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第七部・双子襲来 編
ステーキレストラン
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「これ、割といい石だね。タスクいつ買ったの?」
「東京に来てから、最初に百貨店デートした時に買ってくれた物です。ありがたくはあったんですが、こんなにお金使わせて申し訳なくて……」
「初孫を喜んだオーパみたいだね」
「嬉しくなったら高価な物を贈りたがるって、僕らの血筋なのかもね」
佑の話をしていると、ついさっきコネクターナウで「おやすみ」の連絡が来たばかりなので罪悪観がある。
基本的に香澄は隠し事をしていると「申し訳ない」と思うタチで、どんどん罪悪感に苛まれてゆく。
良くも悪くも嘘がつけず、隠し事ができない。
小学生の時に家族のプリンを思わず食べてしまい、罪悪感からワンワン泣きながら「ごめんなさい」を言った経歴の持ち主だ。
三つ子の魂百までと言うのか、そういう性格は変わっていない。
しかし今、佑に申し訳なさを覚えていても、双子が来ている事実は変えられない。
彼らが決めた服に着替えたあと、車に乗って銀座にあるステーキレストランにつれて行かれた。
個室に入り、「何でも好きな物焼いてもらおう」と、双子は様々な部位のステーキから、ロブスターを頼み、ワインも注文した。
香澄は口出しをせず、出てきた物をありがたく頂く。
ワインはさすが舌の肥えた双子が選んだだけあり、肉との相性が良くて進んでしまう。
双子が色々とワインについて教えてくれるが、香澄はあまり詳しい事を言われてもよく理解できない。
ただ、フランス産の肉になら、ワインもフランス産の物を合わせるといいというのは、何となく理解できた気がした。
双子はせわしなく話す傍ら、どんどん食事をしてワインも飲む。
香澄はそれと同じペースで飲食できないので、会話には相槌を打つに徹し、満腹になったあと、ポツポツと自分も会話に参加した。
「本当にお二人、お酒が強いんですね」
食事はほとんど終わり、双子はのんびりチーズをつまみながらワインを飲んでいる。
香澄は体が火照って動悸がしているほどなのに、双子はまったく顔色が変わっていない。
「人種の違いが大きいと思うよ。アルコールを飲んで発生する物質を分解する体のつくりが、人種によって違うんだよ」
「なるほど……」
「簡単に言えば白人も黒人も酒は超強い。それに対してモンゴロイド……アジア系って言えばいいのかな。は、それほど強くないんだ。もともとそういう風にできてるの。だから、テキーラをぐいぐい飲む文化とか、ワインやビールのお祭りもないでしょ? 日本は日本酒の文化だけど、一気飲みしてウェーイってやるイメージじゃないしね」
「確かに……」
「今でこそ宴会して〝イッキ〟を煽る文化があるけど、あれは宴会芸みたいなもんだし、ぶっちゃけアルハラだよね」
「まぁ、そうですね」
そう言われると「お恥ずかしい……」という気持ちになる。
「や、でもこっちでも盛り上がって皆で飲むとか、飲まないと○○じゃない! みたいなのはあるから、どこに行っても同じかも。っていうか、こっちの人でも酒に弱い人はいるしね」
「世界中のお酒事情に詳しいですね?」
香澄は「うんうん」と頷きながら、カマンベールチーズをちびりと囓る。
「そりゃあ、世界中の女の子を口説くには、酒についてのあれこれも理解しておかないとね?」
「ああ……なるほど」
双子らしい、と苦笑いし、香澄は話題を変える。
「それはそうと、佑さんからエミリアさんという方……幼馴染みがいると教えてもらいましたが、どういう……女性でしょう?」
「Genau(それな)」
双子が顔を見合わせ、ニタリと笑う。
(ああー……)
嫌な予感がし、香澄は少し後悔する。
だが双子以上に質問するに相応しい相手はいない。
自分がエミリアについて気にしていると、佑にはあまり知られたくない。
もうすでに気にしているとバラしてしまったあとだが、佑に「大丈夫だよ」と言われたあとでも、落ち着かずにモヤモヤしていると聞けば、彼も困ってしまうだろう。
佑には嫉妬をしない、大らかな女性だと思われたい。
アンネや節子、澪に相談するのも気が引ける。
彼の家族にこそ、ちょっとやそっとの事で動じない女だと思われたい。
結局、一番話しやすくてエミリアを知っている人と言えば、双子になる。
「東京に来てから、最初に百貨店デートした時に買ってくれた物です。ありがたくはあったんですが、こんなにお金使わせて申し訳なくて……」
「初孫を喜んだオーパみたいだね」
「嬉しくなったら高価な物を贈りたがるって、僕らの血筋なのかもね」
佑の話をしていると、ついさっきコネクターナウで「おやすみ」の連絡が来たばかりなので罪悪観がある。
基本的に香澄は隠し事をしていると「申し訳ない」と思うタチで、どんどん罪悪感に苛まれてゆく。
良くも悪くも嘘がつけず、隠し事ができない。
小学生の時に家族のプリンを思わず食べてしまい、罪悪感からワンワン泣きながら「ごめんなさい」を言った経歴の持ち主だ。
三つ子の魂百までと言うのか、そういう性格は変わっていない。
しかし今、佑に申し訳なさを覚えていても、双子が来ている事実は変えられない。
彼らが決めた服に着替えたあと、車に乗って銀座にあるステーキレストランにつれて行かれた。
個室に入り、「何でも好きな物焼いてもらおう」と、双子は様々な部位のステーキから、ロブスターを頼み、ワインも注文した。
香澄は口出しをせず、出てきた物をありがたく頂く。
ワインはさすが舌の肥えた双子が選んだだけあり、肉との相性が良くて進んでしまう。
双子が色々とワインについて教えてくれるが、香澄はあまり詳しい事を言われてもよく理解できない。
ただ、フランス産の肉になら、ワインもフランス産の物を合わせるといいというのは、何となく理解できた気がした。
双子はせわしなく話す傍ら、どんどん食事をしてワインも飲む。
香澄はそれと同じペースで飲食できないので、会話には相槌を打つに徹し、満腹になったあと、ポツポツと自分も会話に参加した。
「本当にお二人、お酒が強いんですね」
食事はほとんど終わり、双子はのんびりチーズをつまみながらワインを飲んでいる。
香澄は体が火照って動悸がしているほどなのに、双子はまったく顔色が変わっていない。
「人種の違いが大きいと思うよ。アルコールを飲んで発生する物質を分解する体のつくりが、人種によって違うんだよ」
「なるほど……」
「簡単に言えば白人も黒人も酒は超強い。それに対してモンゴロイド……アジア系って言えばいいのかな。は、それほど強くないんだ。もともとそういう風にできてるの。だから、テキーラをぐいぐい飲む文化とか、ワインやビールのお祭りもないでしょ? 日本は日本酒の文化だけど、一気飲みしてウェーイってやるイメージじゃないしね」
「確かに……」
「今でこそ宴会して〝イッキ〟を煽る文化があるけど、あれは宴会芸みたいなもんだし、ぶっちゃけアルハラだよね」
「まぁ、そうですね」
そう言われると「お恥ずかしい……」という気持ちになる。
「や、でもこっちでも盛り上がって皆で飲むとか、飲まないと○○じゃない! みたいなのはあるから、どこに行っても同じかも。っていうか、こっちの人でも酒に弱い人はいるしね」
「世界中のお酒事情に詳しいですね?」
香澄は「うんうん」と頷きながら、カマンベールチーズをちびりと囓る。
「そりゃあ、世界中の女の子を口説くには、酒についてのあれこれも理解しておかないとね?」
「ああ……なるほど」
双子らしい、と苦笑いし、香澄は話題を変える。
「それはそうと、佑さんからエミリアさんという方……幼馴染みがいると教えてもらいましたが、どういう……女性でしょう?」
「Genau(それな)」
双子が顔を見合わせ、ニタリと笑う。
(ああー……)
嫌な予感がし、香澄は少し後悔する。
だが双子以上に質問するに相応しい相手はいない。
自分がエミリアについて気にしていると、佑にはあまり知られたくない。
もうすでに気にしているとバラしてしまったあとだが、佑に「大丈夫だよ」と言われたあとでも、落ち着かずにモヤモヤしていると聞けば、彼も困ってしまうだろう。
佑には嫉妬をしない、大らかな女性だと思われたい。
アンネや節子、澪に相談するのも気が引ける。
彼の家族にこそ、ちょっとやそっとの事で動じない女だと思われたい。
結局、一番話しやすくてエミリアを知っている人と言えば、双子になる。
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