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第七部・双子襲来 編
佑の好み
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それで恋人のいる女性につきまとわれ、嫉妬された上に差別発言されては堪らない。
先に手を出したのは佑だが、彼には殴る理由がある。
どんな場合でも暴力は良くないかもしれないが、手を出させる側にも責任はあると思っている。
煽るだけ煽って、手を出させて被害者ぶるなんて許されない。
今の佑なら人を殴ったりなどしないだろうが、当時は大学生だったので血気盛んだったのもあるのだろう。
「その時は翔も一緒だったけど、あいつは最後までクルージングに参加したけどね」
「それからタスクは僕らの誘いに乗ってくれなくなっちゃった。高校時代からアプリ開発やら何やら始めて、大学生の頃には忙しくしてたから、付き合い浅くなったよね」
桃とメロンは順調になくなってきている。
「……あの、思うんですけど。お二人に悪意がなくて、ちょっといじりはあるかもだけど、基本的に佑さんに好意があるのは分かるんです。でも、そのアプローチの方法がちょっとねじれてるっていうか……」
双子はぱちくりと目を瞬かせ、互いに顔を見合わせて肩をすくめる。
「私も佑さんとはまだ付き合いが浅いです。それでも、彼は落ち着いた場所でじっくりと、趣味を楽しむのが好きなんだと思います。いわゆるパリピ的な気質ではありませんし、陽気すぎる人と大勢でBBQとか、お酒飲んで騒いだり……とか、あんまり好きじゃないんだと思います。BBQとかするなら、気心知れた家族や友人とかと……っていう気がしますし」
香澄の言葉を聞き、双子はポカンとしちえる。
「なので何ていうか、お二人の好意って空回りしていたんじゃないかな? って思うんです。せっかく佑さんを思い遣る気持ちがあるのに、もったいないなって思います」
言い終わったあと、沈黙している双子が不気味で、香澄は誤魔化し笑いを浮かべる。
やがてアロイスがぽつんと呟いた。
「タスク、あれ喜んでなかったの? いっつもムッスーってしてるの、照れ隠しなのかと思ってた」
(照れ隠しと思ってたのか!)
逆に香澄は双子のポジティブさに驚く。
「っていう事は、パーティーとか開くの大好きな僕ら、タスクに嫌われてるの?」
クラウスが悲しそうに言うので、香澄は焦る。
「あっあっ、そうじゃなくて! お二人の事は普通に従兄として好きなんだと思うんです。ただ、佑さんの趣味や好みを考えた方が、もっと喜ぶかな? なんて。あと仕事で疲れているので、エネルギーを使う行為はあまり好まないかもしれません。音楽とかもクラブとかに行くよりは、クラシックコンサートに行くタイプです。美術館巡りや水族館、プラネタリウムとかドライブ。そういうのが趣味だと思うので、佑さんの好きな事なら誘っても喜ぶと思いますよ?」
思いっきり空回りしている双子が気の毒で、香澄は必死にフォローする。
佑も彼らを本気で嫌ってはいないと思うが、少々性格の差やアプローチの仕方に疲れを覚えているのは否めない。
スポーツ観戦にしても、佑と双子には温度差があるらしい。
佑はスポーツ観戦が好きと行っても、応援しているチームがある、という程度だ。
以前にチラッと聞いた事があるが、双子とドイツでサッカー観戦をしたら、あちらの人の熱気の強さに気圧されて、一気に疲れてしまったらしい。
そこはやはり、インドア派で大人数で過ごすより、少人数派である彼らしい。
「……そっ……かー…………」
香澄の言葉を聞いていた双子は、同じタイミングでゆっくり脚を組み、背もたれにもたれ掛かる。
「……あいつ、結構ジジ臭いんだね」
「それがタスクなんだろ。俺たちももうちょっと、タスク爺さんの事を考えてやらないと」
双子の中の佑の扱いが変わり始める。
しかし今度は老人扱いされているので、いいのだか悪いのだか……という感じだ。
「今度もし私たちがドイツに行ったら、綺麗な景色を見せて頂けませんか? ドイツだったら古城もあると思いますし、そういうのをゆっくり見るプランなら、きっと佑さんも好きだと思うんです」
「まぁ、それぐらいならいいよ。僕らも散策は好きだし」
「ドライブするなら、エンジンの静かな車の方がいいんでしょ?」
「そ……うですね。あまり車の事は分からないのですが、静かな場所には静かなエンジンの方がいい気がします」
東京にいても、いわゆるスーパーカーと呼ばれる数千万円の車が、バォォン! と凄まじいエンジン音をさせて走っているのに出くわす事がある。
オーナーはそれが良くて乗っているのだろうが、香澄は残念ながらその良さが分からないし、音が大きいとびっくりしてしまう。
佑もその辺りは同じ感覚らしく、ガレージには何台も高級車があるが、音の大きい物はなかったはずだ。
もっと言えば、御劔邸にある美術品の中にポップアートはない。
落ち着いた色味で統一され、重厚感と高級感で統一されている。
この家を一回りするだけで、大体佑の趣味が分かりそうなものだとは思っている。
先に手を出したのは佑だが、彼には殴る理由がある。
どんな場合でも暴力は良くないかもしれないが、手を出させる側にも責任はあると思っている。
煽るだけ煽って、手を出させて被害者ぶるなんて許されない。
今の佑なら人を殴ったりなどしないだろうが、当時は大学生だったので血気盛んだったのもあるのだろう。
「その時は翔も一緒だったけど、あいつは最後までクルージングに参加したけどね」
「それからタスクは僕らの誘いに乗ってくれなくなっちゃった。高校時代からアプリ開発やら何やら始めて、大学生の頃には忙しくしてたから、付き合い浅くなったよね」
桃とメロンは順調になくなってきている。
「……あの、思うんですけど。お二人に悪意がなくて、ちょっといじりはあるかもだけど、基本的に佑さんに好意があるのは分かるんです。でも、そのアプローチの方法がちょっとねじれてるっていうか……」
双子はぱちくりと目を瞬かせ、互いに顔を見合わせて肩をすくめる。
「私も佑さんとはまだ付き合いが浅いです。それでも、彼は落ち着いた場所でじっくりと、趣味を楽しむのが好きなんだと思います。いわゆるパリピ的な気質ではありませんし、陽気すぎる人と大勢でBBQとか、お酒飲んで騒いだり……とか、あんまり好きじゃないんだと思います。BBQとかするなら、気心知れた家族や友人とかと……っていう気がしますし」
香澄の言葉を聞き、双子はポカンとしちえる。
「なので何ていうか、お二人の好意って空回りしていたんじゃないかな? って思うんです。せっかく佑さんを思い遣る気持ちがあるのに、もったいないなって思います」
言い終わったあと、沈黙している双子が不気味で、香澄は誤魔化し笑いを浮かべる。
やがてアロイスがぽつんと呟いた。
「タスク、あれ喜んでなかったの? いっつもムッスーってしてるの、照れ隠しなのかと思ってた」
(照れ隠しと思ってたのか!)
逆に香澄は双子のポジティブさに驚く。
「っていう事は、パーティーとか開くの大好きな僕ら、タスクに嫌われてるの?」
クラウスが悲しそうに言うので、香澄は焦る。
「あっあっ、そうじゃなくて! お二人の事は普通に従兄として好きなんだと思うんです。ただ、佑さんの趣味や好みを考えた方が、もっと喜ぶかな? なんて。あと仕事で疲れているので、エネルギーを使う行為はあまり好まないかもしれません。音楽とかもクラブとかに行くよりは、クラシックコンサートに行くタイプです。美術館巡りや水族館、プラネタリウムとかドライブ。そういうのが趣味だと思うので、佑さんの好きな事なら誘っても喜ぶと思いますよ?」
思いっきり空回りしている双子が気の毒で、香澄は必死にフォローする。
佑も彼らを本気で嫌ってはいないと思うが、少々性格の差やアプローチの仕方に疲れを覚えているのは否めない。
スポーツ観戦にしても、佑と双子には温度差があるらしい。
佑はスポーツ観戦が好きと行っても、応援しているチームがある、という程度だ。
以前にチラッと聞いた事があるが、双子とドイツでサッカー観戦をしたら、あちらの人の熱気の強さに気圧されて、一気に疲れてしまったらしい。
そこはやはり、インドア派で大人数で過ごすより、少人数派である彼らしい。
「……そっ……かー…………」
香澄の言葉を聞いていた双子は、同じタイミングでゆっくり脚を組み、背もたれにもたれ掛かる。
「……あいつ、結構ジジ臭いんだね」
「それがタスクなんだろ。俺たちももうちょっと、タスク爺さんの事を考えてやらないと」
双子の中の佑の扱いが変わり始める。
しかし今度は老人扱いされているので、いいのだか悪いのだか……という感じだ。
「今度もし私たちがドイツに行ったら、綺麗な景色を見せて頂けませんか? ドイツだったら古城もあると思いますし、そういうのをゆっくり見るプランなら、きっと佑さんも好きだと思うんです」
「まぁ、それぐらいならいいよ。僕らも散策は好きだし」
「ドライブするなら、エンジンの静かな車の方がいいんでしょ?」
「そ……うですね。あまり車の事は分からないのですが、静かな場所には静かなエンジンの方がいい気がします」
東京にいても、いわゆるスーパーカーと呼ばれる数千万円の車が、バォォン! と凄まじいエンジン音をさせて走っているのに出くわす事がある。
オーナーはそれが良くて乗っているのだろうが、香澄は残念ながらその良さが分からないし、音が大きいとびっくりしてしまう。
佑もその辺りは同じ感覚らしく、ガレージには何台も高級車があるが、音の大きい物はなかったはずだ。
もっと言えば、御劔邸にある美術品の中にポップアートはない。
落ち着いた色味で統一され、重厚感と高級感で統一されている。
この家を一回りするだけで、大体佑の趣味が分かりそうなものだとは思っている。
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