上 下
307 / 1,548
第七部・双子襲来 編

食後のデザート

しおりを挟む
「おじさんみたいなこと言わないでください。お二人だってまだまだお若いじゃないですか」

(そうだ。この二人は佑さんの従兄さんで、私にとっては将来の義従兄になるんだ。だから私一人でも相手をできるようにならないと)

 秘書ともなれば、商談相手の家族の接待をする場合もある。
 相手の好みや趣味などを調べるのは勿論、好きそうなレストランをセッティングして喜ばせる事も仕事のうちだ。

 なので、身内となる双子ぐらい接待できるようにならなければ、と思ったのだ。

「もう三十三歳だしね? 日本語だとミソジって言うんだっけ?」
「お二人ってお誕生日いつなんです?」

「十二月八日! 射手座だよ」
「あ、ちょっと近いですね。私、十一月二十日の蠍座です」

 初冬生まれという共通点が分かって嬉しくなったが、双子は香澄以上にニコニコしだす。

「教えてくれてありがとう!」
「今年の誕生日になったら、香澄が喜ぶようなプレゼントするね!」
「ちっ……、違います! そういう意味じゃなくて……!」

 悲鳴を上げかけた時、デザートとコーヒーがやってきた。

「あ、美味しそう……」

 飯山たちの事があり、一時的に気持ちが落ち込んでいた。
 けれど双子と話していると、次々に新しい話題が振られ、感情を揺さぶられる出来事が起こるので落ち込んでいられない。

「これも写真撮ろう……」

 運ばれてきたパンケーキは、あらかじめシェアしやすいようにカットされてある。
 その上に生クリームとフルーツがたっぷりあり、非常にSNS映えする。
 チーズケーキは玉子のように丸い形に、トロリとしたチーズが掛かっていて非常に美味しそうだ。

 カシャッと写真を撮りニコニコしている香澄を、ここぞとばかりにアロイスとクラウスが撮影した。

「えっ!? え……?」
「やっぱり甘い物を前にした女の子はいいねぇ」

「そうそう。花と女の子ぐらい相性がいい」
「今度カスミに花束プレゼントしようか。それを写真に撮ったら最高じゃない?」

「おー、それいいね。日本の花もいいけど、フランスも花市場がふんだんだから、舞台を二つ用意するのもいいよね」

 香澄を愛でる談義に彼女は閉口し、「いただきます」を言ってフォークを手に取った。

「それはそうと十一月の誕生石ってトパーズとシトリンでしょ?」

「トパーズって言ったら、やっぱりインペリアルトパーズかな。でもシェリートパーズもいいよね。石が柔らかめだからペンダント加工とかかなぁ」

「シトリンのオレンジがかった赤の色味もカスミに似合いそうだよね。あったかい人柄っていうか。でもさ、結婚記念日の十三年……日本だと五年だっけ? にタスクがプレゼントしそうじゃん? シャクだから僕たちが先にプレゼントしようか」

「絶対に受け取りませんよ?」

 にっこりと微笑み、香澄が言い切る。

「まったまたぁ~。女の子ってジュエリー大好きでしょ?」

「本当に私、それほど宝石に魅力を感じてないんですってば……。それに受け取るとしても、佑さんからしか受け取りません」

「Boo……」

 双子がブーイングする。
 それでもデザートをつつく手は着々と進んでいた。

「それはそうと、ここを出たらどこに向かいますか? 近場ですと、代官山とかもまたちょっと違うファッションをウォッチできると思いますけど」

 香澄の提案に、双子は顔を見合わせ笑みを深める。

「カスミは本当に気が利くね。これは変な意味じゃなくて、本当に秘書に向いてると思う。相手を楽しませつつ、望みを叶えるのが上手いよね。これがビジネスなら秘書的なスマイルを浮かべているんだろうけど、今は一人の女の子として接してくれてるから、本当に惹かれる」

 アロイスにまともな返事をされ、香澄は少し動揺する。

「あ……ありがとうございます」

「カスミみたいな子、僕たちも秘書に欲しいなぁ。いま雇ってる子も優秀だけど、仕事は仕事って割り切ってるからな。なんていうか、そこに一個人として楽しめる隙がないっていうか」

 香澄も双子の秘書と今朝挨拶をしたが、〝できる女〟という感じの女性だった。
 挨拶をしたら愛想程度に会釈してくれたが、その他は無表情でとっつきにくい。

 しかし双子のような主人を持つなら、ああいうタイプが向いているのかもしれない。
 双子がどれだけゴネても、ちゃんとスケジュール通りに働かせてくれそうだ。

「秘書は友達や恋人じゃないですからね」

 様々な感情を込めて呟くと、「あれぇ?」とアロイスが顔を覗き込んでくる。
しおりを挟む
感想 555

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『逃れられない淫らな三角関係』番外編 ヘルプラインを活用せよ!

臣桜
恋愛
『逃れられない淫らな三角関係』の番外編です。 やりとりのある特定の読者さまに向けた番外編(小冊子)です。 他にも色々あるのですが、差し障りのなさそうなものなので公開します。 (他の番外編は、リアルブランド名とかを出してしまっている配慮していないものなので、ここに載せるかは検討中)

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話

水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。 相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。 義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。 陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。 しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。

処理中です...