「そうそう。オムライスとかたらこスパとか。日本ならではだよね」
「じゃあ、今晩オムライスにします?」
提案してみると、双子は顔を見合わせニパッと笑った。
「そうだね。外で食べるのもいつでもできるし。カスミの手料理食べさせてもらおう。で、後でタスクに自慢してやるんだ」
「もー……。それはいいですから」
何とか必要な物だけを購入した帰り道では、アロイスがエコバッグを持ってくれる。
「俺にエコバッグ持たせる女の子、世界中でカスミだけだよ」
「ご、ごめんなさい! 自分で持ちますから!」
香澄は慌てて彼の腕に手をやる。
先ほどは「俺が持つよ」と彼が申し出て、「悪いからいいです」と断ったものの、「こういうのは男に持たせておけばいいんだよ」と言われて持ってもらったのだが……。
「や、そうじゃなくて。それだけ自分がいい女だって自覚してね? っていうコト」
「はぁ……」
彼の言いたい事がよく分からないが、ひとまず頷いておく。
「カスミはこれだからなぁ~」
クラウスが意味ありげに笑い、アロイスもケタケタと笑う。
「タスクも苦労するな、こりゃ」
ジリジリと日差しが照りつける道を歩き、香澄は日傘の陰で首を傾げた。
**
42
お気に入りに追加
2,511
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!
臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。
そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。
※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています
※表紙はニジジャーニーで生成しました
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる