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第七部・双子襲来 編

考え直す双子

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「じゃあそっちの方向で、今後のオサソイを考えてみるね」
「カスミ、ありがとね」

 微笑んだ双子だが、いささか元気がない。

「あの、お気を悪くさせてしまったなら、本当にすみません」

 あの双子が落ち込むなどあり得ないと思っていた香澄は、本気で申し訳なくて何度も頭を下げる。

「いや、謝らないで? 確かにショックはショックだったんだけどさ。カスミに指摘されたからっていうよりも、俺たちより付き合いの浅いカスミに指摘されるまで、気付いてなかった事へのショックなんだ」

 アロイスが苦笑いをする。

「そうだね。僕ら、従兄弟っていう関係性に胡座かいてたトコがあるかも。僕らは日本人大好きだけど、近くに純粋な日本人ってオーマしかいないんだ。で、オーマって僕らの肉親でしょ? 僕らはオーマに遠慮しないし、逆にオーマはどんな我が儘でもニコニコ聞いてくれる。だから日本人って何をしたら好きとか嫌いとか、本当の意味では分かっていなかった気がするんだ。勝手に『男ならプリプリしたケツの女の子好きでしょ』とか、『太陽の下でBBQして、好きな時に海飛び込んでイェーイ! 楽しい! タスクも楽しいよね?』とか、決めつけてたトコはあるかも」

 顎に手をやって吹き抜けを見上げ、双子は新しい考え方にうんうんと頷いている。
 それから温かみのある笑顔を向けてきた。

「やっぱカスミは〝タスクの女〟なんだねー。俺たちよりずっとタスクのこと分かってる」
「い、いえ。普通に考えただけでして……」

 本当に香澄は一般常識を言っただけだ。

 佑の好みについては、ある程度一緒に暮らしているから分かるというのもある。
 しかし性格や趣味を考えて誘えば応じるだろうというのは、普通に考えれば分かる事だと思っている。

「逆に私からしたら、いつまでもお二人は若々しいなって思いますよ? あの、佑さんが老けているとかじゃなくて、お二人は何て言うか……うーん、陽気で無邪気で、子供みたいな感じっていうか」

「「Ist es ein Kind?(子供だって?)」」

 双子の声が重なり、同じタイミングで頭を抱える。
 香澄から子供扱いされ、年上の男性としてはショックだったようだ。

「っはー……。カスミって本当に、僕らのこと男扱いしてないんだね? 女の子に子供なんて言われたの、初めてだよ?」

「い、いえ。格好いいし、人を引きつける魅力があるなとは思っていますが……。私には佑さんがいるので、他の男性に性的魅力を感じないだけです」

「性的魅力を感じない!」

 アロイスが復唱し、双子がまた同じタイミングでのたうち回る。

(えっと……)

 思った事を素直に言っただけなのだが、どうやら大ダメージを与えてしまったようでフォローの言葉を必死に探す。
 しかし今なら何を言っても、追い打ちになりかねない。

 なので話題を変える事にした。

「明日は朝におそうめんですね? 近くにスーパーもありますから、歩いてお餅も買いましょうか」

 話題を変えると、双子はしぶしぶ「そうだねー」と頷く。

(思ったより、『手が着けられなくて大変!』じゃなくて良かった。本気で困るような事は一応しないし、佑さんが帰ってくるまで何とかなりそう)

 誰だってきちんと話し合えば、ちゃんと分かり合えるのでは……と思うのが香澄の持論だ。
 もちろん中には話が通じない、それこそ飯山たちのような人もいるが、双子は佑の従兄だし分かり合えると思うと嬉しくなった。

「それじゃあそろそろ、自由時間にしましょうか。ゆっくり休んでくださいね」

 立ち上がり、香澄は空になった皿を片付ける。

「お皿ぐらい俺たちが洗うよ。食洗機に突っ込めばいいんでしょ? カスミも汗掻いたんだしお風呂入っておいで」
「はい。……信じてますからね?」

 じっと双子を見つめると、「分かってるよ」と彼らが残念そうに笑う。

「じゃあ、おやすみなさい。お皿、ありがとうございます」

 礼を言ってエレベーターで二階に上がると、香澄は寝間着にしているキャミソールとタップパンツを持って脱衣所に入った。
 念のため鍵をかけ、一気に疲れが押し寄せた気がして溜息をつく。

(佑さん、帰ってきたら怒るかなぁ……。まぁ、機嫌良くはならないだろうなぁ)

 服を脱いで下着も脱ぐと、体重計に乗って「うーん」と数字を見なかったふりをしてバスルームに入る。
 こちらもお湯が張られてあったので、すぐに浸かる事ができた。

「はぁ……」

 かけ湯をしてから体を洗い、浴槽に浸かると思わず溜め息が出る。
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